There’s Nothing Holdin’ Me Back by Shawn Mendes(2017)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「There’s Nothing Holdin’ Me Back」は、Shawn Mendesショーン・メンデス が2017年にリリースしたリパッケージアルバム『Illuminate(Deluxe Edition)』に収録されたシングルで、彼のキャリアにおいてより自由で自発的な恋愛観を前面に出したポップ・ロックナンバーです。

歌詞のテーマは極めてシンプルでストレート。**“彼女が自分を自由にしてくれる”という歓びと興奮を、抑えきれない衝動のようなエネルギーで表現しています。ここに描かれる恋は、過去の作品のような切なさや葛藤とは異なり、情熱的で衝動的、でもどこか無邪気な開放感に満ちた関係性が歌われています。言い換えれば、これは“理屈じゃなく、心が踊る恋”**の賛歌ともいえる楽曲です。

2. 歌詞のバックグラウンド

「There’s Nothing Holdin’ Me Back」は、ショーン・メンデスにとって音楽的な方向性とイメージの両方において、重要な転機を象徴する作品でした。プロデュースには長年のコラボレーターである Teddy Geiger、Geoff Warburton、Scott Harris、Andrew Maury らが関わり、ギター主導のアレンジにダンサブルなビートを融合。従来のバラード調の楽曲とは異なる、より大胆でライブ映えするサウンドが展開されています。

リリース当初から世界的にヒットし、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなど多くの国でトップ10入り。ショーンにとって、等身大のティーンアイドルから**“ポップロック・フロントマン”への進化を印象づけた楽曲**でもあり、特にライブでのパフォーマンスでは観客との一体感を生むアンセム的な役割を果たしています。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に「There’s Nothing Holdin’ Me Back」の印象的な一節と和訳を紹介します:

“She’s got a bad reputation
But I don’t care what they say”

「彼女には悪い噂がある
でも人が何を言おうと気にしない」

“She really doesn’t like to wait
Not really into hesitation”

「彼女は待つのが好きじゃない
迷うよりも、すぐ行動に移すタイプさ」

“Oh, I’ve been shaking
I love it when you go crazy
You take all my inhibitions
Baby, there’s nothing holdin’ me back”

「身体が震えてる
君が大胆になる瞬間がたまらない
心のブレーキがすべて外れていく
もう何も僕を止められないんだ」

引用元:Genius Lyrics

このように、恋によって自分自身を解放できる感覚と、それを肯定するポジティブな衝動性が曲全体に満ちています。

4. 歌詞の考察

「There’s Nothing Holdin’ Me Back」は、過去の「Stitches」や「Treat You Better」のような繊細で内省的なラブソングとは真逆の方向性を持っています。この曲で描かれる恋は、恐れや疑いを超えて、相手とともに今を楽しむことにフォーカスした能動的な愛のかたちです。

冒頭の“bad reputation”という表現にあるように、彼女は他人の評価では自由奔放な人物であり、それに対してショーンは「それでも彼女が好きだ」と宣言します。ここにあるのは、恋愛において“他人の目”や“常識”よりも自分の感情を優先する決断です。

また、“You take all my inhibitions”というラインが象徴するように、彼女といることでショーンは自分の抑圧や不安から解き放たれ、より素直な自分になれる。つまりこれは、「恋人によって自分らしさを取り戻す」という現代的な恋愛の一形態でもあり、感情の開放=恋の力という構図が明確に打ち出されています。

楽曲構成としても、ギターのカッティングと躍動的なドラムがエネルギッシュな雰囲気を生み出し、一貫して「抑えきれない衝動」「理性を超えた感情」の流れを音楽で体現している点が秀逸です。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • What Makes You Beautiful by One Direction
    自由でポジティブな恋を歌った、青春のアンセム的楽曲。

  • Shut Up and Dance by WALK THE MOON
    考えるよりも感じろ、という恋の衝動をアップテンポに描いた名曲。

  • Can’t Stop the Feeling! by Justin Timberlake
    喜びやときめきを身体全体で表現する“幸せな衝動性”が共通。

  • There’s Nothing Like This Feeling by Louis Tomlinson
    恋によって心が軽くなる感覚を、ロック調で表現したラブソング。

  • Youngblood by 5 Seconds of Summer
    愛に突き動かされる若さと迷いを描いたダイナミックなロックナンバー。

6. 特筆すべき事項:自己解放のアンセムとしての位置づけ

「There’s Nothing Holdin’ Me Back」は、単なるラブソングではなく、若者が自分の欲望や感情に素直になることの肯定として受け取ることもできます。特にショーン・メンデスのような若い世代のアイコンが、**「理屈ではなく感じたままに進め」**というメッセージを堂々と打ち出すことには、ティーンカルチャーにおける大きな意味があるといえるでしょう。

また、この曲のライブパフォーマンスでは、観客と一体となって“there’s nothing holdin’ me back!”と歌うシーンが象徴的であり、感情の解放と共同体的なつながりを体験する“儀式”のような側面もあります。


「There’s Nothing Holdin’ Me Back」は、自分を抑え込んできた不安や理性を恋の力で吹き飛ばす、エネルギーと喜びに満ちた自由の賛歌です。抑制を振りほどいて、誰かと一緒に世界へ飛び出す――そんな衝動と憧れを、ショーン・メンデスは軽やかに、そして力強く歌い上げています。この楽曲はまさに、「今この瞬間を信じることができる恋」の象徴といえるでしょう。

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