1. 歌詞の概要
『Monsters』は、Timefliesが2014年に発表したアルバム『After Hours』の収録曲であり、ポップ・デュオである彼らが持つ多面的な音楽性の中でも、特にダークで感情的な側面を前面に押し出したナンバーである。タイトルの“Monsters(モンスターたち)”は、比喩的に「心の中に潜む恐れ」や「トラウマ」、「内なる闇」などを指しており、楽曲全体が個人的な葛藤や不安との対峙をテーマにしている。
この楽曲の語り手は、自分自身の中にあるコントロールできない感情や衝動に向き合い、それを「モンスター」と呼ぶことで、その存在を可視化している。恋愛の破綻、依存、喪失、あるいは心の不安定さといった要素が複合的に描かれ、「君がいなくなった後に現れる“モンスター”」という形で感情が表現されている。
これまでのTimefliesが得意とする、軽快でダンサブルなラブソングとは異なり、『Monsters』では暗く深いテーマを内包しながらも、エレクトロニックなサウンドによってその感情を洗練されたかたちで提示している。そうした音と詩のコントラストが、この楽曲の最大の魅力である。
2. 歌詞のバックグラウンド
TimefliesのCal Shapiro(ボーカル)とRob Resnick(プロデューサー)は、ユーモアやウィットに富んだポップセンスを武器に、明るくポジティブな楽曲で人気を集めてきた。だが、『After Hours』というアルバムは、より個人的で成熟した内容が多く、その中でも『Monsters』は特に感情の深部に迫る異色作と言える。
この楽曲の構成は、静かなピアノイントロから始まり、徐々にビートが重層的になっていくスタイルを取りながら、サビで爆発的な感情の吐露がなされるというダイナミックな展開を持っている。歌詞においても「喪失と内省」「記憶と悪夢」「依存と逃避」といった複雑なテーマが交錯しており、シンプルなラブソングでは収まらない心理描写がなされている。
特に注目すべきは、モンスターという比喩の扱い方だ。子供時代のベッドの下に潜むような“想像上の恐怖”ではなく、成長した今だからこそ直面する“現実的な不安”や“心の闇”として描かれており、そのメタファーが歌詞全体に深みと余白を与えている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
They only come out at night
あいつらは夜になると現れるAnd they only come when you’re gone
君がいなくなったときだけ姿を見せる
この冒頭のラインは、喪失と孤独が心の奥底にある“モンスター”を呼び覚ますという構造を象徴している。夜という時間設定も、不安と内省を強調する。
The monsters under my bed
ベッドの下に潜むモンスターたちWon’t let me sleep again
また眠らせてくれない
ここでは、眠れない夜=過去への未練や自己否定といった感情のメタファーとしての“モンスター”が描かれている。非常に詩的でありながら、共感しやすい情景だ。
I’m scared to be alone
一人になるのが怖いBut I’m even more afraid to be with you
でも君と一緒にいるのはもっと怖い
この矛盾した感情の告白は、愛と恐れ、依存と逃避のせめぎ合いを端的に表している。複雑な恋愛関係の本質を突く鋭いラインである。
引用元:Genius – Timeflies “Monsters” Lyrics
4. 歌詞の考察
『Monsters』という楽曲は、文字通りの“怪物”ではなく、「心の中に潜む恐怖や傷跡」が実体を持って襲いかかる様子を描いた内面的な歌である。その“モンスター”は、恋人を失った後にやってくる孤独であり、ふとした瞬間に押し寄せてくる自己嫌悪であり、あるいは誰かと一緒にいることで湧いてくる不安でもある。
とくに印象的なのは、愛と恐れが常に背中合わせで語られる点だ。好きだからこそ一緒にいたい、でも一緒にいることで壊れていくような恐怖がある。その矛盾をまっすぐに描くことによって、Timefliesは“感情のグレーゾーン”を捉えることに成功している。
また、曲全体の構成にも注目したい。最初は静かに始まり、サビで感情が爆発するという構造は、「抑え込んできた感情が、ある瞬間に制御不能になる」という心理の展開と呼応している。感情の蓄積と噴出、それを音楽でトレースする巧みさが、この楽曲を一段と印象深いものにしている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Demons by Imagine Dragons
「心の中の悪魔」をテーマにした力強いポップロック。比喩表現と内省が『Monsters』と近い。 - In My Veins by Andrew Belle
失恋と孤独を美しいメロディで描いた楽曲。感情の余白が共通する。 - The A Team by Ed Sheeran
痛みや社会とのズレを繊細に描くアコースティックナンバー。感情の奥行きが重なる。 - Youth by Daughter
不安定さ、喪失感、感情の鋭さを繊細に綴ったインディーポップ。モンスターの比喩が直接的ではないが、感情の質感が近い。
6. モンスターは“心の声”かもしれない
『Monsters』という楽曲の価値は、その中に描かれる“恐れ”を否定するのではなく、共存しようとする姿勢にある。恐怖や不安は、生きている限り誰の心にも存在する。それを“モンスター”というわかりやすくも深い象徴に置き換えることで、Timefliesは「闇とどう向き合うか」を静かに、しかし真摯に問いかけてくる。
また、この曲は「一人になるのが怖い」人にも、「誰かといるのが怖い」人にも共通して届く感情を持っている。愛、恐怖、孤独、記憶——それらはすべてモンスターになりうるが、同時に私たちの一部でもある。
『Monsters』は、傷つくことを恐れるすべての人に向けて、「その気持ちはおかしくない」と肯定してくれる、優しくも鋭い“心の鏡”のような楽曲だ。
歌詞引用元:Genius – Timeflies “Monsters” Lyrics
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