Pancakes for Dinner by Lizzy McAlpine（2020）楽曲解説

1. 歌詞の概要

“Pancakes for Dinner“は、アメリカのシンガーソングライターLizzy McAlpine（リジー・マカルパイン）が2020年にリリースしたデビューアルバム『Give Me A Minute』に収録された楽曲です。この曲は、恋心を抱いたまま言い出せずにいる“片想いのもどかしさ”と“もしもその想いを打ち明けられたら”という希望と恐れの混在した感情を、きわめて繊細な言葉で綴ったバラードです。

歌詞では、語り手が身近な日常の風景——パジャマ姿や雨上がりの道路、朝のパンケーキといった素朴な情景を通じて、想い人への深い親しみと愛情を静かに語ります。そしてそのたびに、**「あなたに“愛してる”って言いたいけど、怖くて言えない」**という気持ちがにじみ出てくる構造になっており、聴き手の心にもやさしく、しかし確かに残る“共感の温度”があります。

Lizzyのささやくような歌声とミニマルなアコースティックギターの伴奏によって、まるで手紙を読むような、あるいは心の声を盗み聞いているような親密さを感じる楽曲であり、彼女の魅力が最も自然体で現れた代表作のひとつです。

2. 歌詞のバックグラウンド

“Pancakes for Dinner“は、Lizzy McAlpineがバークリー音楽大学に在籍中、19歳のときに書いた楽曲として知られており、彼女のキャリア初期における自己表現の出発点とも言える作品です。ファンの間ではリリース以前からYouTubeやライブ動画で支持されており、“隠れた名曲”から“共感のバラード”へと成長を遂げた曲として、今もなお高い人気を誇ります。

この曲は、特定の恋人や状況というよりも、「誰にも言えないけれどずっと思っている気持ち」そのものをテーマにしています。日常の会話の中でふとこぼれそうになる「I love you（愛してる）」という言葉が、どうしても言葉にできず胸の内に留まってしまう——そのリアルな心の機微を、飾らず、直接的に、しかし痛いほど真っすぐに綴った点で、Lizzyのソングライティングが高く評価される要因となりました。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Lyrics:
I wanna eat pancakes for dinner
I wanna get stuck in your head
和訳：
「夕飯にパンケーキが食べたいの
あなたの頭の中に住みつきたいの」

Lyrics:
I wanna watch a TV show together
And when we’re under the weather
We can watch it in bed
和訳：
「一緒にテレビ番組を見たいな
風邪をひいたときは
ベッドで一緒に観ようよ」

Lyrics:
I’ll say I love you
Even though I don’t like to
和訳：
「“愛してる”って言うよ
本当は言うのが苦手だけど」

Lyrics:
I just want you to know
和訳：
「ただ、あなたに知っていてほしいの」

（※歌詞引用元：Genius Lyrics）

これらの歌詞は、大げさではないけれど確かな愛情を表現する一方で、「あなたに伝えたいけど、怖いから言えない」という未成熟さと誠実さが混在する、極めてリアルな感情描写になっています。

4. 歌詞の考察

“Pancakes for Dinner”は、日常の風景を通して語られる恋心という、Lizzy McAlpineの得意とするスタイルが際立った作品です。

✔️ 言えない「I love you」の重さ

この曲の一番の核は、「好きだという気持ちを、相手には伝えたい。でも、関係が壊れるのが怖くて言えない」という葛藤そのものにあります。語り手は、恋人未満の相手との親密な関係の中で、自分の気持ちをずっと心の奥にしまってきた。“I just want you to know”という静かな結びに、あらゆる未練と想いが込められています。

✔️ 日常風景の比喩的機能

「パンケーキ」「テレビ」「ベッド」「風邪」など、描かれるものはすべて日常的でありながら、それが語り手にとっての“理想の愛の形”を象徴しているのです。彼女が描いているのは、派手な恋ではなく、一緒にいるだけで満たされるような“ささやかな愛”。そしてそれは、誰しもがどこかで夢見たことのある風景でもあります。