アルバムレビュー:R&B Skeletons in the Closet by George Clinton

発売日: 1986年4月**
ジャンル: ファンク、Pファンク、エレクトロファンク、R&B


PファンクとR&Bの融合—商業的成功を狙ったClintonの挑戦

1986年リリースのR&B Skeletons in the Closetは、George Clintonのソロ名義としての4作目であり、80年代中盤のファンクとR&Bの交差点を象徴する作品である。

ParliamentとFunkadelicを率いてファンクシーンの頂点に立ったClintonだったが、80年代に入ると音楽業界の主流は急速に変化し、Pファンクの影響力も徐々に薄れつつあった。一方で、PrinceやZapp、CameoといったアーティストがエレクトロファンクやニューウェーブR&Bを駆使して新たなスタイルを確立し、ブラックミュージックの流れをリードしていた。

こうした状況を背景に、本作では従来のPファンクのサイケデリックな要素を抑え、より洗練されたR&Bとエレクトロファンクのスタイルを前面に押し出すことで、時代の流れに適応しようとした。シンセサイザーとデジタルプロダクションを駆使し、よりポップなファンクへと進化させる一方で、Clinton特有の風刺的なユーモアや社会批判を歌詞に散りばめたアルバムとなっている。


全曲レビュー

1. Hey Good Lookin’

アルバムのオープニングを飾る、キャッチーでリズミカルなR&Bファンクチューン。シンセサイザーのリフが特徴的で、クラブ向けのダンスグルーヴを持ちつつも、Pファンク特有のユーモアが詰まっている

2. Do Fries Go With That Shake?

本作の代表曲で、シングルカットされた楽曲。タイトルからしてClintonらしい皮肉とユーモアが溢れているが、サウンド的には80年代のR&Bファンクに寄せたメロディックなスタイルになっている。ファンクのグルーヴを保ちつつ、よりラジオフレンドリーな作りになっている点が特徴的。

3. Mix-Master Suite

ミッドテンポのエレクトロファンクトラックで、デジタルシンセが活躍する楽曲。Clintonのヴォーカルは抑えめで、よりサウンド重視のアプローチをとっている。1980年代のクラブミュージックやヒップホップのビートを意識したスタイルが見られる。

4. Electric Pygmies

サイケデリックな要素が強めに出た楽曲で、PファンクのDNAを残しながらも、エレクトロなビートと融合した異色のトラック。タイトルが示す通り、民族的なモチーフを抽象的に取り入れたアレンジが印象的。

5. Intense

80年代のR&Bとファンクのバランスを絶妙に取ったナンバー。ベースラインがシンプルながらも洗練されており、ダンサブルなビートが強調されている。

6. Cool Joe

スロージャム的なR&Bナンバー。従来のPファンクの爆発力というよりは、よりメロウでスムーズな雰囲気を持ち、当時のブラックコンテンポラリーミュージックに適応しようとした楽曲

7. Why Should I Dog U Out?

アルバムのラストを飾る楽曲で、スローテンポのR&Bファンク。ここでもシンセベースが重要な役割を果たし、リラックスしたグルーヴが漂う。George Clintonらしい言葉遊びも随所に見られる。


総評

R&B Skeletons in the Closetは、George Clintonが80年代のR&B市場を意識しながらも、Pファンクのエッセンスを維持しようとした作品である。シンセサイザーを前面に押し出したサウンドは、エレクトロファンクやニューウェーブR&Bの流れを汲んでおり、当時の主流の音楽トレンドに合わせた形となっている。

しかし、従来のPファンク特有のサイケデリックな要素やバンドアンサンブルの複雑さがやや抑えられているため、従来のファンからすると物足りなさを感じる部分もある。一方で、より広いリスナー層に向けたキャッチーな楽曲構成は、Clintonの音楽が持つ普遍性を証明するものでもある。

Do Fries Go With That Shake?」のようなポップな楽曲は、後のニュー・ジャック・スウィングやGファンクにも影響を与えたと考えられ、80年代後半以降のブラックミュージックの進化の中で、本作が果たした役割は小さくない


おすすめアルバム

  • Cameo – Word Up! (1986)
    • 80年代R&Bファンクの成功例。Pファンク的なグルーヴを受け継ぎながら、より商業的なサウンドを確立。
  • Zapp – Zapp III (1983)
    • Roger Troutmanによるトークボックスとエレクトロファンクの融合。George Clintonの本作と同じく、80年代のサウンド変革を象徴する。
  • PrinceParade (1986)
    • クラシックなファンクと80年代ポップの融合を示した作品で、R&B Skeletons in the Closetのスタイルと共鳴する部分が多い。
  • Bootsy Collins – What’s Bootsy Doin’? (1988)
    • Clintonの盟友Bootsy Collinsによる80年代型Pファンク。シンセサイザーを多用したエレクトロファンクのアプローチが見られる。
  • Dr. Dre – The Chronic (1992)
    • 90年代にPファンクをサンプリングし、Gファンクとして再構築した作品。George Clintonの影響が色濃く反映されている。
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