
発売日: 2013年10月22日
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、ポスト・パンク、ダークウェーブ
絶望と再生の交錯——AFIの暗黒美学の深化
2013年にリリースされたBurialsは、AFIが再びダークな世界観へと回帰し、ポスト・パンク、ダークウェーブ、ゴシック・ロックの要素を色濃く打ち出した作品である。前作Crash Love(2009年)がメロディアスなオルタナティヴ・ロックへとシフトしたのに対し、本作では冷たく荘厳なサウンドと、激情的なエモーションが交錯する、AFIらしいドラマティックな作品に仕上がっている。
プロデューサーにはGil Norton(Pixies、Foo Fighters)を迎え、サウンドの奥行きと緻密なアレンジが際立つ。リリックは絶望、裏切り、孤独、そして再生をテーマにしており、デイヴィー・ハヴォックのヴォーカルは過去作と比べても特に感情的な表現が際立つ。
本作は、AFIのキャリアの中でも最も冷徹で、かつ荘厳な美しさを持つアルバムであり、エモ・ゴシック・オルタナティヴを融合させた作品として評価されている。
全曲レビュー
1. The Sinking Night
不穏なイントロと囁くようなヴォーカルが、アルバムのダークなトーンを決定づける。影が忍び寄るようなムードを持ち、次の楽曲へとスムーズに繋がる。
2. I Hope You Suffer
アルバムのリードシングルであり、ヘヴィで壮大な楽曲。「I hope you suffer, I hope you know」というラインが繰り返され、怒りと絶望の感情が強烈に表現されている。AFIのダークな側面を象徴する一曲。
3. A Deep Slow Panic
メロディアスなギターと疾走感のあるリズムが特徴の楽曲。タイトル通り、パニックと焦燥感が歌詞に反映されている。
4. No Resurrection
静かに始まり、徐々に盛り上がる構成がドラマティックな楽曲。ギターのディレイとシンセのレイヤーが、幽玄な雰囲気を醸し出す。
5. 17 Crimes
比較的キャッチーな楽曲で、Decemberundergroundの「Miss Murder」に通じるダンサブルなビートを持つ。MVでは若者の自由と反抗が描かれており、アルバムの中でも軽快な印象を与える。
6. The Conductor
インダストリアルなビートとポスト・パンク的なベースラインが融合した実験的な楽曲。冷たいシンセとエモーショナルなヴォーカルが独特の雰囲気を生み出している。
7. Heart Stops
ニューウェーブの影響を感じさせる楽曲。ギターとシンセが絡み合い、80年代のダークウェーブ的なムードを醸し出している。
8. Rewind
ゆったりとしたテンポで進行する、内省的な楽曲。タイトルの「Rewind(巻き戻し)」が示すように、過去を振り返るような哀愁が漂う。
9. The Embrace
暗く沈んだ雰囲気の楽曲で、デイヴィー・ハヴォックのヴォーカルが静かに感情を吐露する。ゴシック的な美しさを持つ。
10. Wild
アップテンポでありながらも、冷たいシンセが印象的な楽曲。ポスト・パンクとエモの要素を融合させたようなスタイル。
11. Greater Than 84
メロディアスなギターとキャッチーなリズムが際立つ楽曲。シンプルながらも洗練されたサウンドが特徴的。
12. Anxious
タイトルの通り、焦燥感と不安が詰め込まれた楽曲。サビのメロディが印象的で、アルバムの中でも特に感情的な楽曲の一つ。
13. The Face Beneath the Waves
アルバムを締めくくる壮大な楽曲。静かに始まり、クライマックスへと向かう構成が美しく、リスナーに深い余韻を残す。
総評
Burialsは、AFIが再びダークな世界観へと回帰し、エモーショナルなポスト・パンクやダークウェーブの要素を融合させた作品である。シンセやエレクトロニクスの活用が目立つが、それはDecemberundergroundのようなエレクトロ・ロックの方向性ではなく、冷たいポスト・パンクやダークウェーブに近いスタイルとして機能している。
特に「I Hope You Suffer」「17 Crimes」「The Conductor」などは、AFIの新たな側面を感じさせる楽曲であり、バンドの進化を象徴している。一方で、従来のパンク的なエネルギーよりも、より内省的で荘厳な雰囲気が支配しているため、初期のAFIのファンには意外な作品に映るかもしれない。
本作は、ダークでシネマティックなロックを求めるリスナー、ゴシック・ロックやポスト・パンクの要素が好きな人におすすめのアルバムであり、AFIの新たな進化を体験するには最適な作品である。
おすすめアルバム
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AFI – Sing the Sorrow(2003)
Burialsと同様にダークでシネマティックな要素が強い作品。 -
The Cure – Pornography(1982)
AFIのダークな美学に共鳴するポスト・パンクの名盤。 -
Depeche Mode – Violator(1990)
シンセとダークウェーブの融合が、Burialsのサウンドと共通する。 -
Nine Inch Nails – Hesitation Marks(2013)
インダストリアルとポスト・パンクの融合が見事な作品。 -
Blaqk Audio – Bright Black Heaven(2012)
AFIのメンバーによるエレクトロ・プロジェクトで、Burialsのシンセ的要素に興味がある人におすすめ。
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