アルバムレビュー：Wild in the U.S.A. by Bow Wow Wow

発売日: 1998年
ジャンル: パンクポップ、ニューウェイヴ、ライブロック

概要
代表的収録曲解説（抜粋）
総評
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概要

『Wild in the U.S.A.』は、Bow Wow Wowが1998年にリリースしたコンピレーション／ライブ・アルバムであり、彼らが80年代初頭に築いた名声の“再訪”を試みた、いわばリユニオン的作品である。
このアルバムには、新録音のスタジオトラックと90年代後半に行われた米国でのライブ音源が混在しており、彼らのアーカイブでありながら“今”の表現を刻んだ、時代横断型の記録とも言える内容となっている。

アナベラ・ルウィンがヴォーカルに復帰し、オリジナルメンバーであるリー・ゲン（g）、マシュー・アシュマン（g／当時故人）、デイヴ・バーバー（dr）らの精神を継ぐ新体制のもと、バンドはパンクのエネルギーとダンスビートを現代的に再構成。
曲順はヒット曲を網羅しながらも、どこか無秩序でラフな流れを持ち、かつてのBow Wow Wowらしいアナーキーな魅力がそのまま維持されている。

“ポップと反逆の境界線”に立っていた彼らが、80年代から90年代へ、そして21世紀初頭へとどのように声を繋いだのか――その答えの一端が、本作には記録されている。

代表的収録曲解説（抜粋）

Aphrodisiac (新録)

リユニオン後に録音された新曲のひとつ。
80年代的なエキゾチックさを残しつつ、ビートとテンポは明らかに90年代のクラブ文化を意識した作りになっている。
アナベラのボーカルも成熟を増し、少女の挑発から女性の自信へとトーンが変化しているのが印象的。

I Want Candy (Live)

バンド最大のヒット曲のライブバージョン。
オリジナルの跳ねるようなビートと比べると若干テンポは落ちているが、そのぶんグルーヴが太く、観客との一体感も強く感じられる。
シンガロングの要素も加わり、フェスティバル的な昂揚感を放つ。

Do You Wanna Hold Me? (Live)

ポップ性とアイロニーを併せ持つ名曲。
ライブではよりパンキッシュなテンションが強調されており、当時のエレクトロ・ポップとは一線を画す肉体的なパフォーマンスが堪能できる。
アナベラの存在感がとにかく強い。

Louis Quatorze (Live)

フェティッシュで皮肉なリリックが際立つこの曲も、ライブでは一層アグレッシブに展開される。
ギターの鋭さとパーカッションの緻密さが融合し、アートロックとしてのBow Wow Wowの資質が見直される瞬間。

Baby, Oh No (Live)

アルバム『See Jungle!』期の楽曲。
“かわいい”をテーマにしながら、その裏にあるアイデンティティや不安を切り取る曲。
ライブではビートが強調され、クラブ／パンク両方の文脈で踊れるアレンジに変貌している。

総評

『Wild in the U.S.A.』は、Bow Wow Wowというバンドの“過去”と“再生”が複層的に編み込まれた、非常にユニークな作品である。
ライブ音源のラフさ、息づかい、観客とのコール＆レスポンス、そして新録のスタジオ音源に見られる変化と進化。
これらが共存することで、単なる再発掘でも懐古でもない、“延長線上の現在”が刻まれている。

オリジナル・パンク世代の“今”の姿を映し出すという意味で、本作はNostalgia Rockではなく、“生きているアーカイブ”である。
アナベラの存在感、ビートへのこだわり、そして時代を超えてなお続く“自分たちの音”を追い求める姿勢は、Bow Wow Wowがただの懐メロバンドではないことを示している。

あの奇天烈で愛らしく、アナーキーでポップだったBow Wow Wowが、“大人になった”姿を知るにはうってつけのアルバムである。