アルバムレビュー:New Adventures in Hi-Fi by R.E.M.

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1996年9月9日
ジャンル: オルタナティヴロックアートロックエクスペリメンタルロック、アメリカーナ


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概要

『New Adventures in Hi-Fi』は、R.E.M.が1996年にリリースした10作目のスタジオ・アルバムであり、“移動と変化”を主題としたロードムービー的作品にして、ピーク期のR.E.M.が最後に残した最大の野心作である。

本作の大半は、1995年の『Monster』ツアー中に録音されており、サウンドチェックやホテルの部屋、ライブの合間といった“非スタジオ環境”での録音を活かした実験的かつドキュメンタリー的な手法がとられた。
その結果、スタジオ作品でありながらも、**ツアー中の熱気、疲労、疎外感、覚醒といった“動きのなかの感情”**がリアルに封じ込められている。

『Monster』のノイジーなギターサウンドを受け継ぎつつも、本作はそれを解体し、よりスケール感と多様性を増した音楽性へと展開。
アメリカーナ的要素、ポストパンクの影、フォークの影法師が交錯するサウンドは、90年代オルタナティヴのひとつの終着点として機能している。

本作を最後に、バンドの創設メンバーであるドラマーのビル・ベリーが脱退。
その意味でも『New Adventures in Hi-Fi』は、黄金時代のR.E.M.最後の大作として位置づけられる。


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全曲レビュー

1. How the West Was Won and Where It Got Us

ジャジーなピアノとささやくようなボーカルで幕を開ける、都会の虚無を描いたナンバー。
“西部開拓”の物語が、皮肉と諦念を帯びた言葉で語り直され、歴史と自己の距離を測るような詩的な導入。

2. The Wake-Up Bomb

ラウドで直情的なグラムロック・スタイル。
“爆弾のような目覚め”という比喩を用いて、自己認識の混乱と不安定なナルシシズムを叫ぶ。
『Monster』の攻撃性を引き継いだ一曲。

3. New Test Leper

メロウなギターとストリングスに乗せて、“新たな試練のらい病者”と名乗る語り手が、世間の偽善を見透かす。
宗教的モチーフと社会批判が交差する、現代の寓話的ロック

4. Undertow

重厚なギターが主導する、陰鬱なエネルギーに満ちたロックナンバー。
「深みに引き込まれる」ような不安定さが、人生の裂け目や内面の暴力を暗示する。

5. E-Bow the Letter(feat. Patti Smith)

パティ・スミスをゲストに迎えた、呟くような詩とドローン的サウンドが交錯する名曲。
ロックの伝統と詩の精神が融合したこの曲は、旅の孤独と芸術家の孤独が重なる瞬間である。

6. Leave

サイレンのようなシンセとドローンギターが続く、約7分にわたる実験的トラック。
逃げたい衝動と追い詰められた心理状態が音そのものに反映され、R.E.M.屈指の異形の楽曲に仕上がっている。

7. Departure

勢いのあるライブ収録のロックチューン。
“出発”という語が象徴するように、束の間の解放感と永遠に旅を続けることの代償を描く。

8. Bittersweet Me

シングルとしてもヒットした、哀愁漂うミディアムテンポのロック。
「僕はどこにでもいて、どこにもいない」──この不在感のポップさが、R.E.M.の真骨頂でもある。

9. Be Mine

静かな恋愛の幻想を、ほぼ一人語りで歌うバラード。
抑制されたピアノとギターが、片想いの空虚と美しさを切り取る。

10. Binky the Doormat

奇妙なタイトルとヘヴィなサウンド。
パーソナルな不安と暴力的な衝動が渦巻く、緊張感の高いトラック。

11. Zither

インストゥルメンタルに近い、ミニマルでフォーキーな小曲。
ツィターという楽器を使った異国情緒が、旅の途中のひとときを思わせる。

12. So Fast, So Numb

感情の麻痺と依存をテーマにした、ギターロックの佳曲。
「君は速すぎて、もう何も感じない」──タイトルが全てを物語る。

13. Low Desert

“砂漠の底”という風景が、そのままサウンド化されたような乾いたナンバー。
アメリカーナ的な情景と自己崩壊のメタファーが融合する。

14. Electrolite

アルバムのラストを飾る美しいピアノバラード。
「20世紀、さようなら」と歌われるこの曲は、時代と自分自身への別れの歌であり、ベリー脱退前のR.E.M.の終章として完璧なフィナーレ。


総評

『New Adventures in Hi-Fi』は、旅するバンドが、動きの中で見つけた感情と断片を“そのまま作品化した”記録音楽である。
そこには完璧な設計ではなく、偶然と疲労、即興と幻滅、希望と風景がすべて詰まっている。

このアルバムは、ツアーという非日常を通じて“場所と感情の地図”を描いたロードアルバムであり、
同時に、バンド内の変化や時代の節目を敏感に映し出した1990年代のアメリカ文化の鏡像でもある。

音楽的には、これまでの集大成というより、R.E.M.が積み重ねた“対立する価値観の編集”の到達点といえる。
静と動、詩と騒音、公共と私性、それらがこのアルバムの中で交わり、崩れ、また立ち上がる。

商業的には前作ほどのヒットではなかったが、リスナーと批評家の間での評価は高く、
現在では“R.E.M.の隠れた最高傑作”と称されることも少なくない。


おすすめアルバム(5枚)

  • Wilco / Being There
     アメリカーナと実験精神を融合したロードアルバム的二枚組。R.E.M.の旅情と響き合う。

  • Patti Smith / Gone Again
     『E-Bow the Letter』の共演者でもある彼女の、喪失と祈りの作品。精神性の深度が共通。

  • Radiohead / OK Computer
     “動く人間”が感じる不安と孤立の構図を、異なるアプローチで描いた同時代的作品。

  • Bruce Springsteen / Nebraska
     ツアー中の簡易録音という制作背景、孤独な旅の視点が本作と重なる。

  • Yo La Tengo / I Can Hear the Heart Beating as One
     多彩な音楽性とロードムードを感じさせる、内省的かつ実験的な90年代インディの名盤。


制作の裏側

録音の多くは、1995年の『Monster Tour』中にサウンドチェックやホテルの部屋で行われた
一部はライブのライン録音を使用し、あとからオーバーダブされたものもある。
この“旅の中で曲を作る”という方法は、ロックバンドとしての原点回帰であると同時に、
“完璧さよりも瞬間の真実”を重んじるR.E.M.の姿勢を示していた。

また、メンバーの健康不安(ビル・ベリーの脳動脈瘤)を乗り越えて制作されたという意味でも、
このアルバムは**限界の中で生まれた“前進のドキュメント”**なのである。

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