
発売日: 1990年10月(コンピレーション)
オリジナルリリース: Screaming Life(1987年)、Fopp(1988年)
ジャンル: グランジ、オルタナティブ・メタル、ハードロック
Soundgardenの原点——グランジの胎動を感じさせる初期作品集
1990年にリリースされた『Screaming Life/Fopp』は、SoundgardenがSub Pop時代にリリースした最初のEP『Screaming Life』と、続く『Fopp』を1枚にまとめたコンピレーション・アルバムである。
1987年の『Screaming Life』は、シアトルのレーベルSub Popからリリースされ、Soundgardenが本格的にシーンへと登場した作品となった。当時の彼らは、まだメジャー契約前のバンドであり、パンク、メタル、ハードロックが混ざり合った初期グランジの荒々しさをそのまま持っていた。
翌年の1988年にリリースされた『Fopp』は、より実験的な方向へとシフトし、ファンクやリズム重視のサウンドを導入した作品となった。そのため、本作はSoundgardenの初期の進化を知る上で非常に貴重な作品である。
このコンピレーションは、バンドのラウドで攻撃的な側面と、彼らが後に洗練されていく過程を垣間見ることができる作品であり、90年代のブレイク前夜のSoundgardenの姿を記録した重要なアーカイブである。
全曲レビュー(Screaming Life EP, 1987年)
1. Hunted Down
Soundgardenの最初期の代表曲のひとつ。ヘヴィなリフと、クリス・コーネルの憂鬱でダークなボーカルが特徴的。後のグランジのテンプレートを確立したとも言える楽曲で、シンプルながら強烈なインパクトを持つ。
2. Entering
サイケデリックな要素が強い、スローテンポの楽曲。ヘヴィなギターと不穏なムードが漂い、のちの『Superunknown』にも通じるサウンドがすでに垣間見える。
3. Tears to Forget
パンク的な要素が強い、疾走感のある楽曲。初期のSoundgardenの中でも特に荒削りな一曲で、バンドのラウドなエネルギーが剥き出しになっている。
4. Nothing to Say
ダークでスローテンポなヘヴィ・ナンバー。メタリックなリフと、コーネルの伸びやかなボーカルが印象的。後の『Badmotorfinger』時代の片鱗を感じさせる。
5. Little Joe
よりジャム的なアプローチが見られる楽曲。ギターのディストーションとサイケデリックなアレンジが特徴で、Soundgardenの実験精神が表れている。
全曲レビュー(Fopp EP, 1988年)
6. Fopp
Ohio Playersのファンク・クラシック「Fopp」のカバー。Soundgarden流のヘヴィでグルーヴィーなアレンジが施されており、当時の彼らのファンク/リズム志向が伺える。
7. Fopp (Dub)
「Fopp」のダブ・バージョン。リミックス的なアプローチが施されており、ハードロックとダブの融合という異色の試みがなされている。
8. Kingdom of Come
ダークでブルージーな雰囲気の漂う楽曲。スローなテンポと重厚なギターが、Black Sabbathの影響を強く感じさせる。
9. Swallow My Pride
Green River(後のMudhoneyのメンバーを含む)の楽曲をカバー。シアトルのシーン内での相互影響を示す貴重な音源であり、Soundgarden流のアレンジが加わっている。
総評
『Screaming Life/Fopp』は、Soundgardenの荒削りなエネルギーと、初期の実験精神を記録した重要な作品である。
『Screaming Life』に収められた楽曲は、すでにのちのグランジの特徴を備えており、ヘヴィメタルのリフ、パンクの勢い、そしてクリス・コーネルのカリスマ的なボーカルが組み合わさった独自のサウンドが確立されつつある。
一方で『Fopp』では、よりグルーヴィーなリズムとファンクの影響が見られ、Soundgardenがまだ自らの音楽性を模索していた段階であることを示している。特に「Fopp」や「Swallow My Pride」では、ヘヴィなサウンドとファンク的なリズムが融合し、バンドの別の側面が垣間見える。
その後、Soundgardenは**『Louder Than Love』(1989年)、『Badmotorfinger』(1991年)で本格的にブレイクし、グランジの最前線へと躍り出るが、本作にはその「前夜」の雰囲気が凝縮されている。**
グランジの黎明期におけるシアトルのシーンを知る上でも、Soundgardenの進化を追う上でも、必聴のアルバムである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Green River – Dry as a Bone/Rehab Doll(1987年)
シアトル・グランジの始祖的バンドの作品。Soundgardenとも密接な関係がある。 - Mudhoney – Superfuzz Bigmuff(1988年)
もっとも「ガレージ・ロック寄り」のグランジ・アルバム。Soundgardenの初期作品との共通点も多い。 - Alice in Chains – Facelift(1990年)
よりヘヴィメタル寄りのグランジを聴きたいならこちら。Soundgardenと同じくシアトル発のバンド。 - Black Sabbath – Master of Reality(1971年)
Soundgardenのヘヴィなサウンドのルーツをたどるなら避けて通れない。 - Melvins – Gluey Porch Treatments(1987年)
初期Soundgardenと同時期に登場し、スラッジメタルの原型を築いた作品。
『Screaming Life/Fopp』は、Soundgardenの初期衝動とグランジの誕生を記録した、歴史的に重要なコンピレーションである。
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