アルバムレビュー:Stop Start by Modern English

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1986年10月
ジャンル: ニューウェイブ、シンセポップ、アートポップ、ポストパンク


概要

『Stop Start』は、Modern Englishが1986年に発表した4作目のスタジオ・アルバムであり、
『I Melt with You』で知られるポップ・フェーズを極限まで推し進めた“美しくもぎこちない転換点”としての作品である。

バンドは前作『Ricochet Days』(1984年)でドリームポップ的な装いとアート性を確立したが、
本作ではより洗練されたポップネスとアメリカ市場を意識したダンサブルな楽曲構成が目立つ。
その結果、UKポストパンク出身のバンドが、80年代中盤のAOR的プロダクションへと軸足を移すという、大胆な進化と妥協の両面を示すことになった。

タイトルの「Stop Start」は、停止と再始動、過去と未来、迷いと希望の往復運動を暗示している。
それはバンド自身の進路に対する葛藤であり、ポストパンク以後の“新しい何か”を模索する80年代中盤バンドの典型的心象でもある。

本作を最後に、Modern Englishは一度解散を迎える。
このアルバムは、夢のあと、光のなかに薄く沈む影のような、儚くも魅惑的な一枚なのである。


全曲レビュー

1. The Border

シンセが揺れるイントロから幕を開ける、クリーンで希望に満ちたポップロック・ナンバー

“境界線”というテーマは、内と外、現実と夢、自由と制約といった二項の狭間を詩的に描写しており、
曲調こそ爽快だが、その裏には常に緊張感と不安の影が潜む。

本作の幕開けとして、まさに“ポップへの跳躍”を象徴する曲

2. Ink and Paper

ギターカッティングと軽やかなドラムが主導する、ニューウェイブ/パワーポップの中間にある楽曲。

歌詞には“インクと紙”というモチーフが繰り返され、伝えられない想い、文字にならない感情、アートの限界がテーマに。

ポップさと文学性が最もよく融合した本作の中核的ナンバー

3. Night Train

リズミカルでグルーヴィなシンセラインが印象的な、ダンサブルでシティポップ的センスも漂う曲

“夜の列車”というモチーフは、移動、孤独、逃避行、あるいは内面の旅路として解釈可能で、
中盤以降のシンセブレイクには、80年代アメリカ的洗練が強く感じられる

4. Heaven and Back

メランコリックなコードと透明なヴォーカルが印象的な、内省的なミディアム・バラード

“天国から帰ってきた”という表現が示すのは、愛や幸福の終焉、あるいは一時的な陶酔からの覚醒

アルバム中最も感情に寄り添った1曲であり、“ポップ・ソングに傷跡を刻む”という意味で本作の白眉

5. He Who Understands

複雑な拍とシンセの対話が展開する、やや実験的なナンバー。

タイトルが示すように、“理解する者”への問いかけは、知性と感情のあいだに引かれた見えない溝を探るようなもの。

The Blue Nile や Prefab Sprout といった知的ポップ勢に通じる静かな緊張を湛える。

6. I Don’t Know the Answer

軽やかなメロディのなかに、“答えがわからない”という繰り返しが響く、不安と自己疑問をテーマにしたポップソング

ギターとシンセの絡みが美しく、どこか空虚さと希望が交差する都会的なサウンドが印象的。

現代人の曖昧さや弱さをそのまま肯定するような歌詞世界に共感するリスナーも多いだろう。

7. Where I Stand

ギターが主導するオーソドックスなポップ・ロック。

“自分の立っている場所”という直喩的な表現が、アイデンティティの確立と揺らぎを同時に描写する

アルバム後半で、再び“足元を確かめる”ような穏やかな決意が感じられる配置。

8. Start Stop (タイトル曲)

タイトルに反し、むしろ静かに進行する内省的トラック

“始めては止まり、また始める”という行為の繰り返しが、バンドの迷い、人生の反復、恋愛や創作の曖昧さを象徴。

ポストパンク的なミニマリズムを内包しつつ、ポップの輪郭で包み込んだ哲学的な結び


総評

『Stop Start』は、Modern Englishがドリームポップの夢を抜け、ポップスという“日常の光”へと歩み出したアルバムである。

だがその光は、単なる明るさではなく、まぶしさの裏に不安や孤独を抱えた“現代的な光”であり、
それゆえに本作は決して軽いポップには終わらない

このアルバムには、過去の影と未来への模索が常に交錯する瞬間の連続が記録されている。
それはタイトル通り、「止まってはまた歩き出す」――不完全な存在である私たちの、正直な姿なのだ。


おすすめアルバム(5枚)

  1. The Blue Nile – A Walk Across the Rooftops (1984)
     静謐で都会的なポップ。『Stop Start』の内省性と詩情に通じる。

  2. Prefab Sprout – Steve McQueen (1985)
     知的で抒情的なポップミュージックの理想型。構成美と歌詞の質が共通。

  3. Talk TalkThe Colour of Spring (1986)
     ポップの限界を突き詰めた作品。Modern Englishの方向転換と響き合う。

  4. China Crisis – Flaunt the Imperfection (1985)
     滑らかで叙情的なサウンド。静かな知性と感傷の融合点。

  5. The Dream Academy – Remembrance Days (1987)
     メロディ重視のポップに文学性を加えた世界観が共振。夢と現実の境界に立つ音楽。

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