発売日: 2015年10月2日
ジャンル: オルタナティブロック、アメリカンロック、ポップロック、アリーナロック
概要
『See What You Started by Continuing』は、Collective Soulが2015年にリリースした通算9作目のスタジオ・アルバムであり、タイトルに込められたとおり、“始めたことを続けることで見える景色”を提示する、キャリアの再起動作かつ原点回帰の作品である。
前作『Collective Soul(Rabbit)』(2009)以来、6年ぶりのアルバムリリース。
その間にはメンバーチェンジもあり、新ギタリストのジェシー・トリプレットとドラマーのジョニー・ラビンが正式加入。
新たな血とともに、バンドが初期のグランジ~ポップロック的なダイナミズムを再び獲得したことが、本作の最大の特徴である。
バンドの中核であるエド・ローランドは、「このアルバムは俺たちが“Collective Soul”という名前で最初にやりたかったことを、ようやく自然体で実現できた作品だ」と語っており、“グランジの残響”と“成熟した楽曲構成”が美しく融合した、“大人のロック・アンセム集”といえる内容に仕上がっている。
全曲レビュー
1. This
アルバムの幕開けを飾る爽快なロック・ナンバー。
「これが、今の俺たちだ」というような宣言が込められたタイトル通り、リフとメロディの歯切れがよく、開かれたエネルギーを持つ一曲。
2. Hurricane
“嵐”をテーマに、混沌の中に立ち尽くす人間の強さと弱さを描いた重厚なロックチューン。
サビでの開放感が、暴風のあとの静けさすら感じさせる。
3. Exposed
テンポの速いグルーヴが気持ちよく、“裸にされた自分”というテーマが、心の内をさらけ出すことの勇気として語られる。
新ギタリストの切れ味が光るトラック。
4. Confession
“告白”というタイトルながら、しっとりしたバラードではなく、内省を軽快なリズムで包み込むようなポップ・ロックナンバー。
語るよりも“示す”姿勢が印象的。
5. AYTA (Are You the Answer)
本作中でも異色の、ややサイケデリックなトーンを持つ楽曲。
“あなたは答えか?”という問いは、恋愛にも人生にもかかる多義的なメッセージとして響く。
6. Contagious
“感染する”というタイトルの通り、ビートとコーラスが中毒性を持つダンサブルなロック。
ライブ映えするパワフルな一曲で、バンドの“現在形”を強く打ち出す。
7. Life
“Life is what you make of it.”
人生をどう生きるか、という普遍的な主題を、ポジティブで開かれた旋律とともに歌う。
Collective Soulの近年の楽曲の中でも特にシンプルで晴れやかなトラック。
8. Am I Getting Through
「自分の声は届いているか?」という問いを繰り返す、内省的でメロディアスなナンバー。
声とギターのかけあいが、心の揺らぎを鮮やかに表現する。
9. Memoirs of 2005
アルバムの後半に差し掛かるタイミングで、過去を回想するようなノスタルジックな曲が登場。
2005年という具体的な年をタイトルにしながら、誰しもにある“ある時代”への思いを普遍化して描く。
10. Tradition
“伝統”とは何か?という問いに、バンド自身の存在を通して答えようとするロック・チューン。
サウンドは硬派だが、メッセージは温かく力強い。

総評
『See What You Started by Continuing』は、Collective Soulが“若さ”と“成熟”の中間点で見出した、新しいバンド像の確立であり、原点にして未来でもある一作である。
初期のグランジ的ギターリフと中期のメロディアスなポップロック路線が融合し、“これこそがCollective Soul”と言えるアルバムになっている。
音楽的なスタイルの幅は保ちつつも、全体のテンションと一貫したメッセージ性の高さにより、“一気に聴ける”強度の高いアルバム構成となっている。
バンド名の由来である“集合的な魂”が、今もなお一つの声として鳴っていることを証明する、現役感と風格を同時に備えたロック作品だ。
おすすめアルバム
- Foo Fighters / Sonic Highways
原点回帰と旅路の記録というテーマが共通。 - Goo Goo Dolls / Boxes
ポップロックと人生の再定義を重ねるアプローチ。 - Switchfoot / Fading West
旅・再生・音楽への信頼が溶け合ったロック・サウンド。 - Matchbox Twenty / North
ベテランバンドとしての音楽的バランス感が近い。 - Lifehouse / Out of the Wasteland
メロディ重視のオルタナティブロックとしての類似性。
歌詞の深読みと文化的背景
『See What You Started by Continuing』というタイトルは、「始めたことを、やめずに続けた先に何が見えるか」という、あまりにも率直で本質的な問いである。
これはバンドとしてのキャリアにも、人生そのものにも通じる命題であり、Collective Soulはこのアルバムで、止まらなかったことの意味を音楽で答えている。
歌詞には怒りよりも理解、反抗よりも共感、疑念よりも問いがある。
それが、“続けること”の中に見える大人のロックの美学なのだろう。
コメント