Ready To Love by JoJo（2020）楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Ready To Love」は、JoJo（ジョジョ）が2020年にリリースしたアルバム『good to know』のデラックス・エディションに収録された楽曲であり、長い間自分と向き合い、ようやく誰かを愛する準備が整った瞬間を描いた繊細かつ誠実なラブソングである。

この曲の語り手は、過去に経験した失恋や裏切り、自己破壊的な選択を経て、ようやく「私は今、愛する準備ができた」と自らに言い聞かせる。
だがそれは、「誰かを待っている」というよりも、「ようやく自分を許せた」「今の私なら、ちゃんと愛せる」という自己肯定と内面の静かな回復を示す宣言である。

恋に焦がれるのではなく、恋に臆するのでもなく、真摯に「愛することの責任」と向き合い、それを引き受ける覚悟が綴られている。
だからこそこの曲は、恋愛の初期衝動ではなく、「愛に対する成熟した敬意」を感じさせる、JoJoのキャリアの中でも特に深く静かな輝きを放つ一曲となっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Ready To Love」が収録された『good to know』は、JoJoが自身の人生を見つめ直し、内面からの再出発を図った作品であり、自己反省と成長のプロセスがアルバム全体にわたって描かれている。
そのなかでも「Ready To Love」は終盤に配置されており、過去を総括し、「今の私は誰かをちゃんと愛せる」と静かに結論づけるような構成となっている。

JoJoはこの時期、インタビューで「自分自身を壊していたことに気づいた」「誰かを本当に愛するには、まず自分を癒す必要があった」と語っており、この曲はその心の変遷をまさに音楽として昇華したものだといえる。

サウンド面では、アコースティック・ギターの柔らかい音色とJoJoの穏やかなボーカルが静かに絡み合い、言葉一つひとつが“語りかけ”のように耳元に届くような丁寧なミキシングと演出が特徴的である。

3. 歌詞の抜粋と和訳

この曲では、「愛したい」ではなく、「愛せる自分になった」と語る内面の変化が、飾らない言葉で描かれている。

I was always looking for a way out / I was always searching for the next high
いつも逃げ道を探してた / いつも次の興奮ばかりを追いかけてた

ここでは、自己破壊的な過去と向き合い、それを正直に見つめている。

But now I know what I want / I’m ready to love
でも今は何が欲しいのかわかってる / 私、もう愛する準備ができたの

サビでは、**欲望や衝動からではなく、明確な自己理解と決意からくる“愛するという選択”**が語られる。

I had to learn how to let someone in / Without losing me
自分を失わずに、誰かを受け入れる方法を学ばなきゃいけなかった

このラインは非常に重要で、自己犠牲ではない愛、対等な関係を築くための心の成長が象徴されている。

I won’t run when it gets hard / I won’t hide behind my scars
辛くなったら逃げることもしない / 傷に隠れて生きるのはもうやめる

痛みに立ち向かう強さと、感情的成熟への静かな誓いがにじむ。

歌詞の全文はこちら：
JoJo – Ready To Love Lyrics | Genius

4. 歌詞の考察

「Ready To Love」は、JoJoがこれまでの人生で経験してきた数々の葛藤――愛に翻弄された少女時代、業界との確執、自己破壊的な行動、そして再起――のすべてを乗り越えた先にある**“心の準備”を丁寧に綴った一曲**である。

この曲の本質は、「愛する準備が整った」という言葉の裏にある、「かつては準備ができていなかった」という痛みの記憶にある。
愛は奇跡や衝動ではなく、選択と責任の連続なのだと、この曲は教えてくれる。

また、恋愛というテーマを扱いながら、この楽曲の核にあるのは**“セルフラブ”**である。
誰かを本当に愛するためには、自分を知り、癒し、赦す必要がある。
そしてJoJoはこの曲で、それができるようになったことを、自分自身に向けて優しく宣言している。

そのボーカルは力強くはない。むしろ繊細で、ためらいがちですらある。だがそこにこそ、無理のない、ありのままの自己肯定の美しさが宿っているのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

• Love Me Anyway by P!nk ft. Chris Stapleton
  「どんな私でも、あなたは愛してくれる？」という問いを静かに投げかけるラブバラード。
• Anyone by Demi Lovato
  自分を理解してくれる誰かを求めながら、孤独の中で声を上げる魂の叫び。
• Let Go by Frou Frou
  過去を手放し、“今”に身を委ねることの勇気と美しさを描いたエレクトロニック・バラード。
• River by Leon Bridges
  過ちを洗い流し、救いを求めるような祈りのバラード。愛の浄化力を歌う。
• Someone New by Hozier
  誰かを深く愛せないまま、“新しい誰か”を追い求める自分と向き合う哀しみと誠実さ。

6. “愛する覚悟は、静かな決意から生まれる”

「Ready To Love」は、JoJoがもう“誰かに愛されたい”ではなく、“誰かを愛したい”と思えるようになった瞬間を歌った、心の成熟の記録である。

それは、外に向かって叫ぶのではなく、
自分の内側で、そっとスイッチが入るような、密やかで誇らしい目覚め。

恋は、いつでも始められるものではない。
本当に人を愛せるのは、自分の傷と向き合い、
そのすべてを愛せるようになったときだ。

JoJoはそのことを、華やかではなく、
静かに、でも確かな声で伝えてくれる。
それは、今日から新しい自分になるための、最初の一歩のような歌なのだ。