発売日: 2002年5月14日
ジャンル: ガレージロック、ブルースロック
The Black Keysのデビューアルバム「The Big Come Up」は、Dan Auerbach(ギター・ボーカル)とPatrick Carney(ドラム)の2人による、荒々しいブルースロックの魅力を凝縮した作品だ。当時無名のデュオだった彼らが、アクロン(オハイオ州)の自宅スタジオで録音したこのアルバムは、DIY精神と情熱が詰まったサウンドで溢れている。
Auerbachの歪んだギターとソウルフルなボーカル、Carneyのシンプルで力強いドラムが組み合わさり、最小限の編成で圧倒的なエネルギーを生み出している。本作では、デルタブルースへの敬意を感じさせる伝統的なスタイルと、荒々しいガレージロックの要素が融合し、時代を超えた音楽を作り上げている。The Black Keysのシグネチャーサウンドの原点が詰まったアルバムとして、ファンにとって特別な作品である。
トラック解説
- Busted
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、Auerbachのギターリフが攻撃的で、ブルースとロックの融合が一瞬で耳をつかむ。歌詞は裏切りや怒りをテーマにしており、バンドの原始的なエネルギーが炸裂している。 - Do the Rump
ジュニア・キンブローの楽曲をカバーした一曲で、デルタブルースへの敬意が感じられる。荒々しいギターとボーカルが、オリジナルをよりラフで生々しいものに仕上げている。 - I’ll Be Your Man
ミディアムテンポのブルースロックで、Auerbachの感情的なボーカルが光る。シンプルな構成ながらも、深いグルーヴとメロディが印象的な楽曲だ。後にドラマ「Hung」のテーマ曲として使用され、注目を集めた。 - Countdown
ノイズ感のあるギターと歪んだボーカルが楽曲を支配する短いトラック。パンク的なエッジが加わり、アルバムにダイナミズムを与えている。 - Breaks
ブルースの泥臭さとロックの攻撃性が融合したトラック。シンプルなリズムが繰り返される中、Auerbachのギターソロが鮮烈な印象を残す。 - Run Me Down
ソウルフルなボーカルとスライドギターが印象的な一曲で、南部ブルースへの強い影響が感じられる。リズムの変化が楽曲に深みを加えている。 - Leavin’ Trunk
トラディショナルなブルースのカバー曲で、The Black Keysらしい荒削りなアレンジが施されている。原曲のルーツを尊重しつつも、現代的なエネルギーが加わっている。 - Heavy Soul
アルバムの中でも特に重厚なサウンドが特徴的なトラック。歌詞とサウンドが完全に一致したような一体感があり、バンドのポテンシャルを感じさせる。 - She Said, She Said
The Beatlesの同名曲を大胆にカバーしたトラック。原曲のサイケデリックな雰囲気を保ちながら、ガレージロック的な荒々しさが新鮮なアプローチとなっている。 - Them Eyes
ノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲で、ボーカルとギターが心地よいコントラストを作り出している。シンプルなメロディが耳に残る。 - Yearnin’
アルバムの中でも特にブルース色が強いトラック。ギターリフの重厚さと、感情的なボーカルが楽曲に迫力を加えている。 - Brooklyn Bound
軽快なリズムが特徴の楽曲で、シンプルながらも洗練されたアレンジが光る。リラックスしたムードがアルバム全体に変化を与えている。 - 240 Years Before Your Time
ノイズのようなフィードバックが長時間続く実験的なエンディングトラック。アルバム全体のテーマからはやや離れるが、バンドの実験的な一面を垣間見ることができる。
アルバム総評
「The Big Come Up」は、The Black Keysの音楽的ルーツとDIY精神が存分に表現された作品である。ブルースとロックの伝統に基づきながらも、その荒々しいエネルギーと現代的なアプローチで、独自のスタイルを確立している。AuerbachとCarneyが織り成すミニマルなサウンドは、生々しさと親しみやすさが共存し、初期のガレージロックやブルースのファンにも訴求力がある。
The Black Keysの原点を探りたいリスナーにとって、このアルバムは欠かせない一枚であると同時に、ローファイサウンドと真摯な音楽への愛情を感じられる特別な作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Thickfreakness by The Black Keys
2作目にあたるアルバムで、さらに洗練されたブルースロックのサウンドが楽しめる。
Keep It Hid by Dan Auerbach
The Black Keysのフロントマン、Dan Auerbachのソロ作品で、ブルースとフォークの融合が魅力的。
Elephant by The White Stripes
The Black Keysと同時期に活動していたデュオによる、荒々しくも緻密なガレージロックの傑作。
Delta Kream by The Black Keys
バンドがブルースの原点に回帰したアルバムで、彼らのルーツへの愛を堪能できる。
Raw Power by The Stooges
ブルースとガレージロックの融合に影響を与えた名盤で、エネルギーに満ちたローファイサウンドが共通点。
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