1. 歌詞の概要
“9 Crimes” は、アイルランドのシンガーソングライター、Damien Rice(ダミアン・ライス)が2006年にリリースしたセカンドアルバム 9 のリードシングル であり、彼の楽曲の中でも特に 暗く、痛みを伴うバラード です。
この曲のテーマは、不倫や裏切り、関係の崩壊 に関するものだと解釈されることが多く、「許されない愛」「罪の意識」「愛と裏切りの間の葛藤」 という感情が強く込められています。
タイトルの “9 Crimes” には、「9つの罪」または「重大な罪」といった意味が込められている可能性があり、恋愛における倫理的な問題を深く掘り下げた楽曲 となっています。
この楽曲は、ダミアン・ライスと、当時のコラボレーターであり元恋人でもあるリサ・ハニガン(Lisa Hannigan)のデュエット によって構成されており、二人の対話のような歌詞が、愛と罪の間で揺れ動く複雑な感情をよりリアルに伝えている のが特徴です。
2. 歌詞のバックグラウンド
ダミアン・ライスは、2002年のデビューアルバム O で世界的に成功を収めましたが、その後、リサ・ハニガンとの関係の悪化 や、音楽業界との確執 により、音楽活動に対して慎重になっていました。
2006年にリリースされたセカンドアルバム 9 は、より暗く、内省的で、個人的な感情を強く反映した作品 となっており、“9 Crimes” はその象徴的な楽曲のひとつです。
この曲が制作された時期、ダミアンとリサの関係はすでに終わりかけていたと言われており、楽曲の歌詞には、恋人同士の壊れゆく関係と、それを引きずる痛みが表現されている 可能性があります。
また、このアルバムをリリース後、二人の音楽的なコラボレーションも終了し、リサ・ハニガンはソロキャリアをスタートさせました。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、“9 Crimes” の印象的な歌詞を一部抜粋し、日本語訳とともに紹介します。
[Verse 1 – Lisa Hannigan]
“Leave me out with the waste”
(私をゴミと一緒に捨てて)
“This is not what I do”
(こんなの、私のすることじゃない)
“It’s the wrong kind of place to be thinking of you”
(こんな場所で、あなたを想うべきじゃない)
“It’s the wrong time for somebody new”
(今、新しい誰かを求めるべきじゃない)
[Chorus – Damien Rice]
“Is that alright?”
(それでいいのか?)
“Is that alright with you?”
(君はそれでいいのか?)
[Verse 2 – Damien Rice]
“I know that I should and I will go on”
(僕は進まなきゃいけない、そしてそうするつもりだ)
“But I can’t take my mind off of you”
(でも君のことが頭から離れない)
※ 歌詞の引用元: Genius.com
4. 歌詞の考察
“9 Crimes” の歌詞は、別れと罪の意識、倫理的な葛藤 を描いています。
冒頭の 「Leave me out with the waste(私をゴミと一緒に捨てて)」 というラインは、話し手が罪の意識や自己嫌悪を抱えていることを象徴 しており、まるで愛が終わることで自分自身が捨てられる存在になったかのような感覚 を表現しています。
さらに、「It’s the wrong kind of place to be thinking of you(こんな場所で、あなたを想うべきじゃない)」 というラインは、すでに終わった関係や、許されない関係の中で、まだ相手を忘れられない気持ち を示唆しており、恋愛における「道徳的なジレンマ」 を描いています。
サビの「Is that alright?(それでいいのか?)」という問いかけは、お互いの関係が崩れたことを理解しながらも、まだ心のどこかで相手を求めている切ない感情 を表しています。
特に、「I know that I should and I will go on(僕は進まなきゃいけない、そしてそうするつもりだ)」 というラインは、前へ進むべきだと理解しながらも、実際にはそれができない苦しみを感じさせます。
この楽曲の構成は、ダミアン・ライスとリサ・ハニガンの対話のように進む ため、二人の関係性や視点の違いがよりリアルに表現されている のが特徴です。
男性側はまだ愛を引きずっている一方で、女性側はもう前へ進もうとしているようにも感じられます。
全体として、“9 Crimes” は、倫理的な葛藤、愛と裏切り、そして過去の関係に対する後悔と罪悪感を描いた楽曲 であり、聴く者の心に強く響く作品となっています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
“9 Crimes” のような 感情的で、暗く、内省的なアコースティックバラード が好きな人には、以下の楽曲もおすすめです。
- “The Blower’s Daughter” by Damien Rice – 失恋と未練を描いたダミアン・ライスの代表曲。
- “Delicate” by Damien Rice – 繊細で壊れそうな恋愛を歌った美しいバラード。
- “Skinny Love” by Bon Iver – 切なく儚い愛を描いたフォークソング。
- “Fast Car” by Tracy Chapman – 現実からの逃避と恋愛の儚さを描いた名曲。
- “To Build a Home” by The Cinematic Orchestra – 壮大でメランコリックなバラード。
- “Breathe Me” by Sia – 内面の痛みと孤独を描いたエモーショナルな楽曲。
6. “9 Crimes” の影響と評価
“9 Crimes” は、リリース後すぐに話題となり、特に映画やドラマの挿入歌として頻繁に使用されるようになりました。
その悲しくも美しい旋律と、対話形式のデュエットスタイル は、楽曲に強いドラマ性を持たせ、多くのリスナーの心を掴みました。
この楽曲を最後に、ダミアン・ライスとリサ・ハニガンは音楽的なパートナーシップを解消 し、リサはソロアーティストとして活動を開始しました。
そのため、“9 Crimes” は二人の関係の終焉を象徴する楽曲とも言えるでしょう。
“9 Crimes” は、愛と裏切り、そして別れの痛みをリアルに描いた、ダミアン・ライスの最も感情的な楽曲の一つ です。その繊細なピアノと、二人のコントラストのあるボーカル は、時代を超えて多くのリスナーの心に深く響き続けています。
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