
発売日: 2009年9月28日
ジャンル: プログレッシブ・ロック、エクスペリメンタル・ロック、ラテンロック
哲学と音楽の融合——Omar Rodríguez-Lópezが創り上げたラテン・プログレッシブの傑作
Xenophanesは、Omar Rodríguez-Lópezのソロワークの中でも特にコンセプチュアルな作品であり、彼の音楽的ルーツであるラテン音楽と、プログレッシブ・ロックの複雑なアレンジが融合したアルバムである。本作のタイトルは、古代ギリシャの哲学者クセノファネス(Xenophanes)に由来し、哲学的なテーマを持ったアルバムとしても興味深い。
音楽的には、The Mars Voltaのサウンドを彷彿とさせながらも、よりストレートなメロディと、ラテンリズムを基調としたアレンジが特徴となっている。また、本作ではOmar自身がヴォーカルを担当しており、彼のソロ作品の中でも特異な位置を占めるアルバムである。
さらに、XenophanesはOmar Rodríguez-Lópezの初のコンセプト・アルバムであり、輪廻転生をテーマにした物語が全編を通して描かれる。そのため、楽曲が互いに繋がっており、アルバム全体を通して聴くことで、一つのストーリーとして楽しめる作品となっている。
全曲レビュー
1. Azoemia
アルバムのオープニングを飾る、幻想的なイントロとポリリズミックなパーカッションが印象的な楽曲。徐々にバンドサウンドへと展開し、ラテンのリズムとプログレッシブなギターが絡み合う。
2. Miel del Ojo
変則的なリズムが特徴的な楽曲で、サイケデリックなギターとエフェクトが全体を包み込む。Omarのヴォーカルがスペイン語で歌われ、The Mars Voltaとは異なる独自の雰囲気を持つ。
3. Mundo de Ciegos
ヘヴィなギターリフと、タイトなリズムセクションが際立つ楽曲。スペイン語の歌詞が織りなす独特の響きが、ラテンロックとプログレッシブ・ロックの融合を感じさせる。
4. Ojo al Cristo de Plata
ミステリアスなイントロから始まり、中盤から疾走感のある展開へと移行するプログレッシブな楽曲。ギターソロも長く、Omarの即興的なプレイが光る。
5. Perder el Arte de la Razón
静かなアコースティックギターのイントロから始まり、徐々にエモーショナルなロックサウンドへと発展。Omarのヴォーカルが最も感情的に響く楽曲の一つ。
6. Desarraigo
スローテンポの楽曲で、ラテン音楽の影響が強いパーカッションと、フラメンコのようなギターが特徴的。サイケデリックなエフェクトも随所に散りばめられ、深みのあるサウンドが展開される。
7. Sangrando Detrás de los Ojos
アルバムの中でも特に実験的な楽曲で、ポストロック的な静寂と、ノイズの爆発が繰り返される構成。楽曲の展開が予測不能で、リスナーをトランス状態へと導くような雰囲気を持つ。
8. Oremos
アコースティックギターとシンプルなメロディが美しい楽曲。バンドサウンドが抑えられ、Omarのヴォーカルとメロディをじっくりと味わうことができる。
9. Flores de Cizaña
アルバムのクライマックスとも言える楽曲で、爆発的なリズムチェンジと、カオティックなギターが特徴。ジャズのような即興性と、ラテン音楽の情熱的なエネルギーが融合している。
10. Asco Que Conmueve los Puntos Erógenos
ラストを飾るトラックで、ミニマルなリズムから始まり、徐々に壮大な展開へと移行する。最後の数分間は、静寂とギターのフィードバックが交錯し、アルバムのテーマである「輪廻転生」の終わりと新たな始まりを暗示している。
総評
Xenophanesは、Omar Rodríguez-Lópezのソロ作品の中でも特にメロディアスで、かつコンセプチュアルな作品である。スペイン語の歌詞とラテン音楽のリズムを取り入れることで、彼のルーツを強く感じさせるアルバムとなっている。
また、輪廻転生をテーマにしたアルバム構成が独特であり、各楽曲がストーリーの一部として機能することで、アルバム全体を通して聴くことで新たな発見がある作品となっている。The Mars Voltaのファンにとっては親しみやすいサウンドだが、よりシンプルでメロディックな楽曲が多く、Omarのヴォーカルが全面に出ている点も特徴的。
本作は、Omar Rodríguez-Lópezが自らのアイデンティティを探求し、新たな音楽的な試みを行った重要なアルバムであり、プログレッシブ・ロック、ラテンロック、サイケデリック・ロックを融合させた彼の独自のスタイルが確立された作品である。
おすすめアルバム
- Omar Rodríguez-López – Los Sueños de un Hígado (2009)
- Xenophanesと同時期に制作された作品で、スペイン語の歌詞とラテンロックの要素が強い。
- The Mars Volta – Octahedron (2009)
- よりメロディアスでシンプルなサウンドが特徴で、Xenophanesと共通する部分が多い。
- Caetano Veloso – Transa (1972)
- ラテン音楽とサイケデリックな要素を融合させた作品で、Omarのルーツを感じさせる。
- Santana – Caravanserai (1972)
- ラテンロックとプログレッシブなサウンドが融合した作品で、Omarの音楽性と通じる部分がある。
- King Crimson – Lizard (1970)
- ジャズやラテンの要素を取り入れたプログレッシブ・ロックの名盤で、Omarの作風に影響を与えた可能性がある。
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