アルバムレビュー：Seventeen Seconds by The Cure

アルバムレビュー

2024.10.17

発売日: 1980年4月22日
ジャンル: ポストパンク、ゴシックロック

『Seventeen Seconds』は、The Cureの2枚目のスタジオアルバムであり、彼らのサウンドがポストパンクからよりダークで内省的なゴシックロックへと進化した作品だ。シンプルでミニマルなプロダクションが施され、冷たいシンセサイザーの音色と、ロバート・スミスの悲しげで抑えられたヴォーカルが、アルバム全体にわたって陰鬱な雰囲気を作り出している。『Three Imaginary Boys』でのエネルギッシュなパンク的要素を捨て去り、シリアスでメランコリックなサウンドへとシフトしたこのアルバムは、The Cureが後に展開するダークで幻想的な音楽スタイルの前兆とも言える重要な作品だ。

各曲ごとの解説:

A Reflection
　シンプルなインストゥルメンタルトラックで、アルバムのオープニングを静かに導く。ミニマルなピアノとシンセサウンドが、メランコリックで夢幻的な雰囲気を作り出し、続く曲の陰鬱なトーンを予感させる。
Play for Today
　アップテンポなビートとシンセサウンドが際立つポストパンクの名曲。歌詞は関係の崩壊と虚しさをテーマにしており、スミスのヴォーカルは冷たくも感情的だ。キャッチーなメロディが印象的で、ライブでも人気の一曲。
Secrets
　ミステリアスなサウンドが特徴的な楽曲。繰り返されるリフとシンセが、静かな不安感を醸し出している。歌詞は秘密と裏切りに関するもので、スミスの囁くようなヴォーカルが曲のダークな雰囲気を一層引き立てる。
In Your House
　ゆったりとしたテンポと、どこか幽玄的な雰囲気が漂う曲。シンプルなギターパターンと反復的なビートが、閉塞感と孤独感を表現しており、アルバム全体のメランコリックなテーマを補強している。
Three
　短いインストゥルメンタルだが、冷たく鋭いシンセサウンドと不安をかき立てるようなリズムが特徴的。暗闇の中に漂う孤独感を音で表現しており、アルバムの中でも特に実験的な要素が強いトラックだ。
The Final Sound
　非常に短いインストゥルメンタルで、次のトラック「A Forest」へのイントロの役割を果たす。ピアノとシンセが織りなす儚い音が、終末的な空気を感じさせる。
A Forest
　The Cureの代表曲の一つであり、ミニマルで陰鬱なサウンドが特徴。繰り返されるギターフィギュアとリズミカルなシンセラインが、曲全体に神秘的な緊張感をもたらす。歌詞はスミスが迷い込む森の中で自分を見失う感覚を描いており、バンドのゴシックロック的な一面が顕著に表れている。
M
　繊細で感情的なギターワークが光る楽曲で、スミスのヴォーカルも非常に内省的。歌詞は失われた愛や後悔をテーマにしており、曲全体が切なさと悲しみに包まれている。アルバムの中でも特にメランコリックな一曲だ。
At Night
　冷たい夜の静けさを表現するかのような曲で、ギターの不安定なリフと暗く重たいベースラインが印象的。歌詞は夜に訪れる孤独や不安に焦点を当てており、アルバムの中でも最もダークな楽曲の一つだ。
Seventeen Seconds
　タイトル曲で、アルバムの締めくくりを飾る。無常感と喪失感をテーマに、繰り返されるギターリフが時間の儚さを象徴するかのようだ。スミスのヴォーカルは控えめでありながら感情が滲み出ており、アルバム全体のテーマを完結させる見事なエンディングとなっている。

アルバム総評:

『Seventeen Seconds』は、The Cureがより内向的で暗い音楽性を確立する転換点となった作品だ。シンプルなプロダクションとミニマリズムが特徴のこのアルバムでは、冷たいシンセサウンドとロバート・スミスの繊細なヴォーカルが強烈な印象を残す。特に「A Forest」はバンドのキャリアを象徴する重要な楽曲となっており、このアルバムから始まるゴシックロックの要素が後の作品にも大きく影響を与えている。ダークでメランコリックな雰囲気を好むリスナーにとっては、必聴のアルバムだ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

Closer by Joy Division
同じくポストパンクの傑作で、暗く内省的な歌詞とミニマルなサウンドが特徴。『Seventeen Seconds』の陰鬱なトーンを気に入ったリスナーに響く作品。
Pornography by The Cure
『Seventeen Seconds』の次の進化を示すアルバムで、よりダークで重いサウンドが特徴。ゴシックロックの要素がさらに強まり、バンドの暗黒時代を象徴する作品。
Script of the Bridge by The Chameleons
ポストパンクの名作で、叙情的で幻想的なサウンドスケープが広がる。『Seventeen Seconds』の冷たく美しいサウンドが好きなリスナーにぴったりの一枚。
Faith by The Cure
『Seventeen Seconds』に続くアルバムで、さらに深みを増したダークなサウンドとテーマが特徴。メランコリックな雰囲気が一貫しており、The Cureの進化を感じられる作品。
Garlands by Cocteau Twins
ゴシックロックとドリームポップを融合させたアルバムで、暗く神秘的な雰囲気が魅力。『Seventeen Seconds』の幻想的な要素を楽しんだリスナーにおすすめ。