発売日: 2003年4月8日
ジャンル: ファンク、ソウル・ロック、ジャズ・ファンク、ニューオーリンズ・グルーヴ
概要
『Ruckus』は、Galacticが2003年にリリースした4作目のスタジオ・アルバムであり、初期のインストゥルメンタル・ジャム色を残しつつも、ボーカル中心のソングオリエンテッドな路線へと大きく舵を切ったエポック的作品である。
この時点ではJelly Joseph（Anjelika ‘Jelly’ Joseph）はまだ参加していないものの、本作でリードボーカルを務めるTheryl “The Houseman” DeClouetの存在は圧倒的で、現在のJellyが担う“感情の中心”としての役割の原型を明確に感じ取ることができる。
また、本作のプロデューサーにはDan the Automator（Gorillaz, Handsome Boy Modeling School）が名を連ねており、ファンクにヒップホップ的な感性を導入した異色作としても高く評価されている。
グルーヴの熱さはそのままに、構造と音響に洗練を加えた“歌えるファンク”──それが『Ruckus』の核心である。
全曲レビュー（主要トラック抜粋）
1. Bittersweet
ダンサブルなホーンと粘り気のあるベースラインが印象的なオープナー。
Housemanの歌声が、喜びと痛みの両方を抱えたままリスナーに迫ってくる。
2. Think Back
ファンキーで跳ねるビートに乗せて、記憶と後悔をテーマにしたナンバー。
Jelly Josephの現代的なステージングで再解釈されても映えそうな“感情の揺らぎ”がある。
3. Uptown Odyssey
ニューオーリンズの街を音で描いたようなインスト・ジャム。
ホーンの掛け合いとタイトなドラムが、都市の雑踏と熱気を再現している。
ヴォーカル曲が多い本作における“呼吸の瞬間”。
4. Kid Kenner
リズミカルでストリート感のあるミッドテンポのファンク。
この曲の世界観は、後年のJelly Josephによる“語るように歌う”スタイルに非常に近い。
5. Never Called You Crazy
ソウル・バラード的な立ち位置の一曲。
Housemanの温かくも哀しげなヴォーカルが胸を打つ。
この感情表現力は、Jellyのエモーショナルな表現と完全に地続きである。
6. Tenderness
Dan the Automatorによるプロダクションが際立つ、ヒップホップとファンクの境界をぼかすようなアレンジ。
ブレイクビーツとアナログな質感が共存する異色作。
7. All Behind You Now
アルバムのクロージングにふさわしいポジティブなソウル・ナンバー。
過去を振り返りながらも、前に進むというテーマは、Jelly Joseph時代のGalacticの精神性にもつながる。
総評
『Ruckus』は、Galacticというバンドがジャム・ファンクからソング・ファンクへと進化する過程で生まれた“橋渡しのアルバム”であり、同時にTheryl “The Houseman” DeClouetというシンガーが残した重要な遺産でもある。
この作品に耳を傾けることで、Jelly Josephという新たなフロントウーマンの登場が決して“突然の変化”ではなく、“必然的な継承”であったことが理解できる。
Jellyが現在のライブでこれらの楽曲を歌い継ぐことにも、大きな説得力が宿る。
『Ruckus』──それは、“騒がしくも洗練されたファンクの未来”が描かれた、一つの到達点であり、次なる始まりでもあったのだ。
おすすめアルバム（5枚）
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Galactic / Already Ready Already
Jelly Joseph正式加入後の傑作。『Ruckus』以降の成熟した歌モノファンク。 -
Theryl DeClouet / Houseman Cometh
Housemanのソロ作。『Ruckus』期の歌声の深みをより濃密に味わえる。 -
The New Mastersounds / Plug & Play
インスト主体ながら、時折挿入されるボーカルの温度感が近い。 -
The Brand New Heavies / Brother Sister
歌とグルーヴが共に躍動するUKアシッド・ジャズの名盤。Jelly Josephの美学に近い。 -
Sharon Jones & The Dap-Kings / Soul Time!
重厚なソウル・ファンクとパワフルな女性ボーカル。Galacticの現代形との親和性が高い。
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