発売日: 1997年8月25日
ジャンル: オルタナティブロック、ブリットポップ
ウェールズ出身のStereophonicsによるデビューアルバムWord Gets Aroundは、地元の日常や庶民的な物語をテーマにしたリアルで共感を呼ぶ作品だ。リリース当時、OasisやBlurなどのブリットポップのムーブメントが全盛期を迎えていた中で、Stereophonicsはより親密で現実的な視点を提示し、イギリスのロックシーンに新たな風を吹き込んだ。
アルバム全体を通して、Kelly Jonesの荒削りながらも感情のこもったボーカルが際立つ。ギターを中心としたシンプルなサウンドは、地元のパブやストリートの情景を彷彿とさせ、聴き手に強い臨場感を与える。歌詞は、地元コミュニティの人々や出来事を題材にしながらも、普遍的なテーマを描き、幅広いリスナーに共感を与える内容となっている。
各曲ごとの解説
1. A Thousand Trees
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、学校のスキャンダルを題材にした物語的な歌詞が印象的だ。軽快なギターリフとKelly Jonesの語りかけるようなボーカルがリスナーを引き込む。
2. Looks Like Chaplin
曲全体にエネルギーが満ちており、アグレッシブなギターとパーカッションが特徴的。歌詞では、平凡な人々の中に潜むユニークさや個性を描いている。
3. More Life in a Tramp’s Vest
軽快でリズミカルなトラックで、日常の些細な出来事をユーモラスに描いた歌詞が光る。キャッチーなメロディとポップな要素が、アルバムの中でも特に親しみやすい印象を与える。
4. Local Boy in the Photograph
地元の少年の悲劇を描いた歌詞が感動的な一曲。ギターのアルペジオとエモーショナルなサビが特徴で、Stereophonicsの代表曲として知られる。地元に密着したテーマが、アルバムの中核を成している。
5. Traffic
テンポを落としたバラードで、都会の喧騒や孤独感を描写した歌詞が印象的。シンプルなアコースティックギターが楽曲全体を支えており、Kelly Jonesのボーカルが心に響く。
6. Not Up to You
緩やかなリズムとメランコリックな雰囲気が特徴のトラック。運命や人生の不可解さをテーマにした歌詞が共感を呼ぶ。ギターとドラムのバランスが絶妙で、リスナーを深い思索へと誘う。
7. Check My Eyelids for Holes
遊び心のあるタイトルが目を引く楽曲で、ポップで明るい雰囲気が漂う。歌詞にはユーモアが散りばめられており、アルバム全体の流れに軽やかさを加えている。
8. Same Size Feet
鋭いギターリフとドライブ感のあるリズムが特徴のロックナンバー。歌詞では、日常生活の奇妙で面白い側面が描かれている。
9. Last of the Big Time Drinkers
地元のパブ文化や飲酒をテーマにしたトラックで、どこか哀愁を帯びたメロディが印象的。Stereophonicsらしい庶民的な視点が光る一曲だ。
10. Goldfish Bowl
切り詰めたギターワークと詩的な歌詞が特徴の楽曲。閉鎖的な環境に閉じ込められた感覚を描写しており、鋭い社会批評が込められている。
11. Too Many Sandwiches
タイトルからも分かる通り、ユーモラスな視点で描かれたトラック。軽快なリズムとシンプルなアレンジが楽曲の親しみやすさを高めている。
12. Billy Davey’s Daughter
アルバムのラストを飾るバラードで、切ないメロディと感情的な歌詞が印象的。静かなエンディングがアルバム全体の締めくくりにふさわしい余韻を残す。
フリーテーマ:地元愛とリアリズム
Word Gets Aroundは、Stereophonicsの地元愛が強く感じられるアルバムだ。歌詞の多くが彼らの故郷ウェールズに根ざしたテーマを扱い、日常の出来事をリアルに描写している。このリアリズムこそがアルバムの魅力であり、親しみやすいサウンドと相まって多くのリスナーに共感を与えている。
アルバム総評
Stereophonicsのデビュー作Word Gets Aroundは、彼らの原点を感じさせる作品である。地元の日常を題材にした物語性豊かな歌詞と、シンプルながらもエネルギッシュなサウンドが特徴だ。ブリットポップ全盛期の中で独自の視点を提示し、後の成功への基盤を築いたこのアルバムは、ファンにとっても欠かせない一枚だろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Performance and Cocktails by Stereophonics
Stereophonicsの2作目で、より広がりのあるサウンドと成熟した歌詞が楽しめる。
Definitely Maybe by Oasis
ブリットポップの原点とも言えるアルバムで、若さとエネルギーが溢れる。
The Bends by Radiohead
メロディックで感情的なロックサウンドが共通点。
Urban Hymns by The Verve
感情豊かなメロディと普遍的なテーマが、Stereophonicsファンに響くはず。
Elastica by Elastica
ブリットポップ初期のエネルギーとシンプルなロックサウンドが楽しめる。
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