発売日: 1982年8月11日
ジャンル: パワーポップ / ニューウェーブ
The Go-Go’sが1982年にリリースしたセカンドアルバム『Vacation』は、デビュー作『Beauty and the Beat』の成功に続くポップでエネルギッシュな作品である。このアルバムでは、バンドのキャッチーなメロディとニューウェーブの要素を引き継ぎながら、さらに明るく夏らしいテーマを展開している。タイトルの通り、アルバム全体を通して休暇やリラクゼーション、そしてその裏に潜む切なさが描かれている。
プロデューサーには前作に続きリチャード・ゴットハーラーが参加し、彼女たちの陽気なエネルギーを最大限に引き出している。特にタイトル曲「Vacation」の大ヒットにより、バンドは全米でさらに知名度を高めた。しかしながら、急速な成功によるプレッシャーと疲労感も感じられ、アルバムにはその影響が垣間見える瞬間もある。それでも、アルバム全体を通して、The Go-Go’sのポップセンスとDIYスピリットが光る一枚となっている。
全曲解説
1. Vacation
アルバムのタイトル曲にして、最大のヒットナンバー。キラキラしたギターリフとシンセサウンドが特徴的で、夏の解放感を完璧に表現している。歌詞では、「Vacation, all I ever wanted」というラインが繰り返され、シンプルながらもリスナーの心に強く残る。楽しく軽快なメロディの裏には、愛の喪失というテーマも含まれており、単なる明るいポップソング以上の深みを感じさせる。
2. He’s So Strange
ミッドテンポでリズミカルな楽曲。独特なギターリフとコーラスが印象的で、どこかレトロな雰囲気を醸し出している。歌詞では、ユニークで奇妙な男性への恋心が語られ、バンドの遊び心が感じられるトラックだ。
3. Girl of 100 Lists
エネルギッシュでアップテンポな一曲。リズムセクションが楽曲を力強く支え、キャロット・ケインのヴォーカルが疾走感を加える。タイトル通り、主人公が書き留めたリストに基づいて自分を見つめ直す内容で、軽快なメロディに個性的な歌詞がよくマッチしている。
4. We Don’t Get Along
少し憂いを帯びた雰囲気を持つトラック。友情や人間関係の軋轢をテーマにした歌詞が、リスナーに共感を呼ぶ内容となっている。キャッチーなコーラスと控えめなギターが曲の切なさを引き立てている。
5. I Think It’s Me
軽快でポップな楽曲だが、歌詞には自己疑念や不安が込められている。ギターリフとコーラスのバランスが良く、楽曲全体が耳に残る仕上がりだ。特にコーラス部分の盛り上がりが秀逸で、リスナーを楽しませる。
6. This Old Feeling
懐かしさを感じさせるミディアムテンポの楽曲。シンプルな編曲が歌詞のノスタルジックなテーマを引き立てている。キャロットの優しいボーカルが、楽曲に温かみを与え、ほっと一息つける瞬間を提供する。
7. Cool Jerk
力強いビートとファンキーなリズムが特徴のカバー曲。バンドの遊び心が感じられるパフォーマンスで、ライブでも人気の一曲。オリジナルよりもエネルギッシュな仕上がりで、The Go-Go’sらしさが光るトラックだ。
8. The Way You Dance
ダンサブルなリズムが楽しい楽曲。軽快なギターリフとシンセのメロディが耳に心地よい。歌詞は、ダンスと恋愛の高揚感を絡めており、青春のひとコマを切り取ったような作品になっている。
9. Beatnik Beach
タイトルからも感じられるように、ビーチパーティーの雰囲気をそのまま音楽にした楽曲。アップテンポで楽しげなサウンドが特徴で、夏の楽しい時間を思い起こさせる。ギターソロが曲に活気を与えている。
10. Worlds Away
アルバムを締めくくる穏やかなナンバー。シンプルなアコースティックギターとキャロットのボーカルが心地よく、全体にリラックスした雰囲気が漂う。歌詞は別れと前進をテーマにしており、アルバムをまとめるにふさわしい一曲となっている。
アルバム総評
『Vacation』は、The Go-Go’sのポップセンスとエネルギーが存分に発揮された一枚である。特に「Vacation」や「Cool Jerk」といった楽曲は、彼女たちの楽しく親しみやすい魅力を体現している。一方で、一部の楽曲に前作ほどの完成度が感じられない瞬間もあるが、それでもバンドの個性と才能が光る作品であることは間違いない。リスナーに夏の楽しさと切なさを同時に届けるアルバムだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beauty and the Beat by The Go-Go’s
バンドのデビュー作。キャッチーなメロディとポップなエネルギーが詰まった一枚で、『Vacation』が好きな人にぴったり。
Parallel Lines by Blondie
ポップでありながらエッジの効いたサウンドが魅力。The Go-Go’sファンにも楽しめる要素が多い。
Pleasure Victim by Berlin
ニューウェーブの軽快さとシンセサウンドが心地よいアルバム。『Vacation』のエネルギーとリンクする。
Totally Hot by Olivia Newton-John
夏らしいポップサウンドが楽しめる一枚で、『Vacation』の明るい雰囲気が好きなリスナーにおすすめ。
Get the Knack by The Knack
パワーポップの名盤で、キャッチーな楽曲が揃っている。The Go-Go’sのファンならハマること間違いなし。
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