
発売日: 1985年4月23日
ジャンル: ポップロック、ニューウェーブ
バンドの解散前夜—試行錯誤の中で生まれたTwo Hearts
1985年にリリースされたTwo Heartsは、Men at Workの3作目にして最後のスタジオアルバムであり、バンドの分裂と試行錯誤の中で制作された作品である。本作リリース時には、バンドの主要メンバーであったGreg Ham(サックス&フルート)、Ron Strykert(ギター)を含むオリジナルメンバーの多くが脱退し、Colin Hay(ボーカル)とGreg Hamを中心とした新体制での作品となった。
前作Cargo(1983年)の成功を受けて制作されたものの、本作は音楽的な方向性に迷いが見られ、ポップロック路線を継承しつつも、ニューウェーブの要素がやや後退した作風となっている。また、リリース当時の批評は賛否が分かれ、商業的な成功も前2作と比較すると振るわず、バンドは1986年に解散を迎えることとなった。
それでも、本作には「Everything I Need」などのシングルヒットが生まれ、Colin Hayのソングライティングの成長を感じさせる楽曲も多く含まれている。
全曲レビュー
1. Man with Two Hearts
アルバムのタイトルを意識したオープニングトラック。シンプルなポップロックサウンドと、Colin Hayのエネルギッシュなボーカルが特徴。バンドの音楽的な変化を感じさせる楽曲。
2. Giving Up
ゆったりとしたテンポの楽曲で、レゲエの影響を残しつつ、より落ち着いた雰囲気にシフトしたナンバー。歌詞は、バンド内の不和を象徴するかのような内容となっている。
3. Everything I Need
本作のリードシングルで、キャッチーなメロディと明るいポップロックサウンドが特徴の楽曲。前作までのニューウェーブ要素は薄れたが、親しみやすいメロディが際立ち、バンド後期の代表曲のひとつとなった。
4. Sail to You
シンセサイザーの音色が際立つ、80年代のポップサウンドに寄せた楽曲。軽快なリズムと開放的な雰囲気が魅力だが、バンドの個性はやや薄れている。
5. Children on Parade
実験的な要素を含むミッドテンポの楽曲。アコースティックギターのサウンドが美しく、叙情的な歌詞とメロディが印象的。
6. Maria
アルバムの中でも異色の楽曲で、ラテン音楽の要素を取り入れたリズミカルなトラック。Colin Hayのボーカルがより自由に表現されている。
7. Stay at Home
ブルースやカントリーの影響を感じさせる楽曲で、バンドの新たな試みが垣間見える。実験的な要素が強く、シンプルなメロディの中に独特の味わいがある。
8. Hard Luck Story
ダークで重厚なサウンドが特徴の楽曲。Colin Hayのボーカルに深みが増し、ドラマティックな雰囲気を醸し出している。
9. Snakes and Ladders
軽快なポップロックナンバーで、タイトル通り「人生の浮き沈み」をテーマにした楽曲。リズミカルなアレンジが心地よく、アルバムの中では比較的キャッチーな部類に入る。
10. Still Life
アルバムの締めくくりを飾るバラード。メロディの美しさと、シンプルなアレンジが際立つ楽曲で、バンドの最後の瞬間を象徴するかのような静かな余韻を残す。
総評
Two Heartsは、Men at Workの音楽的な変化と苦悩が表れたアルバムであり、ニューウェーブの要素を減らし、よりシンプルなポップロックへとシフトした作品となった。バンド内の不和やメンバーの脱退が制作にも影響を与え、前2作と比べると統一感に欠ける部分がある。
とはいえ、「Everything I Need」や「Snakes and Ladders」などのキャッチーな楽曲は、本作の魅力を引き立てており、Colin Hayのソングライティングの進化を感じさせる作品でもある。しかし、バンドのアイデンティティを象徴していたGreg Hamのサックスやフルートの存在感が薄れ、サウンド面での個性が弱まったことが、ファンの間で賛否を呼んだ。
商業的には前作Cargo(1983年)の成功には及ばず、アルバムリリース後、バンドは活動停止状態となり、1986年に正式に解散。結果的に本作がMen at Workの最後のスタジオアルバムとなった。
バンドの最盛期とは異なる方向性を示した作品ではあるものの、Colin Hayのソロキャリアへとつながる過渡期の作品として、後のファンにとって興味深い一枚となっている。
おすすめアルバム
- Men at Work – Business as Usual (1981)
- 「Down Under」「Who Can It Be Now?」などのヒット曲を収録したデビュー作。
- Men at Work – Cargo (1983)
- 「Overkill」「It’s a Mistake」など、より洗練されたニューウェーブ・ポップロックが詰まったアルバム。
- Colin Hay – Man @ Work (2003)
- Men at Workの楽曲をセルフカバーし、ソロアーティストとしての新たなアプローチを見せた作品。
- The Police – Synchronicity (1983)
- 同じく80年代ニューウェーブの影響を受けたバンドによる名盤。
- Crowded House – Woodface (1991)
- オーストラリア・ニュージーランド出身のバンドによる、メロディアスなポップロックの名作。
“`
- オーストラリア・ニュージーランド出身のバンドによる、メロディアスなポップロックの名作。
コメント