発売日: 1981年6月20日
ジャンル: ポストパンク、インダストリアル・ロック
Killing Jokeの2枚目のアルバム「What’s THIS For…!」は、デビュー作に続き、さらに攻撃的でリズミカルなサウンドが展開されている。ポストパンクとインダストリアルの要素を融合し、荒涼としたエネルギーが支配するこのアルバムは、前作以上にミニマリスティックかつ原始的なアプローチが強調されている。ベースとドラムが際立つ反復的なビートと、重厚なギターリフが絡み合い、ジャズ・コールマンの神経を逆なでするようなボーカルが、アルバム全体にダークでエキゾチックな雰囲気を漂わせる。
プロデューサーには前作同様にジョン・レッキーが関わっており、荒々しくも洗練された音作りが特徴的である。このアルバムは、Killing Jokeが持つ社会批判的なメッセージがさらに強化され、リスナーに不穏なエネルギーを感じさせる。一貫して攻撃的なトーンが貫かれており、当時のポストパンクシーンでも異彩を放つ存在となった。Killing Jokeはここで、インダストリアル・ロックの進化を一歩先取りし、他のバンドが追随するきっかけとなった。
トラックごとの解説
1. The Fall of Because
アルバムの幕開けを飾るトラックで、ヘヴィなベースラインと反復するドラムビートが印象的。攻撃的なギターが絡み合い、不穏な雰囲気が漂う。タイトル通り、崩壊と無力感がテーマで、Killing Jokeらしいダークな世界観が表現されている。
2. Tension
リズミカルで緊張感のあるトラックで、タイトル通り「緊張」が前面に押し出されている。反復的なリフとビートがリスナーを惹きつけ、ジャズ・コールマンの怒りに満ちたボーカルが圧巻の一曲。
3. Unspeakable
シンプルでミニマルなアプローチが特徴のトラック。反復されるビートと荒々しいギターリフがリスナーを圧倒し、アルバム全体のダークなトーンをさらに強調している。無言の怒りと不安感が音楽として具現化されている。
4. Butcher
重々しいリズムとエコーの効いたギターが、荒廃した風景を描き出すようなトラック。社会への冷徹な視線が歌詞に込められており、Killing Jokeの批判精神が強く感じられる。
5. Follow the Leaders
シングルカットされた代表曲で、ポップな要素とダークなエネルギーが見事に融合している。キャッチーなメロディと力強いビートが印象的で、リスナーに対してリーダーへの盲信や従属への警告を投げかけている。
6. Madness
狂気をテーマにしたトラックで、反復するリズムが聴く者の精神を揺さぶる。ギターのディストーションが不協和音を奏で、曲全体に不穏なエネルギーが充満している。タイトル通り、狂気が音として表現されている。
7. Who Told You How?
アフリカ音楽の影響が感じられるリズムセクションが特徴で、Killing Jokeの実験的な一面が垣間見える。エスニックなビートが独特なムードを作り出し、ポストパンクに新しい色を加えている。
8. Exit
アルバムを締めくくるトラックで、沈んだ雰囲気と退廃的なムードが漂う。Killing Jokeのダークでミステリアスなスタイルが詰まった一曲で、アルバム全体のテーマを反映した深い余韻を残す。
アルバム総評
「What’s THIS For…!」は、Killing Jokeがポストパンクの枠を越え、独自のインダストリアル・ロックスタイルを確立したアルバムである。重厚で反復的なビート、攻撃的なギター、そして冷たいシンセサウンドが一体となり、社会や権威に対する怒りや不満を表現している。「Follow the Leaders」や「Madness」などの楽曲は、ポストパンクファンだけでなく、後のインダストリアル・メタルやゴシックロックのファンにも影響を与えた。本作は、Killing Jokeの革新性と時代を超えたサウンドが詰まった、歴史的な作品として位置づけられる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Unknown Pleasures by Joy Division
冷たいシンセと不穏な雰囲気が共通するポストパンクの名作。Killing Jokeのダークなサウンドが好きなリスナーには必聴の一枚。
Metal Box by Public Image Ltd.
前衛的でエクスペリメンタルなサウンドが特徴。Killing Jokeと同様に、社会への批判とインダストリアルなエネルギーが感じられる。
Pornography by The Cure
不安と絶望に満ちたゴシックロックの名盤で、Killing Jokeのダークなトーンと共鳴する作品。
The Scream by Siouxsie and the Banshees
パンキッシュなエネルギーとゴシックな雰囲気が融合したアルバム。Killing Jokeのエッジの効いたサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
Scary Monsters (and Super Creeps) by David Bowie
エクスペリメンタルで暗いテーマが詰まった一枚で、Killing Jokeの影響が垣間見える。ダークなロックサウンドを楽しめる。
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