発売日: 1999年3月15日
ジャンル: オルタナティブロック、アートロック、エクスペリメンタルロック
『13』は、Blurのキャリアの中でも特に実験的で感情的なアルバムだ。前作『Blur』でブリットポップの枠を超えたバンドは、本作でさらにそのスタイルを深化させ、個人的な感情と音楽的な挑戦を融合させた作品を生み出した。ギタリストのグレアム・コクソンが主導するノイズやサイケデリックな要素、デーモン・アルバーンが持ち込む内省的な歌詞と感情的なボーカルが特徴的だ。
本作では、アルバーンと当時の恋人ジャスティーン・フリッシュマン（Elastica）の破局をテーマにした楽曲が多く、失恋や孤独、再生への模索といった感情がアルバム全体を貫いている。また、プロデューサーにウィリアム・オービットを迎えたことで、アンビエントやエクスペリメンタルなサウンドが加わり、Blurの音楽性はより複雑で奥行きのあるものとなった。
トラック解説
- Tender
アルバムのオープニングを飾る壮大なバラード。ゴスペル風のコーラスが印象的で、「愛は最高のものだ」と繰り返す歌詞が、失恋からの癒しと救いを感じさせる。シンプルなメロディーが心に深く響く一曲だ。 - Bugman
攻撃的なギターリフとノイジーなサウンドが特徴の楽曲。実験的で荒々しい雰囲気の中に、Blurのエネルギーとユーモアが詰まっている。 - Coffee & TV
グレアム・コクソンがリードボーカルを務める代表曲の一つ。軽やかなメロディーとポップなギターサウンドの裏に、孤独や現実逃避のテーマが描かれている。キャッチーなメロディーとMVの牛乳パックキャラクターも印象的。 - Swamp Song
タイトル通り、湿地帯のようなジメジメとした雰囲気を持つ楽曲。リフの繰り返しが耳に残るが、全体としては暗くヘヴィな印象を与える。 - 1992
アンビエントなサウンドとエモーショナルな歌詞が特徴の一曲。ジャスティーンとの破局を描いたとされる歌詞と、グレアムの歪んだギターが痛切な感情を伝える。 - B.L.U.R.E.M.I.
パンク的な速いテンポと叫ぶようなボーカルが印象的な楽曲。短いながらもエネルギッシュで、Blurの皮肉なユーモアが感じられる。 - Battle
7分を超える長尺の楽曲で、エレクトロニックな要素が際立つ。サイケデリックで実験的な音作りが、アルバムの中でも異彩を放つ。 - Mellow Song
穏やかで浮遊感のある楽曲。シンプルなアコースティックギターと控えめなアレンジが、孤独と再生への願いを歌う歌詞を引き立てている。 - Trailerpark
ミニマルなリズムとメロディーが印象的な一曲。生活感のある歌詞とシンプルなサウンドが、Blurの多様性を感じさせる。 - Caramel
失恋の痛みを直接的に表現した楽曲。スローでアンビエントなアレンジが、アルバム全体の中で際立つ切なさを生んでいる。 - Trimm Trabb
抑制されたギターリフと静かな始まりから、後半に向けて感情が爆発する構成が特徴。反抗的で挑発的なムードが印象的だ。 - No Distance Left to Run
アルバムのハイライトの一つで、デーモンがジャスティーンとの破局について赤裸々に歌う楽曲。切ないメロディーと率直な歌詞が、リスナーの心に深く響く。 - Optigan 1
アルバムのエンディングを飾る短いインストゥルメンタル曲。タイトルの通り、Optigan（オプティガン）という古いオルガンが使われており、ノスタルジックで夢のような雰囲気を持つ。
アルバム総評
『13』は、Blurがバンドとしての限界に挑戦し、感情的にも音楽的にも大胆な方向へと進化したアルバムだ。失恋や孤独というテーマを中心に据えながらも、エクスペリメンタルなサウンドを取り入れることで、アルバム全体に統一感と深みが生まれている。「Coffee & TV」や「Tender」のような名曲から、ノイズやアンビエントを駆使した挑戦的な楽曲まで、多様性に富んだ内容で、Blurのアーティストとしての柔軟性と創造性を見せつけている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
OK Computer by Radiohead
失望感と内省をテーマにした傑作で、実験的なサウンドが『13』と共通する。
The Soft Bulletin by The Flaming Lips
エクスペリメンタルでありながら感情的な深みを持つアルバム。Blurの実験性に共鳴する作品。
Kid A by Radiohead
エレクトロニックやアンビエントを取り入れた実験的なアルバムで、Blurの『13』と似た挑戦的な精神を感じられる。
Ladies and Gentlemen We Are Floating in Space by Spiritualized
感情的で壮大な音楽が特徴のアルバムで、『13』の叙情性とリンクする。
Sea Change by Beck
失恋をテーマにした内省的なアルバムで、デーモン・アルバーンの歌詞世界に通じる作品。
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