
発売日: 1971年1月11日
ジャンル: ブルースロック、ソウル、R&B
Janis Joplinの遺作にして最高傑作—魂の叫びが刻まれたロック史の名盤
1971年にリリースされたPearlは、Janis Joplinの生前最後のアルバムであり、彼女のキャリアの集大成とも言える作品である。本作は、1969年のI Got Dem Ol’ Kozmic Blues Again Mama!で試みたソウルフルなサウンドをさらに洗練させ、より完成度の高いブルースロックとR&Bの融合を実現したアルバムとなった。
Joplinは1969年にKozmic Blues Bandを解散し、新たにFull Tilt Boogie Bandを結成。彼らの演奏はBig Brother and the Holding Company時代の荒々しさとは異なり、タイトで洗練されたグルーヴを生み出している。このバンドとの一体感こそが、Pearlの完成度を大きく押し上げた要因の一つである。
しかし、アルバム制作中の1970年10月4日、Joplinはドラッグの過剰摂取により27歳で急逝。本作は彼女の死後にリリースされ、Janis Joplinの伝説を決定づける作品となった。
全曲レビュー
1. Move Over
Joplin自身が作詞作曲した、アルバムの幕開けにふさわしい力強いブルースロックナンバー。愛と自由の間で揺れる女性の心情を歌った歌詞と、彼女のエネルギッシュなヴォーカルが見事に融合している。バンドのグルーヴ感も最高。
2. Cry Baby
Garnet Mimms & The Enchantersのソウルナンバーをカバー。Joplinのソウルフルなシャウトが炸裂し、恋愛の痛みを叫ぶように歌い上げる圧巻のパフォーマンス。後のブルースロックシンガーたちにも大きな影響を与えた名曲。
3. A Woman Left Lonely
スローバラードで、Joplinの繊細な歌唱が光る。愛を失った女性の孤独を描いた歌詞が、彼女自身の人生と重なり、胸を打つ。Full Tilt Boogie Bandの優雅なアレンジも印象的。
4. Half Moon
アップテンポなロックナンバーで、ファンキーなリズムが特徴的。Joplinのヴォーカルはリズムと完璧にマッチし、パワフルかつグルーヴィーな演奏がアルバムの中でも際立つ。ライブ向きの楽曲。
5. Buried Alive in the Blues
Joplinが歌う予定だったインストゥルメンタル曲。彼女の死によりヴォーカルが録音されることはなく、無念の思いが込められた未完の楽曲として残された。バンドの演奏自体はタイトで、彼女が歌っていたらどうなっていたかを想像せずにはいられない。
6. My Baby
軽快なブルースロックで、Joplinの力強いヴォーカルが映える。彼女の音楽のルーツであるR&Bへの敬意を感じさせる一曲。
7. Me and Bobby McGee
本作最大のヒット曲であり、Janis Joplinの代表曲。Kris Kristoffersonが作曲したカントリー・バラードを、Joplinはブルースロック的なアレンジで情感たっぷりに歌い上げ、永遠の名曲へと昇華した。ラストのアカペラ部分は、彼女の圧倒的な表現力を示すものとなっている。
8. Mercedes Benz
Joplinがアカペラで歌った風刺的な楽曲。消費社会や物質主義への皮肉を込めつつも、彼女のユーモアが感じられる。この曲の録音が、彼女の最後のレコーディングとなった。
9. Trust Me
作曲はBobby Womack。シンプルなアレンジながら、Joplinの包み込むような歌声が印象的なソウルバラード。
10. Get It While You Can
ソウルの名曲をJoplin流に解釈した一曲。「今のうちに愛を手に入れろ」と力強く歌い上げるJoplinのボーカルは、まるで彼女の遺言のようにも聞こえる。アルバムを締めくくるにふさわしい感動的なナンバー。
総評
Pearlは、Janis Joplinの音楽的完成度を極限まで高めた傑作であり、彼女の魂の叫びが凝縮されたアルバムである。ソウル、ブルース、カントリー、R&Bといった彼女のルーツを見事に昇華し、シンガーとしての成熟が感じられる。
また、Big Brother and the Holding Company時代のサイケデリック・ロックの荒々しさとは異なり、Full Tilt Boogie Bandの洗練された演奏が、Joplinのボーカルをより引き立てている。特に「Me and Bobby McGee」「Cry Baby」「Get It While You Can」などは、彼女のキャリアを代表する楽曲となり、後世に語り継がれる名演となった。
しかし、このアルバムの完成を見届けることなく、Joplinは27歳という若さで世を去った。Pearlは単なるアルバムではなく、彼女の人生そのものが刻まれた作品であり、ロック史における最も感動的な遺作の一つとして、今も多くのリスナーの心を揺さぶり続けている。
おすすめアルバム
- Janis Joplin – I Got Dem Ol’ Kozmic Blues Again Mama! (1969)
- Pearlに至る前のソロデビュー作。よりブルース/ソウル色の強いアルバム。
- Big Brother and the Holding Company – Cheap Thrills (1968)
- Joplinの原点とも言えるアルバム。サイケデリック・ロックとブルースの融合を楽しめる。
- Aretha Franklin – Lady Soul (1968)
- Joplinが影響を受けたソウルシンガーの名盤。彼女の歌唱スタイルと比較すると面白い。
- Etta James – At Last! (1960)
- Joplinのブルース/ソウルのルーツを知るために必聴。
- Kris Kristofferson – Kristofferson (1970)
- 「Me and Bobby McGee」の作曲者によるオリジナルバージョンを収録したアルバム。
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- 「Me and Bobby McGee」の作曲者によるオリジナルバージョンを収録したアルバム。
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