Sweet Melody by Little Mix(2020)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

Sweet Melody“は、イギリスのガールズグループ**Little Mixリトル・ミックス)**が2020年にリリースしたシングルで、6作目のスタジオ・アルバム『Confetti』に収録されています。この曲は、過去に愛した相手が嘘を重ねたことへの怒りや痛み、そしてそれを乗り越えた自分自身の強さを、音楽というメタファーで表現した、力強くも切ないミッドテンポのポップ・トラックです。

“Sweet Melody”というタイトルは、かつて恋人が歌ってくれた愛の言葉、つまり甘く心地よかったはずの「メロディ=愛の表現」を指します。しかし、実際にはその歌声の裏に嘘や裏切りが隠されていたことを知った今、かつての“メロディ”はもう甘く響かない——そんな裏切られた愛の後味と自立の物語が込められています。

本作では、メンバーたちのボーカルが以前にも増して成熟し、感情の揺れを鋭く描写。さらにラテンやR&Bを思わせるグルーヴ、ミステリアスなサウンドスケープが、楽曲の物語性をよりドラマチックに彩っています。


2. 歌詞のバックグラウンド

「Sweet Melody」は、**MNEK(エムエヌイーケー)**を中心とした制作陣(Brian Garcia、Robin Oliver Frid、Rayeら)とともに作り上げられた楽曲で、Little Mixにとっても非常に意味のある一曲となりました。制作は2019年から2020年にかけて行われ、ジェシー・ネルソンが在籍する最後のシングルとしても知られています(彼女は2020年末にグループを脱退)。

この楽曲のミュージックビデオは、暗がりの中で踊るメンバーたちのシャープで統一感のあるダンスと、モノクロを基調にした映像美が際立っており、「カラフルでポップ」な従来のLittle Mixのイメージとは一線を画す仕上がりとなりました。女性のエンパワーメントとセクシャルな自信の両立をテーマに、より成熟した表現が試みられた作品でもあります。


3. 歌詞の抜粋と和訳

Lyrics:
In a whole other life, there was this boy that I knew
和訳:
「別の人生のような遠い記憶の中に、私が知ってた男の子がいたの」

Lyrics:
He would tell me sweet things, that he wasn’t really true
和訳:
「彼は私に甘い言葉をささやいてた、でもそれは全部、嘘だった」

Lyrics:
He played me, made me believe it was real love
和訳:
「彼は私を弄び、本物の愛だと信じさせた」

Lyrics:
He used to sing me sweet melodies
He played me, made me believe it was real love

和訳:
「彼は私に“甘いメロディ”を歌ってくれた
それが本当の愛だと、私は信じてしまったの」

Lyrics:
But the day he did me wrong
The song couldn’t go on and on and on

和訳:
「でも、彼が裏切ったその日から
その歌は、もう続けられなくなったの」

(※歌詞引用元:Genius Lyrics)

ここでは“sweet melodies(甘いメロディ)”が、かつての愛の記憶とともに登場しますが、それはもう美しいものとして響いていないことがわかります。メロディ=愛の言葉=嘘という構図が成立しており、聴き手にも深い共感を与える巧みな比喩です。


4. 歌詞の考察

“Sweet Melody”は、一見すると過去の恋愛の回想に過ぎないようでいて、実際には**「相手に惑わされた過去の自分と決別し、もう自分のメロディは自分で奏でていく」という意志の歌**です。

✔️ メロディ=支配と解放の象徴

この楽曲の最大のポイントは、メロディが“彼から与えられるもの”から、“自分が拒否するもの”に変化する構造です。恋愛関係において「歌われる側」だった自分が、「その歌を終わらせる側」へと移行することで、物語の視点は「受け身」から「主体」へとシフトします。

✔️ 感情の対比:甘さと毒

「sweet(甘い)」という言葉はポジティブな響きを持ちますが、本作では**“甘さ”が裏切りや偽りの象徴に変わることで、リスナーの感情を揺さぶります。この“甘いメロディが毒に変わる瞬間”**が、失恋のリアリティと自立の重要性を際立たせています。

✔️ 女性の声で語る再生のストーリー

Little Mixは一貫して女性視点のリアルを重視した歌詞世界を築いてきましたが、この曲は特にそれが顕著です。相手の嘘に気づき、過去を歌に変えて乗り越える——これは自己回復の物語であり、単なる別れの歌を超えて、感情と表現の解放へとつながっています。


5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • “No Tears Left to Cry” by Ariana Grande
     → 失恋の先にある再生と自己愛をテーマにしたポップバラード。

  • “Don’t Start Now” by Dua Lipa
     → 別れた相手に振り返らず、前に進む力を讃えるダンスチューン。

  • Lose You to Love Me” by Selena Gomez
     → 苦しい別れのなかで自己再生を果たすプロセスを描く感情的バラード。

  • “Touch” by Little Mix
     → 恋愛の快楽と感情の複雑さをポップに昇華した一曲。

  • Say My Name” by Destiny’s Child
     → 愛の裏切りに気づいた女性の直感と怒りを描いたR&Bの名曲。


6. 『Sweet Melody』の特筆すべき点:美しさの裏に潜む“毒”を描いたポップの進化形

この楽曲は、音楽的にも歌詞的にも、“裏切りと再生”を甘美な響きのなかに閉じ込めた構造が見事です。

  • 🎶 メロディ=愛というポップソングの王道を裏返し、“偽りのメロディ”という皮肉へ昇華
  • 💔 痛みを怒りに変えず、冷静に言葉で綴ることで“成熟した女性像”を描出
  • 🎧 ミステリアスなサウンドと洗練されたボーカルが物語の深みを演出
  • 💃 ダンスパフォーマンスを通して、音楽だけでなく“身体性”でも表現される主張

結論

Sweet Melody“は、恋に騙された経験を音楽に変え、自分の物語として語り直すという力強い自己表現の曲です。

かつての“愛のメロディ”が嘘だったと気づいたとき、私たちは傷つく。
でも、その経験すらも自分の音楽にして歌い出せたとき、人は過去を超えて“自分自身のメロディ”を奏でることができる。

そんな再生と自立の美学を、エレガントかつパワフルに響かせる——
それが、「Sweet Melody」という楽曲の本当の魔法なのです。

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