発売日: 1994年3月3日
ジャンル: インダストリアル・ロック、ポストパンク、エクスペリメンタル・ロック
Pandemoniumは、Killing Jokeがインダストリアル・ロックとエクスペリメンタルなアプローチを大胆に融合させた9作目のスタジオアルバムである。1980年代からのダークなポストパンクの影響に加え、1990年代に隆盛したインダストリアルシーンへの適応も見せた作品で、バンドが新たな音楽的な進化を遂げたことを象徴している。本作は、フロントマンのジャズ・コールマンがエジプトでのミスティックな体験からインスパイアされており、アラビア音楽やエスニックなリズムがアルバム全体に散りばめられている。これにより、従来のダークでヘヴィなサウンドに加え、異国情緒やスピリチュアルな雰囲気が新たな彩りを添えている。
プロデュースにはバンド自身が携わり、エッジの効いたギターと重厚なベース、エレクトロニックなビートが融合し、圧倒的な迫力を持つサウンドスケープが展開されている。また、「Exorcism」や「Pandemonium」などの楽曲は、Killing Jokeの中でも特にエネルギッシュで攻撃的なトラックであり、ファンからも長年愛される定番曲となっている。Pandemoniumは、バンドの音楽的な再生と深化を象徴する作品であり、インダストリアル・ロックの名盤として今も高く評価されている。
トラックごとの解説
1. Pandemonium
アルバムのタイトル曲であり、バンドの代表曲の一つ。アラビア風のリズムとヘヴィなギターが絡み合い、混沌としたエネルギーが爆発する。ジャズ・コールマンの怒りに満ちたボーカルが、聴く者を圧倒する。
2. Exorcism
エスニックなパーカッションが印象的なトラックで、タイトル通り「悪魔払い」をテーマにしている。反復されるビートとダークなサウンドがトランス状態に誘い、Killing Jokeのミスティカルな側面が強く表れている。
3. Millennium
インダストリアル色が濃い、重低音の効いた力強いトラック。歌詞には近未来的なイメージが描かれており、人類の未来やテクノロジーの発展に対する危機感が込められている。シングルとしてもリリースされ、ファンに人気の一曲。
4. Communion
ヘヴィなギターリフとエレクトロニックなビートが融合したトラックで、サイケデリックでエクスペリメンタルな一面が強調されている。タイトルの「Communion(交わり)」が示す通り、精神的なつながりや集団意識をテーマにしている。
5. Black Moon
ミステリアスで深みのあるサウンドが特徴のトラック。シンプルながらも圧倒的な存在感があり、暗闇に包まれたような雰囲気がリスナーを引き込む。
6. Labyrinth
複雑なリズムとエスニックなサウンドが絡み合い、タイトル通り「迷宮」のような神秘的な雰囲気を持つ。反復的なビートが特徴で、リスナーを深いトランス状態へと誘う。
7. Jana
メロディアスで哀愁漂うトラックで、ジャズ・コールマンのエモーショナルなボーカルが光る一曲。抑制されたサウンドの中に切なさが感じられ、アルバム全体の雰囲気を和らげる役割を果たしている。
8. Whiteout
インダストリアルでエネルギッシュなトラックで、鋭いギターリフと攻撃的なビートが際立つ。雪嵐のような混沌としたエネルギーが詰まっており、アルバムの中でも特に力強いナンバー。
9. Pleasures of the Flesh
重厚なビートと歪んだギターが特徴的で、タイトル通り「肉体の快楽」をテーマにしている。エロティックでダークな雰囲気が漂い、Killing Jokeの挑発的な一面が表れている。
10. Mathematics of Chaos
アルバムの締めくくりを飾る壮大なトラックで、カオス理論をテーマにした実験的なサウンド。複雑なリズムとエレクトロニックな音が絡み合い、終末的なムードを残しながらアルバムを締めくくる。
アルバム総評
Pandemoniumは、Killing Jokeがインダストリアル・ロックとエスニック要素を融合させ、独自のスピリチュアルなサウンドを確立した傑作である。エジプトでの神秘体験にインスパイアされたジャズ・コールマンのビジョンがアルバム全体に色濃く反映され、アラビア音楽のリズムやエレクトロニックなビートがダークなサウンドに異国情緒を与えている。「Pandemonium」や「Millennium」などの代表曲は、Killing Jokeの革新性を象徴し、インダストリアル・ロックのシーンにおいても特に評価が高い。本作は、バンドが進化し続ける姿勢を見せた一枚であり、Killing Jokeのキャリアの中でも重要な位置を占める作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Psalm 69 by Ministry
インダストリアル・メタルの名盤で、激しいビートとヘヴィなギターが融合した一枚。Killing Jokeのインダストリアルなエネルギーが好きなリスナーに最適。
The Downward Spiral by Nine Inch Nails
ダークで複雑なインダストリアルサウンドが特徴のアルバムで、内省的でスリリングな要素がPandemoniumと共鳴する。
Songs of Faith and Devotion by Depeche Mode
エレクトロニックとロックの融合が美しい一枚で、Killing Jokeのシンセサウンドとエスニックなムードが好きな人におすすめ。
Broken by Nine Inch Nails
攻撃的なインダストリアルロックの傑作で、Killing Jokeのヘヴィで挑発的な一面が好きなリスナーにおすすめ。
Twitch by Ministry
インダストリアルのエレクトロニックな要素が強調された作品で、Killing Jokeのエスニックで実験的な音楽性に通じる要素が多い。
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