発売日: 1973年12月1日
ジャンル: ヘヴィメタル、ハードロック、プログレッシブロック
アルバム全体の印象
「Sabbath Bloody Sabbath」は、Black Sabbathの5枚目のスタジオアルバムであり、ヘヴィメタルとプログレッシブロックの要素を融合させた挑戦的な作品である。本作では、バンドはそれまでの重厚でシンプルなヘヴィサウンドに加え、より洗練されたアレンジや複雑な楽曲構成に挑戦している。キーボードやストリングスの導入、そして多様な楽器の使用が楽曲に新たな深みを加えた。
制作は難航し、特に初期段階では創作上の行き詰まりがあったが、ウェールズのカウンマ・スタジオに移ってから創造力が解放され、アルバムの方向性が固まったと言われている。トニー・アイオミのリフメイキングは依然として圧巻であり、ギーザー・バトラーの歌詞は宗教、個人の葛藤、権力への反抗といったテーマを掘り下げている。
本作は、「Sabbath Bloody Sabbath」や「A National Acrobat」といった代表曲を含み、バンドの音楽的ピークを示す作品とされている。ヘヴィメタルの枠を超えた芸術性を持ち、1970年代のハードロック/メタルの中でも特に高く評価される一枚である。
各曲解説
1. Sabbath Bloody Sabbath
アルバムのタイトル曲で、ブラックサバスの代表曲の一つ。トニー・アイオミの力強いリフと、オジー・オズボーンの高揚感あふれるボーカルが楽曲を支配する。歌詞は、成功と苦悩を織り交ぜた個人的な葛藤を描いており、バンドのエネルギーが凝縮された一曲。
2. A National Acrobat
ギーザー・バトラーが中心となって作詞した哲学的な楽曲で、生と死、転生について語られている。ミドルテンポのリズムとアイオミのギターリフが楽曲を引き立てる。
3. Fluff
ピアノとアコースティックギターを主体としたインストゥルメンタル。美しく静謐な雰囲気を持つこの楽曲は、アルバム全体のダイナミクスを豊かにしている。
4. Sabbra Cadabra
ブルースロック的な要素が強いアップテンポな楽曲。リック・ウェイクマン(Yes)が参加した華やかなキーボードアレンジが印象的で、ブラックサバスの新たな一面を感じる。
5. Killing Yourself to Live
自己破壊的な生活をテーマにした楽曲で、ギーザー・バトラーの皮肉に満ちた歌詞が特徴。リズムの変化や、重厚なリフが楽曲にスリリングな要素を加えている。
6. Who Are You?
シンセサイザーを大胆に使用した実験的なトラック。オジーの不気味なボーカルとシンプルながらも印象的なメロディが、楽曲に異質な雰囲気を与えている。
7. Looking for Today
アコースティックギターとエレクトリックギターのバランスが絶妙な楽曲。リズムの軽快さと歌詞の深刻さが対照的で、アルバム全体の流れを引き締める。
8. Spiral Architect
アルバムのフィナーレを飾る壮大なトラック。オーケストラを導入したアレンジがドラマチックで、ブラックサバスの音楽的野心を象徴する楽曲となっている。歌詞には、人間の経験や感情の深みが込められている。
アルバム総評
「Sabbath Bloody Sabbath」は、Black Sabbathがこれまでのヘヴィメタル路線を超えて、より幅広い音楽的アプローチを試みたアルバムである。トニー・アイオミのギターリフとバンドの強烈なパフォーマンスはそのままに、プログレッシブな構成や多様なアレンジが加わり、バンドの可能性を大きく広げている。
「Sabbath Bloody Sabbath」や「A National Acrobat」のようなクラシックメタルの楽曲から、「Fluff」や「Spiral Architect」のような実験的で感動的なトラックまで、バンドの多彩な才能が発揮されている本作は、ブラックサバスのディスコグラフィの中でも特に完成度が高い一枚だ。ヘヴィメタルファンだけでなく、プログレッシブロック愛好者にもおすすめの作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「Vol. 4」 by Black Sabbath
前作で、ヘヴィサウンドと実験性の融合を試みた作品。「Sabbath Bloody Sabbath」への流れを感じられる。
「Aqualung」 by Jethro Tull
プログレッシブロックとハードロックを融合させた名作。歌詞の深みとアレンジの豊かさが共通する。
「Machine Head」 by Deep Purple
リフ主体のヘヴィサウンドが楽しめるアルバムで、「Sabbath Bloody Sabbath」のファンに刺さる内容。
「Dark Side of the Moon」 by Pink Floyd
プログレッシブな構成と音響の美しさが特徴。ブラックサバスの実験的側面を楽しめたリスナーにおすすめ。
「Sad Wings of Destiny」 by Judas Priest
ヘヴィメタルのメロディアスな側面を強調した作品で、ブラックサバスの影響を色濃く感じられる。
コメント