発売日: 1978年2月10日
ジャンル: ハードロック
1978年のロックシーンを一変させた記念碑的なアルバム、Van Halenのデビュー作。ギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンの革新的なテクニックと、デイヴィッド・リー・ロスのカリスマ的なヴォーカルの組み合わせが、当時の音楽界に衝撃を与えた。本作は、Ted Templemanのプロデュースのもと、Warner Bros. Recordsからリリースされ、そのダイナミックな音楽性と、遊び心あふれるアプローチで瞬く間にクラシックとなった。
エディのライトハンド奏法（タッピング）は、本作で世間に広く知られるようになり、以後、多くのギタリストに多大な影響を与えた。全体を通して聴ける彼の流麗なギターワークは、ロックの新たな基準を設定したと言える。また、デイヴィッドのヴォーカルは、ブルースに根ざしながらもパーティー感溢れる軽快さを併せ持ち、アルバム全体を華やかに彩っている。収録曲はどれも短く鋭いエネルギーを持ち、リスナーを一瞬で引き込む力がある。
トラック解説
1. Runnin’ with the Devil
オープニングトラックは、重厚なベースラインと不吉さを漂わせるサウンドで幕を開ける。エディのギターは比較的控えめだが、その分デイヴィッドのヴォーカルが際立つ。「God knows I’ve tried…」という歌詞には、自由を求める心情と、同時に逃れられない現実への不安が込められている。壮大で力強いイントロは、ロックファンの心を掴むに十分だ。
2. Eruption
わずか1分42秒のインストゥルメンタルながら、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターテクニックを象徴する一曲。ライトハンド奏法が炸裂し、その技術とスピードは今でも多くのギタリストの目標とされる。「Eruption」というタイトル通り、音の爆発がリスナーを圧倒する。
3. You Really Got Me
Kinksのカバーで、バンドの遊び心が炸裂する一曲。オリジナルのシンプルなリフをエディのギターがさらに攻撃的にアレンジ。デイヴィッドのヴォーカルはセクシーで挑発的。バンドが原曲にリスペクトを持ちながらも、自分たちの色を加えた傑作カバーである。
4. Ain’t Talkin’ ’Bout Love
カッティングの効いたギターリフが印象的なこの曲は、歌詞の内容が非常に挑発的。「I’ve been to the edge…」というフレーズは、危険な境界を彷徨うような緊張感を醸し出している。ギターソロは鋭くエネルギッシュで、アルバム全体の中でも特に際立つ瞬間だ。
5. I’m the One
疾走感あふれるブルース・ロック。エディのギターリフとアレックス・ヴァン・ヘイレンのドラムの絶妙な掛け合いが聴きどころ。曲中に挿入されるデイヴィッドのスキャット部分はユーモアたっぷりで、ライブ感覚をそのままパッケージしたような仕上がりだ。
6. Jamie’s Cryin’
ミドルテンポのこの曲は、失恋と後悔がテーマ。印象的なドラムイントロと、リリカルなギターラインが絡み合い、メロディアスな雰囲気を作り出している。「Jamie’s been in love before…」という切ない歌詞は、普遍的な失恋の痛みを描いている。
7. Atomic Punk
スラッシュするようなギターエフェクトが特徴的な異色作。歌詞は、核時代に生きる反逆者をテーマにしており、その鋭いサウンドと相まって不穏なエネルギーを放っている。エディのギターがSF映画のサウンドトラックのような雰囲気を醸し出す。
8. Feel Your Love Tonight
アルバムの中で最もキャッチーで、ポップな印象の一曲。明るいコーラスと、ロマンティックな歌詞が特徴的。「Feel your love tonight…」と繰り返されるサビは、耳に残りやすく、コンサートでも盛り上がること間違いなし。
9. Little Dreamer
ブルース色が強いバラード風の楽曲。歌詞には、逆境を乗り越える主人公の姿が描かれている。「They told me I was wrong…」というラインは、希望を捨てないメッセージを込めており、全体的に感動的なトーンを持つ。
10. Ice Cream Man
バンドらしい遊び心が満載のブルースカバー曲。冒頭はアコースティックギターとデイヴィッドのリラックスしたヴォーカルで始まるが、中盤からエレクトリックギターが加わり、一気にロック色が強まる。リスナーの心をくすぐるユーモラスな一曲だ。
11. On Fire
アルバムのラストを飾るにふさわしい、勢い溢れるロックナンバー。デイヴィッドのヴォーカルは炎のように熱く、エディのギターリフが最後まで緊張感を持続させる。爆発的なエネルギーで締めくくるフィナーレだ。
アルバム総評
Van Halenのデビュー作は、ロックミュージックの新時代を告げる旗印となった。エディ・ヴァン・ヘイレンの革命的なギターテクニックと、デイヴィッド・リー・ロスの自由奔放なステージパフォーマンスが完璧に融合し、唯一無二のサウンドを作り上げている。このアルバムを聴けば、彼らがなぜ後の世代に多大な影響を与えたのかがよく分かる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Led Zeppelin IV by Led Zeppelin
ブルースとハードロックが融合したスタイルで、ダイナミックな演奏が楽しめる。「Stairway to Heaven」はギタリスト必聴。
Back in Black by AC/DC
エネルギッシュなギターリフと、ロックンロール精神が詰まったアルバム。バンドの持つ勢いとシンプルなサウンドが似ている。
Highway to Hell by AC/DC
キャッチーなメロディと力強いヴォーカルが特徴的で、Van Halenのファンにも刺さる作品。
1984 by Van Halen
シンセサイザーを導入しながらも、バンドの持つロックの魂は健在。より進化したサウンドが楽しめる。
Appetite for Destruction by Guns N’ Roses
荒々しいエネルギーとエモーショナルな歌詞で、Van Halenのファンが楽しめる要素が満載。
コメント