発売日: 2012年9月18日
ジャンル: インディーロック、バロックポップ、アートロック
Grizzly Bearの4作目『Shields』は、彼らの音楽的進化をさらに推し進めたアルバムであり、前作『Veckatimest』の叙情性と繊細なアレンジを引き継ぎつつも、よりダイナミックで力強いサウンドを展開している。本作はバンド全体のコラボレーションによって作り上げられ、複雑なアレンジと多層的な楽器の調和が印象的だ。
アルバム全体を通じて、エド・ドロステとダニエル・ロッセンがリードする楽曲が交互に並び、二人の異なる音楽的視点が巧みに融合している。アコースティックとエレクトリックのバランス、繊細さとエネルギーの対比が、作品全体に緊張感と深みを与えている。『Shields』は、グリズリー・ベアが持つ多面的な音楽性を再確認させるとともに、さらなる進化を予感させる内容となっている。
トラック解説
1. Sleeping Ute
アルバムの幕開けを飾るダイナミックなトラック。ダニエル・ロッセンのリードボーカルと、変拍子を取り入れた複雑なリズムが印象的。ギターとパーカッションが絡み合い、グリズリー・ベアの新たな挑戦を感じさせる。
2. Speak in Rounds
ミニマルなイントロから始まり、徐々にエネルギーが増していく楽曲。繰り返されるメロディが中毒性を持ち、コーラスワークが楽曲に深みを与えている。
3. Adelma
短いインストゥルメンタルトラック。静謐な雰囲気と控えめなアレンジが、次の楽曲へのブリッジとして機能している。
4. Yet Again
アルバムの中でも特にキャッチーな一曲。軽快なメロディと、エモーショナルなクライマックスが印象的。感情の高まりを感じさせる歌詞とダイナミックなアレンジが心に残る。
5. The Hunt
内省的なバラードで、エド・ドロステのボーカルが静かな情熱を感じさせる。アコースティックギターと控えめなリズムが楽曲全体を優しく包み込む。
6. A Simple Answer
ゆったりとしたテンポとメロディが特徴の楽曲。重層的なコーラスと、楽器の繊細なやり取りが印象的で、アルバム全体に流れる穏やかなムードを強調している。
7. What’s Wrong
ジャズの影響を感じさせるトラック。複雑なアレンジと不協和音的なサウンドが、楽曲にミステリアスな雰囲気を与えている。
8. Gun-Shy
リズムセクションとシンセサイザーが絡み合う軽快なトラック。遊び心のあるアレンジとボーカルの掛け合いが耳に残る。
9. Half Gate
アルバムのクライマックスを飾る壮大な楽曲。ストリングスとピアノが印象的で、徐々にエネルギーを増していく構成がドラマチックな効果を生み出している。
10. Sun in Your Eyes
10分を超える大作で、アルバムのエピローグにふさわしいトラック。静かなピアノのイントロから始まり、力強いクライマックスへと展開する。壮大で感動的な締めくくり。
アルバム総評
『Shields』は、Grizzly Bearの音楽的な成熟と進化を象徴するアルバムである。緻密なアレンジと繊細なソングライティングが際立ち、繊細さと力強さのコントラストが作品全体を通じて鮮やかに表現されている。彼らの特徴である美しいコーラスワークや複雑なリズム構成がより洗練され、アルバムを通じて一貫したテーマ性を感じさせる。リスナーに深い感動を与える一枚であり、インディーロックの枠を超えた名作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Veckatimest by Grizzly Bear
『Shields』の前作で、よりメロディアスで親しみやすいサウンドが特徴。バンドの代表作として広く評価されている。
Fleet Foxes by Fleet Foxes
繊細なコーラスワークと自然を感じさせるフォークサウンドが魅力のアルバム。『Shields』の牧歌的な雰囲気を好む人におすすめ。
High Violet by The National
深い感情を湛えたサウンドと緻密なアレンジが特徴。『Shields』のドラマチックな側面と通じる部分が多い。
In Rainbows by Radiohead
複雑なリズムと美しいアレンジが融合した作品。『Shields』の持つ洗練された音楽性に共鳴する。
Shallow Grave by The Tallest Man on Earth
シンプルなフォークサウンドながらも深い感情を感じさせるアルバム。『Shields』の内省的な一面を楽しめる。
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