Medicine by Daughter(2011)楽曲解説

Spotifyジャケット画像

1. 歌詞の概要

“Medicine” は、イギリスのインディーフォークバンド Daughter(ドーター)が2011年にリリースしたEP The Wild Youth に収録された楽曲 で、バンドの中でも特に切なく、感情的なバラードのひとつです。

この楽曲のテーマは、自己破壊、依存、そして癒されることへの願望 に焦点を当てています。
タイトルの「Medicine(薬)」は、比喩的な意味を持ち、精神的な痛みを麻痺させるための手段としての薬物やアルコール依存を示唆する一方で、人間関係や愛が持つ「癒し」の力についても暗示 しています。

エレナ・トンラ(Elena Tonra)の透き通るようなボーカルと、リバーブのかかったギター、ミニマルなサウンドスケープが、楽曲の持つ悲しみと儚さを際立たせている のが特徴です。

2. 歌詞のバックグラウンド

Daughter は、エレナ・トンラを中心にロンドンで結成されたインディーバンドで、彼らの音楽はフォーク、ポストロック、アンビエントの要素が融合した独自のサウンド を持っています。

“Medicine” は、エレナ・トンラ自身の過去の経験や、彼女が感じた孤独や痛みを反映した楽曲であり、アルコールや薬物依存、そしてその中での自己破壊的な行動をテーマにしている と考えられます。
この曲の歌詞は、聴く人によってさまざまな解釈が可能ですが、「痛みを紛らわせるために依存するもの」と、「本当の意味での癒し」の違いを描いている とも取れます。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、“Medicine” の印象的な歌詞を一部抜粋し、日本語訳とともに紹介します。

[Verse 1]
“Pick it up, pick it all up”
(拾い上げて、全部拾い上げて)

“And start again”
(そして、もう一度始めよう)

“You’ve got a second chance”
(君には二度目のチャンスがある)

“You could go home”
(家に帰ることもできる)

“Escape it all, it’s just irrelevant”
(すべてを逃れよう、それは取るに足らないことだから)

[Chorus]
“It’s just medicine”
(それはただの薬だから)

“It’s just medicine”
(それはただの薬だから)

[Verse 2]
“You could still be what you want to”
(君はまだ、なりたいものになれるよ)

“What you said you were when you met me”
(僕と出会ったとき、君が言っていたあの姿に)

“You’ve got a warm heart, you’ve got a beautiful brain”
(君には温かい心がある、そして美しい頭脳がある)

“But it’s disintegrating”
(だけど、それは崩れかけている)

※ 歌詞の引用元: Genius.com

4. 歌詞の考察

“Medicine” の歌詞は、自己破壊的な行動と、その中での救済を求める気持ち を描いています。

冒頭の「Pick it up, pick it all up(拾い上げて、全部拾い上げて)」というラインは、
何かを失い、崩れかけた人生を立て直そうとする主人公の姿を示唆しています。

また、「You’ve got a second chance, you could go home(君には二度目のチャンスがある、家に帰ることもできる)」というフレーズは、
依存や破滅的な生活から抜け出す可能性があることを示唆しているものの、どこか諦めのような感情も漂っています。

It’s just medicine(それはただの薬だから)」というリフレインは、
薬(medicine)が何かを癒すものではなく、単なる一時的な逃避手段でしかないことを暗示 していると考えられます。

そして、「You’ve got a warm heart, you’ve got a beautiful brain(君には温かい心がある、美しい頭脳がある)」というフレーズは、
主人公(または歌われている相手)が本来持っている素晴らしい要素を認めつつも、「But it’s disintegrating(でも、それは崩れかけている)」というラインが続くことで、
依存や自己破壊によって、それらが失われてしまうことへの悲しみや無力感 を表しています。

この楽曲は、単なる「薬物依存」や「アルコール依存」を歌ったものではなく、人間が痛みから逃れるために頼るものが、本当に癒しになるのか? という問いを投げかけています。
同時に、苦しみを抱える人を優しく包み込むような歌詞とメロディ で、多くのリスナーに寄り添う楽曲となっています。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

“Medicine” のような 感情的で、内省的なインディーフォーク/アンビエントロック が好きな人には、以下の楽曲もおすすめです。

  • “Youth” by Daughter – 青春の痛みと喪失をテーマにした、Daughter の代表曲。

  • Smother” by Daughter – 破壊的な恋愛の終焉と喪失感を描いた楽曲。

  • “Breathe Me” by Sia – 孤独と痛みをテーマにしたエモーショナルな楽曲。

  • “Oblivion” by Bastille – 喪失感と成長をテーマにした壮大なバラード。

  • Holocene” by Bon Iver – 儚く美しいメロディが特徴のインディーフォークの名曲。

  • “To Build a Home” by The Cinematic Orchestra – 壮大で感情的な楽曲。

6. “Medicine” の影響と評価

“Medicine” は、Daughter の楽曲の中でも特に感情的なインパクトが強く、映画やドラマのサウンドトラックとして多く使用されている 作品です。
また、リリースから10年以上が経過した現在でも、この楽曲の持つ普遍的なテーマが多くのリスナーの共感を呼び続けている ことから、Daughter の代表的な楽曲のひとつとして愛され続けています。

特に、依存や心の痛みを抱える人々にとって、この楽曲の歌詞は深く響くものがあり、慰めや共感を得られる楽曲 となっています。


“Medicine” は、人間の弱さと、それでも救われたいという願望を静かに、しかし強く描いた楽曲 です。
その詩的な歌詞と、エレナ・トンラの繊細なボーカル、アンビエントなサウンド は、多くのリスナーの心を優しく包み込むように響き続けています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました