Save My Soul by JoJo（2015）楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Save My Soul」は、JoJo（ジョジョ）が2015年にリリースしたEP『III.（Tringle）』に収録された楽曲であり、依存や自己破壊的な衝動に引き込まれていく心の闇と、そこから抜け出したいという魂の叫びを繊細かつ激烈に描いた一曲である。

この曲における「soul（魂）」は、単に精神を意味するだけではなく、過去のトラウマ、愛と痛みが絡み合った複雑な感情の“核”そのものを指している。JoJoはその魂が徐々に壊れていく様を、まるで海に沈んでいくように静かに、しかし抗うように歌う。

この曲のメッセージは非常に個人的でありながら、自分をコントロールできない何かに飲み込まれそうになった経験のあるすべての人に寄り添うような、普遍的な苦しみと救済への願いが込められている。
「救って」ではなく、「救えるのは自分だけかもしれない」と薄々感じながらも、それでも誰かの声や手を欲してしまう——そんな切実さが、この曲全体に滲んでいる。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Save My Soul」は、JoJoがトライアングル・プロジェクト（『III.』）の一環として2015年にリリースした3曲のうちの1つであり、最も内省的で、感情の深部に触れる楽曲である。
この曲は、彼女自身の経験、特にアルコール依存に苦しんだ父親の死と、自身の心の中に巣食っていた感情の乱れからインスピレーションを受けて制作された。

JoJoはこの曲について、「これは愛する人を失っていくのを目の当たりにしながら、自分では何もできない無力感を歌った曲」だと語っている。
同時に、それは自分自身にも向けられた問いであり、「どうして私はこうなるまで助けを求められなかったのか」という、他人への痛みと自己への怒りが混在するエモーショナルな楽曲となっている。

プロデュースはJohan “Jones” WetterbergとCarla Marie Williamsらによって手がけられ、ダークでミニマルなビートと、JoJoの濃密なボーカルだけで成り立つ、非常に緊張感のあるサウンドスケープが構築されている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

この楽曲では、抽象的な表現の中にリアルな痛みが刻まれており、感情のピークでは言葉が悲鳴のように響く。

I got the bottle, brought it to my lips / I let it take me on a trip
ボトルを手に取って、口に運ぶ / それにすべてを預けて旅に出るの

ここで描かれているのは、逃避としての依存。自分を忘れるために何かにすがる瞬間の無防備さと危うさ。

You don’t know what you got ‘til it’s gone
失って初めて、それがどれだけ大事だったかわかるの

恋愛にも人生にも当てはまるこの一節は、後悔と痛みを象徴する普遍的な真理として響く。

Someone save my soul / I can’t do this alone
誰か私の魂を救って / 一人じゃもう無理なの

サビでは、自分でもわかっている“助けを求めるしかない状況”の悲壮な叫びが炸裂する。

Who do you turn to when the only person you know is gone?
頼れる相手がいなくなったとき、人は誰に救いを求めるの？

孤独と絶望が重なるときの無力感をこれほど切実に表現したラインは、JoJoだからこそ歌えるもの。

歌詞の全文はこちら：
JoJo – Save My Soul Lyrics | Genius

4. 歌詞の考察

「Save My Soul」は、JoJoというアーティストがポップアイドルのイメージを完全に脱ぎ捨て、自分の“痛みの輪郭”をさらけ出した初の真のカミングアウト作品だといえる。

この曲で描かれる“救い”とは、宗教的な奇跡ではないし、恋人による癒しでもない。
それは、他者の理解と共感、あるいは「わかるよ」とそっと寄り添う誰かの存在に過ぎないかもしれない。だが、それだけでも“魂”は救われる。そう信じたい気持ちが、この歌には込められている。

また、この曲には“対話”の構造がある。歌詞中の「you（あなた）」は特定の相手ではなく、過去の自分かもしれないし、失った父親かもしれないし、リスナーそのものかもしれない。
そうした“語りかける構造”が、曲全体をカタルシスではなく“癒しの儀式”として機能させているのだ。

サビでのボーカルの高まりは、まるで押し殺してきた感情が溢れ出す瞬間のようで、聴き手の胸をかきむしるような痛みに変わる。それは涙を誘うというよりも、ただ静かに心に沈んでいく。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

• Praying by Kesha
  逆境と絶望の中から祈りと再生を歌い上げた、魂の再起バラード。
• Breathe Me by Sia
  自分を傷つけながらも助けを求める、壊れた魂のひとりごとのような一曲。
• I’m In Here by Sia
  外からは見えない内なる孤独と悲しみを歌った繊細なピアノバラード。
• Liability by Lorde
  「重たすぎる」と言われてきた自分を受け入れ、静かに泣くためのポップソング。
• 1-800-273-8255 by Logic ft. Alessia Cara & Khalid
  自殺願望を抱える人の視点で語られる“生きることを選ぶ”までの感情の旅。

6. “この痛みを歌にしたら、少しだけ楽になれるかもしれない”

「Save My Soul」は、JoJoという一人の女性が、自分の傷とその深さを初めて正面から見つめ、“助けて”と声に出すまでのプロセスを、そのまま音楽に落とし込んだ痛烈で誠実な作品である。

この曲には、奇跡もハッピーエンドもない。
だが、「一人じゃ抱えきれない」と言えた瞬間に、救いは始まっている。
JoJoはこの曲で、“心の底から誰かに届いてほしい”という想いを、ありのままの声で伝えている。それは決して弱さではない。
むしろ、傷ついたことを認めた人だけが持つ、本物の強さとやさしさが、この曲には確かに宿っている。

そしてこの歌は、きっと誰かの夜を少しだけ明るくする。
「私もそうだった」と思える誰かの、最初の一歩になるかもしれない。