1. 歌詞の概要
「Where’s the Love（愛はどこにあるの？）」は、アメリカの兄弟バンドHanson（ハンソン）が1997年にリリースしたメジャーデビューアルバム『Middle of Nowhere』からのセカンドシングルであり、世界的ヒットとなった「MMMBop」に続く重要な一曲である。
タイトルが示すように、この楽曲のテーマは「愛の喪失」である。具体的には、嘘、不信、偏見、対立といった社会的・人間的な分断に対して、「いったいどこに愛があるのか？」と問いかけるメッセージソングとなっている。
Hansonは当時、最年少で11歳（ザック）、最年長でも16歳（アイザック）という若さだったが、彼らがこの楽曲で語るのは単なる青春の悩みではなく、世界全体に対する鋭い観察と、変化を望む声である。それは、子どもだからこそ言える率直な疑問でもあり、大人たちの鈍感さをあぶり出す問いでもある。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Where’s the Love」は、Hansonのメジャーデビューアルバム『Middle of Nowhere』の中心的な楽曲であり、前作「MMMBop」が放った光のあとに現れた、より社会的なテーマをもった作品である。この曲は、グループの音楽的成長や内面の深さを伝える存在として、音楽メディアやファンからも高く評価された。
プロデューサーはStephen LironiおよびプロデュースチームThe Dust Brothers。ファンク、ソウル、ポップの要素を絶妙にブレンドしたアレンジは、当時のティーンポップとは一線を画すグルーヴ感を生み出している。R&Bやオールドスクール・モータウンの影響も色濃く、「音で問いを発する」というスタンスが強く打ち出されているのが特徴だ。
また、この楽曲がリリースされた1997年という年は、ポップと社会的メッセージが交差する時代でもあった。ブリットポップの退潮、ヒップホップの拡大、そして若年層に向けた音楽の在り方が問われる中で、Hansonはポップスターであると同時に、まっすぐな言葉を届ける“若き語り部”としての役割も果たしていたのである。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Something has been going on and I don’t know what it is
何かがおかしいんだ、でもそれが何なのかはっきりしないYou don’t mind the taking girl, but you don’t know how to give
君は奪うことばかりで、与えることを知らないYou drove me crazy but I don’t know, baby
君のせいで混乱してるけど、理由はわからないWhere’s the love?
愛はどこにあるんだ？If you say you don’t care, you lie
「気にしてない」と言うなら、それは嘘さ‘Cause love is the thing we all rely on
愛こそが、みんなが頼りにしてるものなのにWhere’s the love, it’s not enough
愛はどこにあるの？ こんなんじゃ足りないよIt makes the world go ‘round and ‘round
愛こそが、この世界を動かすはずなのに
引用元: Genius Lyrics – Hanson / Where’s the Love
4. 歌詞の考察
「Where’s the Love」は、若いアーティストがここまでまっすぐに“世界への問い”を投げかけたという点で、1990年代のポップスにおいて特異な存在である。社会の不正や、無関心に対する批判、そして「愛が足りない」という嘆きが、子どもたちの視点から語られることで、むしろ大人よりも鋭く響く。
この楽曲において、愛は“ロマンティックな感情”としてではなく、“人と人とをつなぐ根源的な力”として描かれている。「奪うことはしても、与えることをしない」「気にしてないと口では言うけど、本当は気にしている」——そんな人間の矛盾や、偽りの感情にHansonは鋭くメスを入れている。
その核心は、子どもであるがゆえの“ピュアさ”だ。彼らはただ感情をぶつけているわけではない。「この世界には何かが足りない」「その足りないものは、たぶん愛なんじゃないか」と、静かに、しかし確かに問いを発している。だからこそこの曲は、単なるティーン向けのポップに終わらず、今聴いても深い余韻を残すのである。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Heal the World” by Michael Jackson
子どもたちの未来のために、愛と平和を求める普遍的なメッセージソング。 - “What’s Going On” by Marvin Gaye
社会の混乱や戦争を背景に、愛と理解の必要性を歌ったソウルの金字塔。 - “True Colors” by Cyndi Lauper
人間の本質的な優しさと、それを隠さず生きることの大切さを描いた静かな名曲。 - “If Everyone Cared” by Nickelback
もしみんなが思いやりを持っていたら、という仮定の中に希望を見出すロックバラード。 - “Waiting on the World to Change” by John Mayer
変わらない世界に対する焦燥と諦め、でもその中でも希望を失わない姿勢を描く。
6. “ポップであること”と“誠実であること”の共存
「Where’s the Love」は、ポップソングが「軽い」と見なされがちな風潮に一石を投じる楽曲である。それはキャッチーなメロディと、明快なリズム、そして圧倒的に若い声に包まれていながら、歌詞の核心には“人間としての誠実さ”があるからだ。
Hansonはこの楽曲で、ティーンポップという枠を押し広げた。アイドル的な見た目と、生演奏によるリアルなバンドサウンド。そして、ただのラブソングではなく、「なぜ人は冷たくなるのか」「なぜ愛を与えようとしないのか」という普遍的なテーマ。これらすべてが混ざり合い、Hansonは“若さ”という武器で、ポップの可能性を更新してみせた。
この曲を聴くとき、私たちは一度立ち止まって、自分自身に問いかけたくなる。「最近、自分は誰かに愛を与えているだろうか？」「世界を少しでも良くするために、何かできているだろうか？」と。そうした“内省の種”をまく力が、「Where’s the Love」には宿っているのだ。
だからこそこの曲は、今でも色あせない。むしろ、社会が分断と無関心に向かう時代にこそ、もう一度耳を傾けるべき「優しい抗議の歌」として、強い輝きを放っている。
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