アルバムレビュー：The Way I Feel by Gordon Lightfoot

アルバムレビュー

2025.05.04

発売日: 1967年4月
ジャンル: フォーク、カントリーフォーク、アダルトコンテンポラリー

概要
全曲レビュー
総評
おすすめアルバム
歌詞の深読みと文化的背景
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概要

『The Way I Feel』は、ゴードン・ライトフットが1967年に発表した2作目のスタジオアルバムであり、
彼がフォークシンガーとしてだけでなく、本格的なソングライターとして世界に認められるきっかけとなった重要作である。

デビュー作『Lightfoot!』で示した叙情的な感性をさらに深めつつ、
今作ではより洗練されたアレンジと、音楽的な幅広さが加わり、
ゴードン・ライトフットの音楽的アイデンティティが決定的に確立された。

人生の旅路、恋愛の複雑な感情、自然への憧憬――
そうした普遍的テーマを、
静かで鋭い観察眼と、温かく誠実な声で描き出すスタイルが、ここに完成している。

全曲レビュー

1. Walls

別れの痛みと再生への意志を、温かみのあるメロディに乗せた、穏やかで力強いオープニングナンバー。

2. If You Got It

短い幸福の瞬間を掴み取ろうとする、シンプルだが感情豊かなフォークソング。

3. Softly

愛と別れの微妙なニュアンスを、優しく繊細なタッチで歌い上げる、珠玉のバラード。

4. Crossroads

人生の分岐点での葛藤と希望を、軽やかなリズムに乗せて表現した旅の歌。

5. A Minor Ballad

哀しみを湛えたメロディと、ほの暗い情景描写が美しく響く、タイトル通りのマイナーバラード。

6. Go-Go Round

都会生活の孤独と諦観を、軽やかなリズムに包んで描いた、フォークポップの佳曲。

7. Rosanna

過ぎ去った愛を追憶する、切なくも爽やかなラブソング。

8. Home from the Forest

森を離れ、老いていく一人の男の人生を描いた、
ライトフット屈指の叙情詩的バラード。
静かな語り口の中に深い哀しみが漂う。

9. I’ll Be Alright

孤独を抱えながらも、前に進もうとする意志を描いた、希望に満ちたナンバー。

10. Song for a Winter’s Night

ライトフット自身の最高傑作のひとつ。
冬の夜、恋人への想いと孤独を静かに綴った、
叙情と普遍性を兼ね備えたフォークバラードの傑作。

11. Canadian Railroad Trilogy

カナダ建国の歴史と鉄道建設を壮大なスケールで描いた組曲形式の名曲。
フォークとカントリーの枠を超え、
国民的叙事詩として高く評価されている。

12. The Way I Feel

アルバムタイトル曲。
日々変わりゆく感情と、その不確かさを冷静に見つめる、静かな内省の歌。

総評

『The Way I Feel』は、
ゴードン・ライトフットが単なる優れたフォークシンガーに留まらず、
深く人間存在を掘り下げる詩人であり、
音楽的にも豊かな表現力を備えたアーティストであることを示したアルバムである。

『Lightfoot!』の素朴な魅力はそのままに、
ここではさらにアレンジの幅が広がり、
時に荘厳に、時に繊細に、
さまざまな感情と情景を描き分ける表現力が飛躍的に向上している。

とりわけ「Song for a Winter’s Night」や「Canadian Railroad Trilogy」は、
後のライトフット作品群の中でも特別な位置を占める名曲であり、
この時点でカナダを代表する音楽家としての地位を確立したといってよい。

『The Way I Feel』は、
フォークミュージックの可能性を静かに、しかし確実に押し広げた名作なのである。

歌詞の深読みと文化的背景

1967年――
アメリカでは反戦運動、ヒッピームーブメント、カウンターカルチャーの嵐が巻き起こる中、
カナダでもまた、若者たちは自己表現と新しいアイデンティティを模索していた。

そんな中、『The Way I Feel』は、
社会の喧騒とは距離を取りながら、
個人の内面と自然との静かな対話を選んだ。

「Song for a Winter’s Night」は、
外の寒さと心の孤独を重ね合わせた、
普遍的な寂しさと優しさを讃える歌であり、
「Canadian Railroad Trilogy」では、
国を作るという壮大な営みの中に潜む、
労働者たちの犠牲と希望を鮮やかに描いている。

ゴードン・ライトフットは、
時代に流されることなく、
普遍的人間性への静かな信頼を、
柔らかな声と確かな言葉で歌い続けた。

『The Way I Feel』は、
そんな**時代を超える”心の静かな航海”**なのである。