
発売日: 1996年3月26日
ジャンル: ローファイ・インディーロック、パワーポップ、ガレージロック
ローファイの境界線を押し広げた、Guided by Voicesの野心作
1996年、Guided by Voices(GBV)は『Under the Bushes Under the Stars』をリリースし、バンドのローファイ・インディーロックのスタイルをさらに発展させた。このアルバムは、前作『Alien Lanes』(1995年)の勢いを受け継ぎながらも、GBVにとってより洗練されたサウンドへの一歩を示す作品となった。
前2作『Bee Thousand』(1994年)と『Alien Lanes』では、ローファイな録音環境と短い楽曲の詰め込みが特徴だった。しかし、本作ではより長尺の楽曲やスタジオ録音が増え、GBVの音楽がより整った形で表現されている。ただし、完全なクリーンなプロダクションではなく、ローファイ特有の荒々しさは残しつつも、より明確な構成と洗練されたメロディを取り入れたバランスの取れた作品となっている。
本作は、ロバート・ポラードとトビン・スプラウトのコラボレーションが際立っており、バンドのソングライティングの幅が広がったことも特徴のひとつだ。結果的に、本作はGBVのインディーロック期の最後のアルバムとなり、次作『Mag Earwhig!』(1997年)では、新しいメンバーを迎え、バンドのサウンドが変化することとなる。
全曲レビュー(主要曲ピックアップ)
1. Man Called Aerodynamics
アルバムの幕開けを飾るパワフルな楽曲。ガレージロック的な勢いと、ポップなメロディの融合が印象的。GBVらしい荒削りなギターが心地よい。
2. Rhine Jive Click
短いながらも、ポストパンク的なエッジの効いたリズムが特徴的な曲。ローファイ特有のノイジーなギターサウンドが際立っている。
3. Cut-Out Witch
本作のハイライトのひとつ。ポップパンク的なエネルギーと、ザ・フーを思わせるキャッチーなメロディが融合した名曲。 ロバート・ポラードのボーカルが力強く響く。
5. The Official Ironmen Rally Song
GBVの代表曲のひとつ。より構築された楽曲で、従来のローファイな雑然としたアレンジとは異なり、しっかりとした構成を持つ。パワーポップ的なメロディの完成度が非常に高く、GBVのポップセンスが光る名曲。
7. Acorns & Orioles
トビン・スプラウトがメインで手掛けた美しいバラード。ローファイながらも、シンプルなメロディとアコースティックなアレンジが際立っている。
9. Bright Paper Werewolves
ミドルテンポでメロディアスな楽曲。どこか物悲しい雰囲気を持ちつつも、ポップなフックがしっかりとある。
11. The Perfect Life
ロバート・ポラードのソングライティングが光るシンプルなパワーポップチューン。キャッチーなサビが耳に残る。
13. Underwater Explosions
ややグランジ的なヘヴィなギターリフが特徴的な楽曲。GBVらしさを保ちつつ、オルタナティブ・ロック的な要素も取り入れている。
16. Drag Days
アルバム後半のハイライト。疾走感のあるリズムと、シンガロングできるキャッチーなメロディが印象的。
18. Redmen and Their Wives
トビン・スプラウトによる幻想的なバラード。アルバムの中でも異色の楽曲で、アンビエントな要素が強く、ドリームポップ的な雰囲気も感じられる。
24. Don’t Stop Now
アルバムを締めくくるエモーショナルな楽曲。ピアノのシンプルなアレンジが印象的で、これまでのGBVとは異なる洗練されたスタイルを示唆している。
総評
『Under the Bushes Under the Stars』は、Guided by Voicesの「ローファイ時代」の集大成であり、最もメロディックで洗練された作品のひとつ。 前作『Alien Lanes』よりも、楽曲の構成がしっかりとし、スタジオ録音を増やしたことで、GBVの持つパワーポップ的な美しさがより明確に伝わるようになった。
しかし、ローファイのDIY精神はまだ色濃く残っており、その荒削りなサウンドとポップなメロディのバランスが絶妙な作品となっている。特に「The Official Ironmen Rally Song」や「Cut-Out Witch」などは、GBVの中でも特に完成度の高い楽曲として評価されている。
また、本作はGBVのインディーロック期の最後の作品でもあり、これ以降の作品ではメンバーチェンジがあり、よりプロダクションが整ったサウンドへと移行していく。その意味で、本作はGBVのオリジナルのローファイ・エネルギーが詰まった最後のアルバムとも言える。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Pavement – Wowee Zowee(1995年)
GBVと並ぶローファイ・ロックの名盤。よりカオティックで実験的な作品。 - Sebadoh – Harmacy(1996年)
ローファイな質感を残しつつ、よりメロディックな楽曲が揃ったアルバム。 - The Replacements – Pleased to Meet Me(1987年)
GBVに影響を与えたパワーポップ/オルタナティブ・ロックの傑作。 - The Olivia Tremor Control – Dusk at Cubist Castle(1996年)
サイケデリック・ポップとローファイ・ロックの融合。 - Superchunk – Foolish(1994年)
メロディアスで疾走感のあるインディーロック作品。GBVのギターロック好きなら気に入るはず。
『Under the Bushes Under the Stars』は、Guided by Voicesのローファイ・ロックの頂点であり、彼らのソングライティングの魅力が最大限に発揮された作品。
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