アルバムレビュー：7 Day Weekend by The Comsat Angels

アルバムレビュー

2025.04.22

発売日: 1985年9月
ジャンル: シンセポップ、ニューウェーブ、ポストパンク

概要
全曲レビュー
総評
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概要

『7 Day Weekend』は、The Comsat Angelsが1985年にリリースした5作目のスタジオ・アルバムであり、メジャーレーベルJive Records期におけるポップ路線の頂点とも言える作品である。

1983年の『Land』でシンセポップ寄りのサウンドへとシフトした彼らは、本作でその方向性をさらに押し進め、より明快でキャッチーな楽曲を揃えた。

その一方で、The Comsat Angels特有のメランコリックなボーカルや陰影のあるコード進行は健在であり、“80年代ポップ”という枠の中に、かつてのポストパンク的精神性を忍ばせている点において、極めて興味深いアルバムとなっている。

アルバム・タイトルの「7日間の週末（7 Day Weekend）」は、現代社会における労働と娯楽の境界線の曖昧化、あるいは永遠に続く“日常からの逃避”を示唆しているようにも思える。

全曲レビュー

1. Aways Near

本作の幕開けは、柔らかくも芯のあるシンセと、親密なトーンのボーカル。
ポップでありながら、どこか届かない距離感が印象的で、バンドの“ポップ時代”の哲学が凝縮されている。

2. I’m Falling

軽快なドラム・マシンと煌めくシンセが印象的なナンバー。
恋に落ちていく過程を描くような歌詞だが、そこには浮遊感と不安が同居しており、単なるラブソングには収まらない奥行きを持つ。

3. Something’s Got to Give

80年代的なダンサブル・ポップに仕上がった楽曲。
キャッチーなメロディとリフレインが耳に残る一方で、内面の葛藤がうっすらとにじむ構成となっている。

4. You’ve Got Me Thinking

穏やかでメロディアスなバラード調の一曲。
感情を露わにするのではなく、言葉にならない心の機微を丁寧に拾い上げるようなアレンジが秀逸。

5. I’m Leaving

「出て行く」という決意が感じられるタイトルとは裏腹に、音楽的には非常にソフトでメロウ。
そのギャップが、むしろ感情の揺れをリアルに描き出している。

6. 7 Day Weekend

アルバムのタイトル・トラック。
日々がすべて“週末”になった世界の虚無感やループ感を、繰り返しの構造とサビで表現。
耳当たりは軽いが、根底には都市生活の倦怠と喪失感が流れている。

7. You Move Me

恋愛の高揚感をそのまま音にしたような、アップリフティングなナンバー。
シンセポップとして非常に完成度が高く、ラジオ向けの明快さも持つ。

8. Mister Memory

再録された『Land』期の楽曲。
本ヴァージョンではよりスムーズなアレンジが施されており、メランコリックな内容とポップなサウンドの対比がより際立つ。

9. I Need Your Love

シンプルながら力強いポップ・ソング。
明快なラブソングの形を取りつつも、ボーカルのトーンやコード進行に陰りがあり、どこか切実な響きを持っている。

10. Forever Young

アルバムを締めくくるにふさわしい、哀愁と希望が交錯するナンバー。
文字通りの“若さの永続”ではなく、青春が持つ時間の儚さを逆説的に描いているようにも感じられる。

総評

『7 Day Weekend』は、The Comsat Angelsがそのキャリアにおいて最も“外向き”のポップ・アルバムを作り上げた瞬間である。

それは同時に、彼らが内省と静けさを軸に築き上げてきたポストパンク的美学との決別でもあり、また新たな“仮面”の装着でもあった。

だが、ここで彼らが選んだポップとは、空虚な消費ではなく、むしろ社会的疎外や感情の断片をポップの言語に翻訳する試みだったと言える。
それゆえに、本作は今なお語り継がれるべき“哀しみを含んだポップス”としての輝きを放っている。