アルバムレビュー：The Original High by Adam Lambert

発売日: 2015年6月12日
ジャンル: ポップ、エレクトロポップ、シンセポップ

洗練されたエレクトロポップ・サウンドと新たな方向性

Adam Lambertの3rdアルバムThe Original Highは、前作Trespassingのファンク色を抑え、より洗練されたエレクトロポップやシンセポップにフォーカスした作品となっている。プロデューサーにMax MartinとShellbackを迎え、クリーンかつモダンなプロダクションが際立つサウンドが展開されている。

本作では、ダンサブルなビートと内省的な歌詞が組み合わされ、ポップミュージックとしての完成度を高めつつも、Adam Lambertの持つシアトリカルなボーカル表現がしっかりと活かされている。また、Queenとのツアーを経験した後のアルバムであり、彼の成熟したアーティスト性が表れている点も注目に値する。

全曲レビュー

1. Ghost Town
   • 西部劇風の口笛のイントロから一気にエレクトロビートへと展開する、ダークでキャッチーなリードシングル。歌詞には孤独や夢の破壊といったテーマが込められており、アルバムのトーンを象徴する一曲。
2. The Original High
   • タイトル曲で、エモーショナルかつダンサブルなエレクトロポップナンバー。生きる上での高揚感や刺激を求める感情が歌詞に表現されている。
3. Another Lonely Night
   • 切なさを帯びたシンセポップバラード。夜の孤独や心の空虚をテーマにし、Adamの繊細なボーカルが際立つ楽曲。
4. Underground
   • アンビエントなシンセとミニマルなビートが融合したダークなバラード。愛の執着と痛みを描いた歌詞が印象的。
5. There I Said It
   • 壮大なバラードで、Adamのボーカルが最大限に活かされた楽曲。静かに始まり、終盤に向けてドラマティックに盛り上がる構成が特徴的。
6. Rumors (feat. Tove Lo)
   • スウェーデンのシンガーTove Loとのコラボ曲。彼女のクールなヴォーカルとAdamの感情的な歌唱が絶妙に絡み合うエレクトロポップナンバー。
7. Evil in the Night
   • ディスコ調のファンキーな楽曲。アルバムの中では比較的アップテンポで、Trespassing時代のグルーヴ感を引き継いでいる。
8. Lucy (feat. Brian May)
   • QueenのギタリストBrian Mayが参加したロックナンバー。シンセとギターリフが絡み合い、Adamのロック志向が垣間見える一曲。
9. Things I Didn’t Say
   • 80年代風のシンセサウンドが心地よいポップナンバー。内省的な歌詞とダンサブルなビートの対比が印象的。
10. The Light
    • クラブ向けのビートと幻想的なシンセが特徴の楽曲。アルバムの中でも特にエレクトロ色が強い。
11. Heavy Fire
    • アルバムのラストを飾る楽曲。ミステリアスなムードとエレクトロニックなサウンドが混ざり合い、アルバムを締めくくるのにふさわしいトラック。

総評

The Original Highは、Adam Lambertがポップアーティストとしての成熟を見せた作品であり、派手なグラムロックやファンク色を抑え、より洗練されたエレクトロポップのサウンドへと進化したアルバムである。Max MartinとShellbackのプロデュースによって、サウンドは非常に洗練され、クリーンでモダンな仕上がりになっている。

「Ghost Town」のようなダークでキャッチーな楽曲から、「There I Said It」のような壮大なバラードまで、幅広い表現が詰まっており、彼の持つ圧倒的なボーカル力が光る場面が随所に見られる。一方で、前作Trespassingにあったようなエネルギッシュなファンクやダンスロックの要素は抑えめになり、大人っぽくクールな雰囲気が強調されている点が特徴的だ。

アルバム全体として、夜の孤独や夢の喪失、現実逃避といったテーマが色濃く反映されており、単なるポップアルバムではなく、より深みのある作品に仕上がっている。

ポップミュージックの中でも洗練されたエレクトロポップを求めるリスナーには最適な一枚であり、Adam Lambertの進化を感じることができる作品である。

おすすめアルバム

1. Troye Sivan – Bloom (2018)
   • エレクトロポップとシンセウェーブの要素を取り入れた作品。Adam Lambertのスタイルと共通する繊細なサウンド。
2. Years & Years – Palo Santo (2018)
   • ダークなエレクトロポップの要素が強く、The Original Highの世界観と親和性が高い。
3. Sam Smith – The Thrill of It All (2017)
   • 内省的な歌詞とソウルフルなボーカルが魅力。Adam Lambertのバラード路線と共通する要素が多い。
4. Robyn – Honey (2018)
   • メロディアスなシンセポップと洗練されたプロダクションが特徴。クラブ向けの楽曲とエモーショナルなバラードのバランスが秀逸。
5. Queen – Made in Heaven (1995)
   • Adam Lambertが後にボーカリストとして活動するQueenのアルバム。壮大なバラードやドラマティックな楽曲が多く、彼の音楽性とリンクする。
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