
発売日: 2005年2月1日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エモ、ポストハードコア
激情と洗練の融合——Anberlinが確立したエモーショナル・ロックの美学
Anberlinの2ndアルバムNever Take Friendship Personalは、デビュー作のエネルギッシュなポップパンク・サウンドを昇華し、より洗練されたオルタナティブ・ロックへと進化した作品である。
バンドのシグネチャーとも言えるエモーショナルなメロディ、ダイナミックなギターサウンド、スティーブン・クリスチャン(Vo)の力強く伸びやかな歌声が全面に押し出され、キャッチーながらも重厚なサウンドが特徴的。
タイトルが示すように、本作では友情や人間関係の痛み、喪失、裏切りといった感情がテーマとなっており、全体を通して感傷的かつドラマチックな雰囲気が漂う。本作からシングルカットされた「Paperthin Hymn」や「The Feel Good Drag」は、Anberlinの代表曲として長年愛されることとなった。
全曲レビュー
1. Never Take Friendship Personal
アルバムのタイトル曲であり、オープニングを飾る楽曲。エモーショナルなギターリフとアグレッシブなドラムが炸裂し、バンドの進化を強く感じさせる。人間関係の脆さと距離感を描いた歌詞が印象的。
2. Paperthin Hymn
本作のハイライトの一つであり、Anberlinの代表曲。メロディアスなギターと、スティーブン・クリスチャンの感情を吐き出すようなボーカルが際立つ。歌詞は「愛する人を失う痛み」をテーマにしており、聴く者の心に深く響く。
3. Stationary Stationery
アップテンポでポップな要素を持ちつつ、エモの持つ情感をしっかりと表現した楽曲。キャッチーなメロディが印象的で、アルバムの中でも比較的軽快な雰囲気を持つ。
4. The Feel Good Drag
Anberlinの代表曲の一つであり、後に2008年のアルバムNew Surrenderで再録され、バンド初のビルボードチャート入りを果たした楽曲。ヘヴィなギターリフとダークな歌詞が特徴的で、バンドのよりハードな側面を際立たせている。
5. Audrey, Start the Revolution!
シンプルなコード進行と力強いボーカルが印象的なロックナンバー。リリックの内容は抽象的ながら、若者の反抗心や変化を求めるメッセージが込められている。
6. A Day Late
本作の中でも特にポップでキャッチーな楽曲。「もう遅すぎる」という意味のタイトル通り、終わってしまった恋や取り戻せない過去をテーマにした歌詞が切ない。リフレインするメロディが耳に残る一曲。
7. The Runaways
ギターのクリーンなアルペジオと、スティーブン・クリスチャンの繊細なボーカルが際立つ楽曲。タイトルが示すように、逃避や喪失をテーマにした内容。
8. Time & Confusion
リズミカルなギターと明るめのメロディが特徴的な楽曲。過去と現在、未来を見つめながら、時間の経過とともに変化する人間関係を描いたリリックが印象的。
9. The Undeveloped Story
疾走感のあるサウンドが心地よく、アルバムの中でも比較的軽快なロックナンバー。バンドの持つメロディアスな側面が全面に押し出されている。
10. Sing Me to Sleep
バラードに近い楽曲で、スティーブン・クリスチャンの感傷的なボーカルが際立つ。アコースティックな要素が加わり、アルバムのクライマックスに向かう静けさを演出する。
11. Dance, Dance Christa Päffgen
7分を超える壮大なラストトラック。静かに始まり、徐々に感情の高まりとともに激しくなる展開が印象的。タイトルはドイツ出身のシンガー・ソングライターNico(本名:Christa Päffgen)へのオマージュとも言われている。
総評
Never Take Friendship Personalは、Anberlinがバンドとしてのアイデンティティを確立し、エモとオルタナティブ・ロックの間で独自の地位を築いた重要なアルバムである。
デビュー作のBlueprints for the Black Marketが持っていたラフなエネルギーをより洗練させ、エモーショナルな歌詞とキャッチーなメロディ、ヘヴィなギターサウンドのバランスを高次元で実現。特に「Paperthin Hymn」「The Feel Good Drag」「A Day Late」は、バンドの代表曲として今なお愛され続けている。
歌詞のテーマも深く、タイトルが示すように友情や人間関係の終焉、失ったものへの未練といったエモ的な感情が色濃く表現されている。そのため、本作は単なるポップパンクやエモのアルバムではなく、より成熟した視点を持ったロック作品と言える。
このアルバムによって、Anberlinはエモシーンの中で確固たる地位を築き、続くCities(2007年)でさらにその音楽性を発展させることとなる。本作は、Anberlinのファンならずとも、2000年代のエモ/オルタナティブ・ロックを知る上で欠かせない一枚である。
おすすめアルバム
- Jimmy Eat World – Futures (2004)
メロディアスなオルタナティブ・ロックとエモの要素が、本作と共鳴する。 - Taking Back Sunday – Where You Want to Be (2004)
感情的なボーカルとポストハードコア的なサウンドが共通点を持つ。 - Hawthorne Heights – The Silence in Black and White (2004)
2000年代のエモシーンにおける象徴的な作品で、本作と似たドラマチックな展開を持つ。 - Mae – The Everglow (2005)
エモーショナルなメロディとストーリー性のあるアルバム構成が共通する。 - Underoath – They’re Only Chasing Safety (2004)
よりスクリーモ寄りだが、Anberlinと同じシーンで成長したバンドとして関連性が高い。
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