アルバムレビュー：There Are Rules by The Get Up Kids

アルバムレビュー

2025.03.13

発売日: 2011年1月25日
ジャンル: インディーロック、ポストパンク、エモ

再結成後の挑戦――The Get Up Kidsが見せた新たなサウンド
全曲レビュー
総評
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再結成後の挑戦――The Get Up Kidsが見せた新たなサウンド

2005年に解散したThe Get Up Kidsが、2010年に再結成を果たし、翌年リリースしたアルバム『There Are Rules』。彼らのキャリアにおいて最も実験的な作品であり、90年代のメロディック・エモのサウンドとは一線を画した新たなアプローチが取られている。

プロデューサーには、かつてRefusedやThe Blood Brothersを手掛けたEd Roseを迎え、よりノイジーでポストパンク的な要素を前面に押し出したサウンドを展開。ファズの効いたギター、重厚なリズムセクション、シンセサイザーの導入など、これまでのThe Get Up Kidsにはなかった音作りが随所に見られる。

ファンの間では賛否が分かれたアルバムだが、バンドとしての新たな挑戦と進化を示した作品として評価されるべき一枚だ。

全曲レビュー

1. Tithe

ディストーションの効いたギターとシンセが特徴的なオープニングトラック。攻撃的なサウンドとダークな雰囲気が、これまでのThe Get Up Kidsとは大きく異なる印象を与える。

2. Regent’s Court

ポストパンクの影響を強く感じさせる楽曲。反復的なギターリフと、抑制されたボーカルが独特の緊張感を生み出している。

3. Shatter Your Lungs

エレクトロニックな要素を取り入れた異色の楽曲。シンセの導入により、オルタナティブ・ロック的な雰囲気が漂う。

4. Automatic

アップテンポなビートとノイジーなギターが特徴の楽曲。バンドの持つエネルギーが新しい形で表現されている。

5. Pararelevant

ミッドテンポのリズムと、重厚なベースラインが特徴的。実験的なサウンドアプローチが際立つトラック。

6. Rally ‘Round the Fool

リズミカルなドラムとファズギターが際立つ、攻撃的な楽曲。バンドの新境地を感じさせるサウンドが展開されている。

7. Better Lie

不穏な空気を持つダークなトラック。ボーカルのエフェクト処理やシンセの使用が、ポストパンク的な雰囲気を強調している。

8. Keith Case

比較的シンプルなメロディながら、荒々しいギターとシンセが楽曲の緊張感を高めている。

9. The Widow Paris

アルバムの中でも特に実験的な楽曲。サウンドスケープを意識したアレンジが新鮮な印象を与える。

10. Birmingham

リズムの変化が特徴的なトラック。オルタナティブロックの影響が感じられ、ダイナミックな展開が魅力。

11. When It Dies

ノイズギターとダークな歌詞が印象的な楽曲。アルバム全体の雰囲気を総括するような一曲。

総評

『There Are Rules』は、The Get Up Kidsにとって最も挑戦的な作品であり、エモの枠を超えた新たな音楽性を提示したアルバムだ。90年代後半のメロディック・エモを期待していたファンにとっては意外な方向転換だったかもしれないが、ポストパンクやオルタナティブ・ロックの要素を取り入れ、より成熟したアプローチを試みた点は評価に値する。

バンドのアイデンティティを維持しつつも、新たなサウンドを模索する姿勢は、彼らが単なるノスタルジックな再結成バンドではないことを示している。本作は、The Get Up Kidsの音楽的な可能性を広げたアルバムとして、後の作品にも影響を与える重要な位置づけとなった。

実験的なロックやポストパンク的なアプローチを好むリスナーにはぜひ聴いてほしい一枚。