アルバムレビュー：The Black Album by The Damned

発売日: 1980年10月
ジャンル: パンクロック、ゴシックロック、ポストパンク

The Damnedの4枚目のアルバム「The Black Album」は、彼らが音楽的にさらに進化を遂げた作品で、パンクロックからゴシックロック、ポストパンクへと踏み出した新しい試みが多く詰め込まれている。このアルバムは、特に2枚目のディスクに収録された長編曲「Curtain Call」を含むことで、実験的な構成と複雑なアレンジが際立つ作品だ。これにより、彼らが単なるパンクバンドから、ダークで幻想的な音楽的探求へと進化していることが明確に示された。パンクのエネルギーを保ちながらも、シンセサイザーやエフェクトを多用した、より深みのあるサウンドスケープを展開している。

各曲ごとの解説:

1. Wait for the Blackout
   　アルバムを力強くスタートさせるこの曲は、エネルギッシュなギターリフと疾走感のあるリズムが特徴。歌詞は不安と混乱をテーマにしており、夜に訪れる不確実性を描いている。メロディアスなコーラスが印象的で、ライブでも人気が高い。
2. Lively Arts
   　このトラックは、よりメロディックなアプローチが際立っており、ポストパンク的な要素が強く出ている。シンプルなリフとヴォーカルの抑揚が、皮肉を帯びた歌詞とともに、The Damnedの新しい方向性を提示している。
3. Silly Kids Games
   　明るいメロディとは対照的に、歌詞は大人社会の愚かさを風刺している。軽快なリズムとキャッチーなメロディが耳に残り、シンセサイザーの使用が曲に深みを与えている。
4. Drinking About My Baby
   　ロックンロールのリズムとパンクのエネルギーが融合した「Drinking About My Baby」は、愛と失望をテーマにしている。単純なギターリフと勢いのあるドラムが、感情的なヴォーカルを支えている。
5. Twisted Nerve
   　この曲は、不気味なイントロと奇妙な雰囲気が特徴。サイケデリックな要素が強く、シンセサイザーやエフェクトを駆使したサウンドが、実験的なアプローチを強調している。アルバムの中でも異色の存在だ。
6. Hit or Miss
   　シンプルでストレートなパンクソングだが、メロディはキャッチーで覚えやすい。ギターリフが曲全体を牽引し、短いながらも印象的なパフォーマンスを提供している。
7. Dr. Jekyll and Mr. Hyde
   　ゴシックロックへの傾倒を感じさせるこの曲は、不気味でドラマチックな雰囲気を持っている。歌詞は、内面の二重性や破壊的な本能をテーマにしており、物語的な要素が強い。特にVanianのヴォーカルが、暗く幻想的な世界観を引き立てている。
8. Sick of This and That
   　軽快で疾走感のあるパンクソング。飽和状態の現状への怒りを歌い、ギターリフが耳に残る一曲。シンプルな構成ながら、強烈なインパクトを与える。
9. The History of the World (Part 1)
   　シングルとしてリリースされたこの曲は、メロディアスでドラマチックなアレンジが際立つ。歴史とその中で繰り返される愚行を皮肉たっぷりに歌っており、The Damnedの社会的な視点が反映されている。サウンドはポストパンク的な要素が強く、シンセサイザーの使用が印象的。
10. 13th Floor Vendetta
    　ダークで神秘的な雰囲気を持つトラックで、ゴシックロックの要素が色濃く反映されている。ゆったりとしたテンポと不穏なサウンドが、恐怖や不安をかき立てるような感覚を生み出している。
11. Therapy
    　短くシンプルなパンクロックナンバー。疾走感があり、ギターとドラムが力強くリードする。歌詞は精神的な問題や抑圧された感情に触れている。
12. Curtain Call
    　アルバムのハイライトである「Curtain Call」は、約17分に及ぶ壮大な曲で、The Damnedの実験的な側面を象徴する。この曲は、ゴシック的な要素とサイケデリックなサウンドが融合し、複雑な構成と劇的な展開が特徴。Vanianのヴォーカルが物語のように曲をリードし、ドラマチックで幻想的な雰囲気が続く。

アルバム総評:

「The Black Album」は、The Damnedが音楽的に大きな進化を遂げ、より複雑で深みのあるサウンドを探求した作品である。パンクロックのエネルギーを維持しながらも、ゴシックロックやポストパンクの要素を取り入れたことで、バンドの幅広い音楽的影響が感じられる。「Curtain Call」のような実験的な曲や、「Wait for the Blackout」などのキャッチーなナンバーが、バンドの多様性と創造性を強調している。このアルバムは、The Damnedが単なるパンクバンドに留まらず、ゴシックロックやポストパンクの世界でも重要な役割を果たすことを証明した。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Seventeen Seconds by The Cure
   ダークでメランコリックなサウンドが、「The Black Album」のゴシックロック的な要素と共鳴する。
2. Closer by Joy Division
   ポストパンクの代表作であり、ダークで不安感を煽る雰囲気が、The Damnedの実験的な側面と似ている。
3. Ju Ju by Siouxsie and the Banshees
   ゴシックロックの先駆者であり、ダークでミステリアスなサウンドが「The Black Album」のファンに響く。
4. Pornography by The Cure
   ゴシック的なサウンドをさらに追求したアルバムで、絶望感や暗い美学が「Curtain Call」の雰囲気と通じる。
5. Night Time by Killing Joke
   パンクとポストパンクの要素を融合させたサウンドが、「The Black Album」の多面的なスタイルと共通点を持っている。