Soldiers Under Command by Stryper(1985)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

Stryperの「Soldiers Under Command」は、1985年にリリースされた同名アルバム『Soldiers Under Command』のタイトル・トラックであり、バンドの精神性と美学を明確に提示する、まさに“信仰の宣戦布告”とも言える象徴的な楽曲である。この曲においてStryperは、信仰者は「指令を受けた兵士(soldiers under command)」であるという明確なコンセプトを打ち出し、キリスト教的な忠誠心、戦い、使命感といったテーマを大胆に歌い上げている。

歌詞の冒頭から終わりまで一貫して、戦いの比喩が用いられ、信仰を守り広めることが戦場での任務のように描かれている。悪と戦う兵士としての自覚、神への従順、そしてキリストの名のもとに立ち上がる覚悟。それらが強い決意とともに歌い込まれ、リスナーに対しても「あなたもこの戦いに参加せよ」と呼びかけるような力強さを持っている。

サウンド面でも、疾走するギターリフ、鋭いドラム、そして高らかなコーラスが曲全体を押し上げており、その迫力はまさに“信仰のメタル・マーチ”。この曲を通してStryperは、ただのバンドではなく、「霊的な戦士の集団」であるという立場を鮮明に表明している。

2. 歌詞のバックグラウンド

Stryperは1980年代初頭に結成され、ヘヴィメタルの世界にキリスト教のメッセージを持ち込んだ先駆的なバンドとして注目を集めた。「Soldiers Under Command」は、彼らが1984年に発表したデビューEP『The Yellow and Black Attack』に続く初のフルアルバムのタイトル曲であり、その存在感は圧倒的だった。

このアルバムでStryperは、楽曲だけでなくアートワークやライブ演出に至るまで、“霊的戦士”というイメージを徹底して打ち出した。黄色と黒のカラーリングは“蜂のように刺す”という象徴性と、警告としての意味を持ち、Stryperの強いメッセージ性と一致していた。

「Soldiers Under Command」は、まさにそのアイデンティティの核をなす楽曲であり、信仰を掲げて生きることがいかに困難であり、同時に誇るべき行動であるかをストレートに伝えている。マイケル・スウィートの鋭く伸びるハイトーン・ヴォーカル、ツインリードギターによる攻撃的なサウンド、そしてサビにおけるアンセム的なコーラスは、信仰という抽象的な概念を“闘志”に変換し、音楽として力強く可視化することに成功している。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Soldiers Under Command」の歌詞の一部を抜粋し、英語と日本語訳を併記する。

引用元:Genius Lyrics

We are the soldiers under God’s command
俺たちは神の命に従う兵士だ

We hold His two-edged sword within our hands
両刃の剣を手にし、戦いに臨む

We’re not ashamed to stand up for what’s right
正しいことのために立ち上がることを、俺たちは恥じない

We win without sin, it’s not by our might
罪に頼らず勝利する、それは俺たちの力じゃなく

And we’re fighting all the sin
俺たちは罪に立ち向かって戦ってる

And the good book — it says we’ll win
そして聖書は言ってる、俺たちは勝つって

このように、歌詞は全面的に“霊的な戦い”を主題としており、聖書のメッセージが直接引用されている点にも注目すべきである。

4. 歌詞の考察

「Soldiers Under Command」の歌詞は、信仰を“戦い”に例えることで、現代社会におけるクリスチャンの役割を力強く描き出している。この“戦い”とは、他者との争いや暴力ではなく、内なる誘惑や不正、道徳的退廃といった目に見えない敵との戦いを意味している。つまり、ここでの“兵士”とは、剣や銃を持つ戦士ではなく、祈りと信仰、正義と勇気を武器に生きる者たちの象徴なのだ。

「We win without sin」というフレーズは、この曲の核となる部分であり、勝つことそのものよりも、“いかにして勝つか”が重要であるという価値観を提示している。これは、目的のために手段を選ばないという現代的な風潮へのアンチテーゼとも言える。

また、歌詞の随所に“Good Book(=聖書)”という表現が出てくる点からもわかるように、バンドのメッセージは個人的信仰を超えて、普遍的な真理とされる価値観に基づいている。そしてそれを信じ、実践することが“命令を受けた兵士”としての姿勢なのだという理念が、この曲のすべてを貫いている。

このような歌詞は、80年代のヘヴィメタルにおける常識──反抗、自由、快楽主義──とは一線を画しており、Stryperの個性と信念の強さを物語っている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Holy Wars… The Punishment Due by Megadeth
    宗教と戦争の関係をテーマにしたメタル曲で、“戦いと信仰”という切り口がStryperと対照的かつ共通点を持つ。

  • The Trooper by Iron Maiden
    戦士の目線から描かれたメタルアンセムで、勇気と献身の物語が「Soldiers Under Command」と重なる。

  • Stand Up and Shout by Dio
    自己主張と内なる信念を貫く強さを歌った楽曲で、Stryperの戦う姿勢と共鳴する部分が多い。

  • Marching On by Petra
    同じくクリスチャン・ロックバンドによる“信仰の行進歌”で、テーマとメッセージが極めて近い。

  • Free by Stryper
    より内面的な“自由意志による選択”をテーマにしたStryperの名曲。霊的戦いの別側面を表現している。

6. 信仰を掲げる“戦士”としてのStryper

「Soldiers Under Command」は、Stryperというバンドの存在意義をそのまま言語化したような楽曲である。単にクリスチャンであることを名乗るのではなく、あえて“戦う兵士”という強い言葉を選んだ彼らの姿勢には、当時のヘヴィメタルという荒々しいジャンルの中でも際立った誠実さと確信があった。

1980年代のロックシーンにおいて、宗教的メッセージをあからさまに打ち出すことは異端とされるリスクもあったが、Stryperはあえてその道を選び、自らを“神の軍隊”と称した。その姿は多くの若者にとって、信仰を持つことの“強さ”や“誇り”を再確認するきっかけとなり、クリスチャン・ロック/メタルというジャンルの基盤を築く大きな一歩となった。

「Soldiers Under Command」は、今もなおStryperのライブで演奏され続ける重要なレパートリーであり、彼らの信仰と音楽の旅路の原点を示す不朽のアンセムである。そのメッセージは、時代を越えて、すべての“信じる者”たちの心を奮い立たせるだろう。

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