発売日: 1977年9月30日
ジャンル: パブロック、パンクロック、ニューウェーブ
New Boots and Panties!!は、イアン・デューリーのデビューアルバムであり、パンクムーブメントの最中にリリースされた、独特のスタイルを持つ名作だ。パンクロック、ニューウェーブ、そしてパブロックを融合させたこのアルバムは、デューリーのユニークなキャラクターと機知に富んだ歌詞が際立っている。彼の独特な語り口調と風刺的な歌詞は、イギリスの労働者階級の生活や、社会の周縁にいる人々の物語を描き出しており、シリアスなテーマをユーモアや皮肉で包み込んでいる。ファンキーでダンサブルなビートとシンプルなギターサウンドが、全体を通してエネルギッシュに響き、個性的なアルバムに仕上がっている。
各曲ごとの解説:
- Wake Up and Make Love with Me
ファンキーなリズムとセクシーな雰囲気が漂うオープニングトラック。デューリーの語りかけるようなボーカルが、恋愛と性的な欲望をテーマにした歌詞と共に、ユーモラスかつ挑発的に展開される。シンプルなベースラインが、全体のグルーヴを支えている。 - Sweet Gene Vincent
ロックンロールのレジェンド、ジーン・ヴィンセントへのオマージュとして書かれた曲。懐かしさと哀愁が漂うメロディとともに、デューリーは敬意と共に彼の影響を讃えている。曲中でテンポが変わる構成が、独特のダイナミズムを生み出している。 - I’m Partial to Your Abracadabra
アップテンポなファンキートラックで、遊び心のある歌詞が特徴的。愛と魔法をテーマにした、軽快でキャッチーな曲調が印象に残る。シンプルな楽器編成ながらも、デューリーのカリスマ性が際立つ楽曲だ。 - My Old Man
イギリスの労働者階級の父親像を描いた感傷的な楽曲。ピアノの旋律が曲全体に温かみを与え、デューリーのノスタルジックな歌詞が感情豊かに展開される。彼自身の父親との関係性が反映された、パーソナルな一面が感じられる。 - Billericay Dickie
コミカルなキャラクターソングで、エセックス出身のプレイボーイ「ディッキー」を描いた曲。ウィットに富んだ歌詞とリズミカルなビートが、物語性のあるユニークなトラックに仕上がっている。デューリーの語りのようなボーカルスタイルが際立つ。 - Clevor Trever
誇張された自己陶酔的なキャラクター「Trever」を題材にした、風刺的な楽曲。中毒性のあるリフと、テンポの遅いグルーヴが特徴。愚かな男の自慢話を皮肉たっぷりに描いており、デューリーのユーモアが全開だ。 - If I Was With a Woman
性欲や性的な欲望をテーマにした曲で、シンプルなギターリフとファンキーなビートが、デューリーの露骨で遊び心のある歌詞を支えている。直截的でありながらも、軽快なリズムがその過激さを和らげている。 - Blockheads
激しいパンクロックのエネルギーが詰まった楽曲で、従順な労働者階級への嘲笑と批判が歌われている。攻撃的なギターリフとデューリーの挑発的なボーカルが、アルバム全体にアグレッシブな勢いを与えている。 - Plaistow Patricia
暴力的で過激な内容を含んだ曲で、労働者階級の過酷な現実を露骨に描いている。叫ぶようなボーカルとシンプルなパンクサウンドが、強烈なインパクトを与える。デューリーのダークなユーモアが際立つ一曲。 - Blackmail Man
アルバムを締めくくるスピーディーな楽曲で、差別や社会的不公正をテーマにした曲。パンクロックの短く鋭いエネルギーが詰まっており、怒りと批判の姿勢がストレートに表現されている。
アルバム総評:
New Boots and Panties!!は、イアン・デューリーの独特なキャラクターと風刺的な視点が全開のアルバムであり、パンクとパブロックの間を揺れ動く多彩なサウンドが魅力だ。彼の語りかけるようなボーカルと、ウィットに富んだ歌詞が労働者階級の生活や社会の不条理を描写し、同時にユーモラスに捉えるスタイルは非常に個性的だ。ファンキーなリズムとシンプルなギターサウンドが、デューリーのメッセージを際立たせており、パンクムーブメントの中でも異彩を放つ存在感を示している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- London Calling by The Clash
イギリスの社会問題や労働者階級の現実をパンクロックに乗せて描いたアルバム。デューリーの風刺的な視点と同様に、ザ・クラッシュは鋭い政治批判を展開している。 - The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars by David Bowie
キャラクターを通じて社会を風刺するスタイルが共通している。デヴィッド・ボウイのジギー・スターダストも、デューリーのユーモラスなキャラクターソングと重なる部分が多い。 - Rattus Norvegicus by The Stranglers
パンクのエネルギーに加えて、皮肉な歌詞とダークなユーモアが詰まったアルバム。イアン・デューリーのファンにとっても、ストレートなパンクサウンドと社会批判が魅力的に映るはず。 - Elvis Costello by My Aim is True
エルヴィス・コステロもデビュー当時、風刺的な歌詞とシンプルなパブロックサウンドで脚光を浴びたアーティスト。デューリーのファンはコステロの知的な歌詞とパンクロックの精神に共感できるだろう。 - Do It Yourself by Ian Dury & The Blockheads
New Boots and Panties!!を気に入ったリスナーには、続くアルバムDo It Yourselfもおすすめ。デューリーのユーモアと機知に富んだ歌詞は健在で、より洗練されたサウンドが楽しめる。
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