
発売日: 2008年9月30日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エモ、ポストハードコア
メジャー進出と進化——Anberlinが描く新たなステージ
2008年のNew Surrenderは、Anberlinにとってメジャーレーベル(Universal Republic Records)移籍後初のアルバムであり、より洗練されたプロダクションと幅広い音楽性を持つ作品となった。
前作Cities(2007年)で、彼らはエモーショナルかつ壮大なロックサウンドを完成させたが、本作ではさらにアリーナロック的な要素を取り入れ、よりキャッチーかつダイナミックな楽曲が増えている。
プロデューサーにはNeal Avron(Fall Out Boy、Yellowcard、Linkin Park)を迎え、音の厚みやメロディの緻密さが向上。さらに、バンドの代表曲の一つ「The Feel Good Drag」がリメイクされ、ビルボード・オルタナティブ・ソング・チャートで1位を獲得するなど、Anberlinがより広い層にアプローチしたアルバムとなった。
メジャー進出に伴う変化がありながらも、バンドの持つエモーショナルな核はそのままに、よりスケールの大きなサウンドへと進化した作品である。
全曲レビュー
1. The Resistance
アルバムの幕開けを飾る、攻撃的でエネルギッシュな楽曲。ヘヴィなギターリフとスティーブン・クリスチャン(Vo)のシャウトが印象的で、反抗と決意を感じさせる、アルバムのスタートにふさわしい一曲。
2. Breaking
よりポップでキャッチーなオルタナティブ・ロック。エモーショナルな歌詞とメロディアスなサビが印象的で、Anberlinの持つメロディセンスの高さが光る。
3. Blame Me! Blame Me!
軽快なリズムと疾走感のあるギターが特徴的な楽曲。シンプルながらも、スティーブン・クリスチャンのボーカルが楽曲に深みを与えている。
4. Retrace
アルバムの中でも特に感傷的なバラード。「過去を振り返り、間違いをやり直したい」というテーマを持ち、ノスタルジックなメロディが胸を打つ。
5. Feel Good Drag
2005年のアルバムNever Take Friendship Personalに収録されていた楽曲をリメイクし、よりヘヴィでダイナミックなサウンドに仕上げたバージョン。このバージョンが大ヒットし、ビルボード・オルタナティブ・ソング・チャートで1位を獲得。バンドの代表曲として今なお語り継がれている。
6. Disappear
シンセのリフレインが特徴的な楽曲で、モダンなアプローチが光る。静と動のコントラストが際立つ一曲。
7. Breathe
アコースティックギターを基調とした、美しいバラード。スティーブン・クリスチャンの温かみのある歌声が際立ち、アルバムの中で最もエモーショナルな瞬間を作り出している。
8. Burn Out Brighter (Northern Lights)
爽快感のあるアップテンポな楽曲。タイトルが示すように、「より明るく燃え尽きる」ことをテーマにした歌詞が、前向きなメッセージを伝えている。
9. Younglife
ポップパンク的な軽快さがあり、アルバムの中では異色の楽曲。若さの無邪気さや衝動を描いた、ライブで盛り上がるタイプのナンバー。
10. Haight St.
サンフランシスコのHaight Streetをテーマにした楽曲で、自由な雰囲気と爽やかなメロディが印象的。
11. Soft Skeletons
ダークで内省的な楽曲。歪んだギターサウンドと、切なさを感じさせるボーカルが絶妙にマッチしている。
12. Miserabile Visu (Ex Malo Bonum)
アルバムを締めくくる壮大なトラック。ラテン語で「悪の中の善」を意味するタイトルが示すように、希望と絶望の間を揺れ動く哲学的なテーマを持った楽曲。7分を超えるスケール感のあるエンディングが印象的。
総評
New Surrenderは、Anberlinがメジャー進出後の新たなサウンドを模索しつつも、バンドの持つエモーショナルな核を保ち続けた作品である。
「Feel Good Drag」の成功により、バンドはさらに広い層のリスナーに届くこととなり、アリーナロック的なアプローチを取り入れることで、よりスケールの大きな音楽へと進化した。一方で、「Retrace」「Breathe」「Miserabile Visu」のような楽曲では、バンドの持つ繊細なエモーショナルな側面がしっかりと活かされている。
アルバム全体として、前作Citiesの持っていた壮大でシリアスなトーンに比べると、よりキャッチーでポップな要素が増えているが、その分楽曲の幅が広がり、バンドとしての成長が感じられる作品となっている。
New Surrenderは、Anberlinのキャリアにおいて「進化」と「拡張」を示した重要なアルバムであり、メジャーシーンでの成功への第一歩となった作品である。
おすすめアルバム
- Jimmy Eat World – Chase This Light (2007)
メロディアスで洗練されたオルタナティブ・ロックが、本作と共通。 - Paramore – Brand New Eyes (2009)
ポップパンク的なエネルギーとエモーショナルな歌詞が本作と共鳴する。 - 30 Seconds to Mars – This Is War (2009)
スケールの大きなアリーナロック的なアプローチが似ている。 - Fall Out Boy – Folie à Deux (2008)
ポップでありながらも深みのある楽曲が、本作と共通点を持つ。 - Thrice – Beggars (2009)
よりオルタナティブ・ロック寄りのアプローチだが、エモーショナルなサウンドが本作とリンク。
コメント