Say Love by JoJo（2015）楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Say Love」は、JoJo（ジョジョ）が2015年にリリースした「トライアングル」シングルのひとつであり、関係性の曖昧さに耐えきれなくなった女性が、相手に「ちゃんと言葉にして愛を示してほしい」と訴える、極めて感情的で誠実なバラードである。

この楽曲では、恋人との関係が曖昧なまま進んでいく中で、「キスや肌の温もりではもう足りない」と語り手が心の奥底にある本音をさらけ出していく。
「愛してるって言ってよ」——たった一言で満たされる心。けれどその一言が、相手の口からは決して出てこない。そのフラストレーションと寂しさが、JoJoの圧倒的なボーカルでエモーショナルに爆発する。

恋愛における“言葉の重み”と“心の不安”が、極限まで繊細に描かれたこの曲は、JoJoの成熟した歌声と繊細な表現力が見事に結晶化された一曲である。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Say Love」は、JoJoが2015年に発表した「トライングル」プロジェクト（“tringle”＝3曲同時配信）の中の1曲であり、彼女の復活を象徴する『III.』EPに収録されている。
この時期のJoJoは、前所属レーベルとの長い法的トラブルを終えて、新たなスタートを切ったばかりだった。
そんな彼女が「Say Love」で歌ったのは、自分の声を取り戻し、他人のあいまいさに対して真正面から「明確な愛をよこせ」と突きつける、強い意志だった。

プロデュースを担当したのはHarmony Samuels（Ariana Grande、Chris Brownなどを手がけたプロデューサー）で、ピアノとストリングスを軸としたシンプルながらも感情の波をしっかりと支えるサウンドデザインが施されている。
ミュージックビデオでは、JoJoが夜の街をさまよいながら、相手との距離感に苛立ちを募らせる様子が描かれ、心の奥底で叫びたい感情が映像と楽曲の両面から突き刺さってくる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

この曲は、静かな問いかけから始まり、やがて怒りと涙が混ざったような情熱へと変化していく。以下はその印象的なラインである。

When I say “I love you,” you just say “me too”
私が「愛してる」と言うと、あなたは「俺も」って言うだけ

この時点で、語り手の言葉と相手の反応の温度差が明らかになる。

But I need you to say it / Say love
でも、私にはそれじゃ足りない / 「愛してる」って言ってほしいの

ここでタイトルがそのまま訴えの核心となる。身体ではなく、言葉によって“関係の真実”を確認したいという渇望が表れている。

Don’t just say you’re gonna take me somewhere / Let’s go there
ただ連れていくって言うだけじゃなくて、もう一緒に行こうよ

関係の進展を口にするだけの恋人に対し、実行と覚悟を求める真剣な呼びかけ。

I don’t wanna wonder if you’re gonna be there
「いてくれるのかな」って、これ以上不安に思いたくないの

曖昧な関係に心が擦り減っていく感情が、ストレートな言葉で静かに突き刺さる。

歌詞の全文はこちら：
JoJo – Say Love Lyrics | Genius

4. 歌詞の考察

「Say Love」は、JoJoが音楽業界と個人的な痛みを乗り越えて、“感情を取り戻すこと”に全力で向き合った一曲である。
ここで語られる“愛しているって言って”という願いは、単なるロマンティックな台詞ではなく、相手との関係における「対等さ」「安心感」「存在証明」を求める心の叫びである。

多くの人が、「言葉にしなくてもわかる」「態度で示せばいい」と言う中で、この曲ははっきりとこう問いかける。「なぜ、あなたは“愛してる”って言わないの？」

これは、自分の価値を認めてほしい、言葉にしてほしいという**“愛における自己承認の重要性”を真正面から描いたメッセージであり、JoJoの成長と内省が濃く投影されている。
かつて「Leave」で自分を傷つけた恋人を拒絶した彼女が、今は「それでも私はあなたに心を開いている。でも、あなたはそれに応えてくれるの？」と問いかける**までになっているのだ。

また、サビに向かってエモーションが増幅していくボーカルの表現は、JoJoのソウルフルな歌唱力が最大限に発揮された瞬間であり、感情が飾らずに響いてくる。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

• Bleeding Love by Leona Lewis
  愛するがゆえに傷つき、それでも相手を手放せない感情を力強く歌い上げたバラード。
• All I Ask by Adele
  一夜限りでも「愛してる」と言ってほしいという切実な想いを描いた名バラード。
• Stay by Rihanna ft. Mikky Ekko
  関係の継続に悩みながらも、「そばにいて」と願う心情を繊細に表現したデュエット。
• Almost Is Never Enough by Ariana Grande & Nathan Sykes
  「もう少しで本物の愛になれたのに」という後悔と未練を歌った切ないデュエットソング。
• Un-break My Heart by Toni Braxton
  去った相手に“壊された心を元に戻してほしい”と願う深い痛みと情熱を描く。

6. “愛は、ちゃんと『言葉にして』もらわなきゃ意味がない”

「Say Love」は、JoJoが自分を見失わずに恋をしようとする姿勢と、あいまいな関係性に対する“感情の正直さ”を突き詰めたバラードである。

それは、強さを誇示するのではなく、「私はちゃんと愛されたい」とまっすぐに願うことの強さを教えてくれる。
そしてその願いは、決してわがままではない。
むしろ、“好き”や“優しい”という態度の奥にある“愛してる”という言葉こそが、不安な心を支えるたった一つの言葉になるのだ。

JoJoはこの曲で、**「愛は体温だけじゃわからない。私は、ちゃんと、言葉で愛されたい」**と語る。
それは、恋に臆病になったすべての人への、静かなエールなのかもしれない。