発売日: 2016年4月8日
ジャンル: インディーロック、オルタナティヴロック、フォークロック
Frightened Rabbitの5作目『Painting of a Panic Attack』は、これまでの作品以上にダークで内省的なトーンを持つアルバムであり、フロントマンスコット・ハッチソンの個人的な感情が色濃く反映された作品である。バンドは、新たにザ・ナショナルのアーロン・デスナーをプロデューサーに迎え、より洗練されたサウンドと、陰鬱さが際立つ楽曲を完成させた。
本作は、スコットがロサンゼルスでの孤独感や疎外感と向き合う中で書き上げた歌詞が中心となっており、そのテーマは喪失、不安、孤独などの感情を描いている。バンドサウンドはより緻密になり、ピアノやシンセサイザーが多用されることで、これまで以上にアンビエントでシネマティックな雰囲気を持つ。
トラック解説
1. Death Dream
アルバムのオープニングを飾る静かで内省的な楽曲。ピアノとスコットのボーカルが中心で、不安と喪失感が歌詞に込められている。シンプルながらも感情を揺さぶる一曲。
2. Get Out
リードシングルで、キャッチーなサウンドとシリアスな歌詞が対照的な楽曲。不健全な関係から抜け出そうとする葛藤が描かれている。
3. I Wish I Was Sober
アルバムの中でも特に感情的な楽曲。アルコール依存に対する自己嫌悪と、それを克服したいという願望が歌詞に込められている。
4. Woke Up Hurting
エネルギッシュなリズムとメロディが特徴の楽曲。一見ポップに聞こえるが、不安感と内面的な苦悩がテーマとなっている。
5. Little Drum
繊細で静かな楽曲。ピアノと控えめなリズムが楽曲全体を支え、スコットの優しいボーカルが印象的。
6. Still Want to Be Here
疎外感と孤独をテーマにした楽曲で、複雑な感情が歌詞に込められている。エレクトロニカ的なアレンジが新鮮。
7. An Otherwise Disappointing Life
シンプルなギターリフとミニマルなアレンジが特徴のトラック。人生の虚無感と、それに立ち向かう希望の微かな兆しが感じられる。
8. Break
暗いトーンを持つバラードで、歌詞には壊れた関係とその後の苦悩が描かれている。感情的なボーカルが胸を締め付ける。
9. Blood Under the Bridge
力強いリズムセクションが特徴的な楽曲で、過去の後悔と和解をテーマにしている。ダイナミックな展開が聴きどころ。
10. 400 Bones
静かでメランコリックなトラック。儚い愛とその喪失を描いた歌詞が、アルバム全体のテーマを深く掘り下げている。
11. Lump Street
エネルギッシュなギターと力強いボーカルが印象的。アルバムの中でも比較的アップテンポな楽曲で、暗いテーマの中に少しの光を感じさせる。
12. Die Like a Rich Boy
アルバムを締めくくる壮大なバラード。ピアノとストリングスを中心としたアレンジが美しく、死と生の儚さを歌った歌詞が感動的な余韻を残す。
アルバム総評
『Painting of a Panic Attack』は、Frightened Rabbitのディスコグラフィの中で最も深く内省的な作品であり、スコット・ハッチソンの詩的な歌詞と感情的なボーカルが際立つアルバムである。新たに加わったエレクトロニカやアンビエント的な要素が、これまでのギターベースのサウンドに新鮮さを加えつつも、バンドの本質的なエモーショナルな魅力は損なわれていない。ダークなテーマを持ちながらも、アルバム全体には希望の光が差し込み、リスナーに深い感動を与える一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Trouble Will Find Me by The National
深い感情を描いた歌詞と洗練されたアレンジが特徴のアルバム。『Painting of a Panic Attack』のダークなトーンに共通点がある。
Sleep Well Beast by The National
アーロン・デスナーがプロデュースを手がけたもう一つの名作。アンビエントな要素が『Painting of a Panic Attack』と似ている。
Carrie & Lowell by Sufjan Stevens
内省的で感情的なテーマを描いたアルバム。個人的な苦悩を繊細に表現する点で共鳴する。
High Violet by The National
緻密なアレンジと感情的な歌詞が楽しめるアルバム。『Painting of a Panic Attack』のファンにおすすめ。
Hospice by The Antlers
喪失と痛みをテーマにした深く感動的なアルバム。『Painting of a Panic Attack』の持つ感情的な深さと共通している。
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