Shapes of Things by The Yardbirds(1966)楽曲解説

Spotifyジャケット画像

1. 歌詞の概要

「Shapes of Things」は、The Yardbirdsが1966年にリリースしたシングルであり、彼らのキャリアの中でも最も先鋭的かつ革新的な楽曲として知られている。この曲は、ロック史においても画期的な転機となった作品であり、初期のサイケデリック・ロック、さらにはハードロックの先駆けとも称される。

歌詞の内容は、恋愛や個人的感情ではなく、時代の変化、戦争、環境、そして人類の未来に対する問いかけが中心である。これは、当時のロックにおいては異例であり、政治的・哲学的な視点を持ち込んだことで、のちのアーティストたちに多大な影響を与えた。

「Will my time be mine and choose(自分の時を自分で選べるだろうか)」「Come tomorrow, will I be older?(明日になれば、僕は歳をとるのか?)」といったラインは、時の流れと自由意志に対する深い疑念と希望の混在を描き出しており、単なるポップソングではない重みを帯びている。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Shapes of Things」は、The Yardbirdsにとって音楽的にも精神的にも転換点となった作品であり、特にジェフ・ベックのギターが全面にフィーチャーされた初期の代表作である。彼の革新的なフィードバック奏法、サスティーンの効いたソロ、そしてサイケデリックなトーンは、のちにジミー・ペイジやジミ・ヘンドリックスにも大きな影響を与えた。

また、この曲はロンドンのスタジオでわずか2回のセッションで録音されたにもかかわらず、完成度の高いアレンジと深いメッセージ性を両立させている。歌詞は、ベーシストのポール・サミュエル=スミスとキース・レルフの共作であり、ベトナム戦争や環境破壊といった当時の世界情勢を背景にして書かれたと言われている。

音楽的には、明確なリフ構造、ドラムの繰り返しパターン、メロディのミニマリズムといった要素が、後年のサイケ・ロックやプログレッシブ・ロックの基礎として評価されている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Shapes of Things」の印象的な一節を紹介する。

Shapes of things before my eyes
 目の前に現れる、さまざまな“物の形”

Just teach me to despise
 それらは僕に嫌悪を教える

Will time make men more wise?
 時が経てば、人は賢くなれるのか?

Come tomorrow, will I be older?
 明日になれば、僕は今より年老いているだろうか?

Come tomorrow, may be a soldier
 もしかしたら、明日には兵士になっているかもしれない

Come tomorrow, may I be bolder than today?
 明日には、今日よりも勇敢になれるだろうか?

引用元:Genius Lyrics – The Yardbirds “Shapes of Things”

4. 歌詞の考察

この楽曲がユニークなのは、個人の恋愛や内面ではなく、“時代そのもの”に対するメッセージを歌っている点である。60年代半ばといえば、戦争、核問題、公民権運動、カウンターカルチャーの興隆といった激動の時代。そんな時代の中で、「Shapes of Things」は、未来に対する恐れと希望を、冷静かつ詩的に描いている

「Will time make men more wise?(人は時間とともに賢くなるのか?)」という問いには、人間の進化に対する根源的な疑念が表れており、それは現代にもなお響くテーマである。「兵士になるかもしれない」というフレーズも、徴兵制や戦争の現実を見据えた痛烈な自己認識であり、当時の若者が感じていた不安と無力感を象徴している。

さらにこの曲では、目に見える“ものの形(Shapes of Things)”を通じて、社会が押しつけてくる価値観や未来の像を疑う視点が提示されている。つまり、外から見える“かたち”と、自分自身の内面とのギャップに悩む若者の心理が、この一見抽象的なタイトルに集約されているのだ。

※歌詞引用元:Genius Lyrics – The Yardbirds “Shapes of Things”

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • See Emily Play by Pink Floyd
     サイケデリック・ポップの傑作。幻想的な世界観と現実逃避のメッセージが共鳴する。

  • Eight Miles High by The Byrds
     サイケデリアとジャズの融合。精神世界への飛翔というテーマが共通。
  • I Had Too Much to Dream (Last Night) by The Electric Prunes
     夢と現実の交錯をテーマにした1960年代の実験的ロック。

  • Happenings Ten Years Time Ago by The Yardbirds
     本作の続編的作品であり、さらに深い哲学性とサイケ感を探求している。

6. “音楽が世界を問い始めた瞬間”──思想とサウンドの融合によるロックの進化

「Shapes of Things」は、The Yardbirdsの中でも特に思想的かつ実験的な名曲であり、ポップソングの中に哲学や社会批判を織り込むという試みの成功例としてロック史に名を刻んでいる。

この楽曲が特別なのは、メッセージ性に加えて、ジェフ・ベックのギターによる新たな音の探求と、心理的に訴えかけるような構成にある。たった3分弱の中に、「未来とは何か?」「人類は進歩するのか?」「社会に対してどう向き合うのか?」という問いが詰め込まれており、それをロックの言語で語り切った。

さらに、「Shapes of Things」はサイケデリック・ロックの黎明期における先駆けであり、のちのPink Floyd、Cream、Led Zeppelinなどのバンドがたどる道を先取りしているとも言える。音楽がエンターテインメントを超えて、“思想を伝えるメディア”として機能しはじめた瞬間が、まさにこの楽曲に刻まれている。

単なる懐古ではなく、今なお鋭く響く問いがここにはある。「明日になれば、僕は勇敢になれるだろうか?」——この問いにどう答えるかは、現代を生きる私たち自身の問題なのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました