
発売日: 1986年3月24日
ジャンル: ハードロック、アリーナロック
概要
『5150』は1986年3月24日にリリースされた、Van Halenの7作目のスタジオ・アルバムであり、バンドにとって決定的な転換点となった。
デイヴィッド・リー・ロス脱退後、新たなフロントマンとしてサミー・ヘイガーを迎えて制作された初めての作品であり、“Van Hagar時代”の幕開けを告げる重要作である。
プロデュースはVan Halen、Mick Jones(Foreigner)、Donn Landee。レコーディングは、ロサンゼルスの**5150 Studios(エディ・ヴァン・ヘイレンが自宅敷地に建設したスタジオ)**で行われた。
アルバムタイトルの“5150”は、カリフォルニア州の精神保護法(強制入院措置を定めるコード番号)に由来しており、さらにエディのスタジオ名としても用いられた。
リリースと同時に全米Billboard 200で初登場1位を獲得。これはVan Halenにとって初の全米1位であり、以後サミー時代のアルバムは連続してチャート1位を記録することになる。
シングルも大ヒットし、「Why Can’t This Be Love」はBillboard Hot 100で最高3位、「Dreams」は22位、「Love Walks In」は22位、「Best of Both Worlds」は12位を記録した。
トラック解説
1. Good Enough
「Hello baby!」というサミーのシャウトで開幕。エディの豪快なリフとアレックスの力強いドラミングが炸裂し、新しいVan Halenのエネルギーを提示する。
2. Why Can’t This Be Love
シンセサイザー主導の楽曲で、新時代の方向性を象徴。サミーの情感豊かな歌声とエディのメロディックなギターが絡み、甘く切ない恋愛の葛藤を描く。全米3位のヒットとなり、バンドのポップ・ロック路線を定着させた。
3. Get Up
最もハードでスピーディーな楽曲。アレックスの猛烈なドラミングとエディの速弾きが炸裂する。ライブ向きのアグレッシブな一曲。
4. Dreams
幻想的なシンセと、サミーの高音域が印象的なパワー・バラード。「空を目指せ、翼を広げろ」という歌詞は夢を追い求めるメッセージを放ち、ファンのアンセムとなった。米Billboard Hot 100で22位を記録。
陽気で爽快なギターリフが特徴。夏の夜の自由や若さを祝福する曲で、リラックスしたグルーヴ感が心地よい。
6. Best of Both Worlds
エディの力強いリフに乗せて「両方の世界のベストを手に入れたい」と歌うロックアンセム。ライブの定番曲で、シングルはBillboard Hot 100で12位を記録。
7. Love Walks In
シンセを活かしたエモーショナルなバラード。愛が突然訪れる神秘を歌い上げる。サミーの情感豊かな表現力が光り、シングルは全米22位。
8. 5150
タイトル曲。複雑な構成とエディのギターの緩急が魅力。自由や解放をテーマにした歌詞とともに、アルバムの核を担う。
9. Inside
ユーモラスかつ皮肉を込めたラスト。音楽業界やバンド内部を戯画的に描き、リラックスした雰囲気で締めくくる。
総評
『5150』は、Van Halenが新体制で再生したことを世に証明したアルバムである。サミー・ヘイガーの力強くメロディアスなボーカルによって、バンドはよりポップかつ洗練されたサウンドへ進化した。
「Why Can’t This Be Love」や「Dreams」のように、普遍的なメッセージを備えた楽曲は、単なるヴォーカリスト交代を超え、バンドの新しいアイデンティティを確立した。
同時に、エディのギタープレイ、アレックスのドラム、マイケル・アンソニーのコーラスとベースといったバンドの核は揺るがず、**“新しさと継続性の両立”**を実現している。
商業的にも批評的にも大成功を収めた『5150』は、Van Halenにとって“黄金のサミー時代”の始まりを告げる歴史的アルバムなのである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Journey – Escape (1981) 「Don’t Stop Believin’」を筆頭に、メロディックなロックとドラマティックなバラードが融合した名盤。
- Def Leppard – Hysteria (1987) ポップとハードロックの完璧な融合を果たした80年代の金字塔。
- REO Speedwagon – Hi Infidelity (1980) キャッチーでソフトなロック感覚が魅力。『5150』のポップ性と共鳴。
- Bon Jovi – Slippery When Wet (1986) 「Livin’ on a Prayer」など、80年代を代表するポップロック・アンセムを収録。
- Toto – IV (1982) シンセと洗練された演奏が際立つ名盤。『5150』のファンにも刺さるはず。
訂正注記
【訂正】初出でプロデューサーをTed Templemanと記載していましたが、正しくはVan Halen/Mick Jones/Donn Landeeでした(2025年9月5日修正)。
コメント
今日二度目ですがあら捜しでは全くありませんのであしからず。誤記がありました。5150のプロデュースはバンド本体、ドン・ランディ、ミック・ジョーンズです。テッド・テンプルマンではありません。おそらくAIによる情報ミスがあるのでは?
ご指摘ありがとうございます。修正しました。