発売日: 2020年10月23日
ジャンル: インディー・ポップ, ドリーム・ポップ, ベッドルーム・ポップ
『Wachito Rico』は、Boy Pabloのフルアルバムとして初めてリリースされた作品で、前作のEP 『Soy Pablo』 や 『Roy Pablo』 で見せた彼らの甘酸っぱいインディー・ポップサウンドをさらに洗練させ、より多彩で成熟した内容に仕上げている。「Wachito Rico」とは、チリのスラングで「イケメン」を意味し、アルバム全体を通して青春、恋愛、自己発見の物語が展開されている。
フロントマンのニコラス・ミュノスは、このアルバムで恋愛の喜びや不安、そして失恋の痛みを描きつつ、特有の軽やかでキャッチーなメロディと、ローファイでドリーミーなサウンドを存分に発揮している。これまでの作品で見られたベッドルーム・ポップの親しみやすいDIYスタイルに加えて、よりエレクトロニカやラテンの要素を織り交ぜ、豊かな音楽的深みを持たせている。
それでは、『Wachito Rico』のトラックを順に見ていこう。
1. I Hope She Loves Me Back
アルバムのオープニングトラックは、軽快なギターリフとシンセサウンドが心地よく響くキャッチーなナンバー。歌詞には、片思いの不安や期待が描かれており、Boy Pabloらしい甘く切ないメロディが魅力的だ。シンプルなアレンジながらも、楽曲全体に漂う爽やかさが耳に残る。
2. Hey Girl
軽やかなリズムと明るいギターが特徴の楽曲で、ポップでダンサブルな一曲。ミュノスのボーカルが優しく響き、リスナーをリラックスさせる。恋愛に対する前向きなメッセージが込められており、キャッチーなサウンドが心地よい。
3. Leave Me Alone
「Leave Me Alone」は、ポップでありながら少しダークな雰囲気を持つトラック。失恋の痛みを描きながらも、ビートが軽快で、ミュノスのボーカルが感情的に響く。歌詞のテーマは重いが、サウンドはポップでリズミカルに仕上がっている。
4. Honey
この曲は、温かいギターサウンドと優しいボーカルが際立つバラードで、アルバム全体に漂うメランコリックな雰囲気を深めている。愛する人への素直な気持ちを歌っており、シンプルでありながらも心に残る一曲だ。柔らかなリズムと甘いメロディが心地よい。
5. Wachito Rico
アルバムのタイトル曲であり、ラテンのリズムやサウンドが取り入れられた特徴的なトラックだ。ポップでありながらも独特のノスタルジックな雰囲気が漂い、リスナーをBoy Pabloの世界に引き込む。歌詞には自己認識と恋愛のテーマが絡み合っており、アルバム全体のテーマを象徴する一曲。
6. Aleluya
「Aleluya」は、宗教的な要素を含んだタイトルながらも、軽やかなビートとポップなメロディが印象的な楽曲だ。幸福感に満ちた雰囲気の中に、恋愛や自己の成長についてのテーマが描かれており、アルバムの中でも特に明るいトーンを持つ。
7. te vas//don’t go
スペイン語と英語をミックスしたこの曲は、異文化を融合させたBoy Pabloらしい楽曲。シンプルなギターとボーカルが中心となり、恋愛における別れの痛みや葛藤を静かに描いている。歌詞のメッセージが感情的に響き、メロディの切なさが際立つ。
8. come home
このトラックは、ダウンテンポでエモーショナルな曲調が特徴だ。恋人が戻ってくることを願う気持ちがストレートに表現されており、サウンドはシンプルながらも深みがある。ミュノスのボーカルが特に感情的に響き、アルバムの中でも特に心に残る一曲。
9. mustache
タイトル通り、遊び心のあるユーモラスなトラック。軽快なリズムと楽しいメロディが魅力的で、恋愛や外見についての軽やかなテーマが描かれている。リスナーを笑顔にさせる、ポップで楽しい一曲。
10. rest up
シンセサイザーとギターが優しく重なり合うこの曲は、リラックスした雰囲気を持ちつつも、歌詞には深い感情が込められている。恋愛の終わりや再生がテーマであり、シンプルなアレンジの中に感情が凝縮されている。
11. Velvet Light
アルバムの締めくくりを飾るこのトラックは、ゆったりとしたリズムとドリーミーなサウンドが心地よいバラード。歌詞には、光の中での再生や希望が描かれており、ミュノスのボーカルが優しく響く。アルバム全体を通してのテーマがこの曲で集約され、感動的なフィナーレを迎える。
アルバム総評
『Wachito Rico』は、Boy Pabloが恋愛、自己発見、そして成長をテーマに描いたコンセプチュアルな作品だ。インディー・ポップ、ドリーム・ポップの要素に加え、ラテンミュージックやエレクトロニカを融合させた豊かなサウンドスケープが特徴で、楽曲ごとに異なるリズムやメロディが展開されている。ミュノスの柔らかいボーカルと、甘く切ない歌詞が調和し、青春の喜びや苦しみが繊細に表現されている。「Wachito Rico」というタイトルが象徴するように、恋愛や自分自身を見つめ直す旅がアルバム全体を通じて描かれており、感情的に深く響く作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- 『Igor』 by Tyler, The Creator
恋愛と自己発見をテーマにしたアルバムで、エレクトロニカとポップの融合が『Wachito Rico』のサウンドと共鳴する。 - 『Bcos U Will Never B Free』 by Rex Orange County
切なく甘いメロディと青春の感情を描いたベッドルーム・ポップの名作。Boy Pabloの感情豊かなスタイルに共通点がある。 - 『Salad Days』 by Mac DeMarco
リラックスしたギターサウンドとローファイな雰囲気が特徴で、Boy Pabloの軽やかな音楽性と通じる部分が多い。 - 『What Could Possibly Go Wrong』 by Dominic Fike
インディーポップとヒップホップが融合したアルバムで、Boy Pabloのユースフルで楽観的な感覚が好きな人におすすめ。 - 『Divinely Uninspired to a Hellish Extent』 by Lewis Capaldi
エモーショナルな歌詞とキャッチーなメロディが特徴。失恋や愛をテーマにしたBoy Pabloの楽曲に共感するリスナーに最適。
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