発売日: 2017年5月5日
ジャンル: シューゲイザー / ドリーム・ポップ / ポストロック
22年の沈黙を破り、Slowdiveが復活作としてリリースしたセルフタイトルアルバムSlowdive。1995年のアルバムPygmalion以来となる本作は、過去のシューゲイザー的美学を再訪しつつも、現代的なサウンドと成熟した表現力を融合させた傑作だ。バンドの復活は熱烈なファンの期待を大きく超え、当時の批評家からも広く称賛を受けた。
セルフタイトルである理由は、過去のSlowdiveのエッセンスを保ちながら、バンドの新たな方向性を提示するという意図が込められているようだ。本作では、アンビエントなサウンドスケープ、ドリーミーなヴォーカル、そして細部まで練り上げられたアレンジが、深い感情的な響きを持っている。2010年代にリバイバルしたシューゲイザーシーンの中でも、バンドの復活が象徴的な出来事であり、Slowdiveはその中核となる作品として際立っている。
トラック解説
1. Slomo
アルバムを幕開けするこの楽曲は、波のようなギターリフとアンビエントなテクスチャが特徴的。ヴォーカルが音の海に溶け込み、リスナーをゆっくりと幻想的な世界へ引き込む。まるで時間がゆっくりと流れるような、夢の中を漂う感覚を味わえる。
2. Star Roving
バンドが先行シングルとしてリリースした曲で、復活の意気込みを示すエネルギッシュなナンバー。疾走感のあるギターとリズムが、バンドの新たな活力を感じさせる。過去のSlowdiveらしい浮遊感と、ポジティブな高揚感が同居している点が魅力だ。
3. Don’t Know Why
ダークな雰囲気と美しいメロディが融合した楽曲。陰影のあるギターサウンドが物憂げなムードを作り出し、歌詞の謎めいたテーマが聴き手の想像を掻き立てる。
4. Sugar for the Pill
アルバムの中でも特に評価の高い楽曲で、バンドの成熟を感じさせる美しいメロディが際立つ。シンプルながらも感情的な深みを持つ曲で、歌詞は喪失と癒しをテーマにしている。イントロの穏やかなギターラインが心に染み渡る。
5. Everyone Knows
軽快なリズムと浮遊感のあるサウンドが特徴的な楽曲。シンプルなビートに支えられたギターリフが、聴き手を楽曲の流れに引き込む。
6. No Longer Making Time
静かに始まるイントロから徐々に音が重なり、感情の波が押し寄せるような構成が印象的。メロディとサウンドが一体となり、切ない感情を呼び起こす。
7. Go Get It
アンビエントとノイズが混ざり合う実験的な楽曲。反復するリズムと音響的な広がりが、リスナーを没入させる。アルバムの中で異彩を放つ一曲だ。
8. Falling Ashes
ピアノを中心としたミニマルな楽曲で、アルバムを静かに締めくくる。リフレインされる「Thinking about love」というフレーズが、シンプルながらも深い余韻を残す。静けさの中にこそ、バンドの成熟した表現が感じられる。
アルバム総評
Slowdiveは、復活アルバムとしてだけでなく、シューゲイザーというジャンルに新たな命を吹き込む作品として高く評価されている。バンドがこれまで培ってきたサウンドの美学はそのままに、より洗練されたアレンジと現代的な感覚が融合している。特に「Sugar for the Pill」や「Star Roving」のような楽曲は、初期のファンだけでなく新たなリスナーも引き込む力を持っている。
長いブランクを感じさせない緻密なサウンドデザインと感情豊かなメロディは、Slowdiveが今もなお進化を続けるバンドであることを証明している。本作はシューゲイザーのリバイバルにおける頂点の一つであり、ジャンルの新たな古典として語り継がれるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Lush by Snail Mail
ドリームポップとインディーロックが融合した作品で、シンプルながらも感情的な歌詞が特徴的。
Antisocialites by Alvvays
浮遊感のあるメロディとエモーショナルなヴォーカルが楽しめる作品で、ドリームポップ好きにおすすめ。
Glow and Behold by Yuck
シューゲイザーとポストロックの要素が融合した作品で、現代的な感覚がSlowdiveの復活作と共鳴する。
Depression Cherry by Beach House
ドリームポップの名作。幻想的なサウンドと洗練されたアレンジが、Slowdiveファンの心を掴む。
mbv by My Bloody Valentine
シューゲイザーの伝説的バンドの復活作。ノイジーでありながら美しい音響が、Slowdiveのサウンドと共通する。
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