発売日: 1971年7月21日
ジャンル: ヘヴィメタル、ドゥームメタル
アルバム全体の印象
「Master of Reality」は、Black Sabbathの3枚目のスタジオアルバムであり、ヘヴィメタルの歴史において重要な位置を占める作品だ。前作「Paranoid」の成功を受け、本作ではさらにサウンドを進化させ、低音域を強調した重厚なトーンを取り入れている。このアルバムでのトニー・アイオミのダウントゥーニング(ギターの音程を通常より低く設定する手法)は、後のドゥームメタルやストーナーロックの基盤を築いた。
本作の特徴は、ヘヴィなギターリフを中心とした楽曲構成と、精神的な深みを感じさせる歌詞だ。歌詞のテーマには、宗教、依存症、環境問題、そして希望が込められており、ギーザー・バトラーの深遠なリリックがアルバム全体を貫いている。一方で、静と動のダイナミクスが効果的に使われており、アルバムを通じて一貫した緊張感と没入感を楽しむことができる。
収録曲には「Sweet Leaf」や「Children of the Grave」といった代表曲が含まれ、Black Sabbathの音楽的進化を象徴する傑作として高く評価されている。
各曲解説
1. Sweet Leaf
アルバムを代表する一曲で、マリファナへの賛歌をテーマにした歌詞が特徴。重厚なリフとゆったりとしたグルーヴが印象的で、トニー・アイオミのギターとオジー・オズボーンのボーカルが絶妙に絡み合う。
2. After Forever
宗教的なテーマを扱った楽曲で、ギーザー・バトラーの歌詞がキリスト教的な価値観への問いかけを投げかける。アップテンポでキャッチーなギターリフが楽曲をリードし、エネルギッシュな一曲に仕上がっている。
3. Embryo
短いインストゥルメンタルトラックで、次曲「Children of the Grave」への橋渡しとして機能している。シンプルな構成ながらも不穏な雰囲気を醸し出している。
4. Children of the Grave
ブラックサバスの代表曲の一つで、反戦と希望をテーマにした力強い楽曲。トニー・アイオミのリフとビル・ワードのドラムが緊迫感を生み出し、ギーザーの重厚なベースが楽曲全体を支えている。
5. Orchid
アコースティックギターを主体としたインストゥルメンタルで、アルバム全体に美しい一息を与える役割を果たしている。クラシカルなアプローチが新鮮だ。
6. Lord of This World
ヘヴィなリフとスローテンポが特徴的な一曲。歌詞には人間の堕落と悪への誘惑が描かれており、ブラックサバス特有のダークな雰囲気が全開だ。
7. Solitude
静かなトラックで、オジーの感情的なボーカルと柔らかなアコースティックギターが印象的。孤独と内省をテーマにした歌詞が心に響く。
8. Into the Void
アルバムを締めくくる壮大な楽曲。トニー・アイオミの複雑なリフが展開され、地球の崩壊と新たな始まりを描いた歌詞が重厚なサウンドと完璧にマッチしている。ブラックサバスの音楽的野心が詰まった一曲だ。
アルバム総評
「Master of Reality」は、Black Sabbathが音楽的にも思想的にも進化を遂げたアルバムであり、ヘヴィメタルというジャンルの礎を築いた作品のひとつだ。トニー・アイオミのダウントゥーニングが生み出す重厚なサウンドと、ギーザー・バトラーの深遠な歌詞が完璧に融合し、シンプルながらも圧倒的なインパクトを持つ楽曲が揃っている。
「Sweet Leaf」や「Children of the Grave」などの名曲に加え、「Solitude」のような内省的なトラックがアルバムに奥行きを与えている。本作は、ブラックサバスの音楽的なピークを示すだけでなく、ヘヴィメタルの方向性を定義づける歴史的な作品として、現在でも多くのリスナーに愛されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「Paranoid」 by Black Sabbath
ブラックサバスの代名詞ともいえるセカンドアルバム。ヘヴィメタルの基礎を築いた名盤で、本作との連続性を楽しめる。
「Volume 4」 by Black Sabbath
次作であり、さらに実験的なアプローチが加わったアルバム。「Master of Reality」の進化形を感じられる。
「Led Zeppelin IV」 by Led Zeppelin
ハードロックの名盤で、ブラックサバスの重厚なサウンドと共通するパワーを持つ。
「Heaven and Hell」 by Black Sabbath
オジー・オズボーン脱退後のアルバムだが、重厚さとメロディが融合した傑作。ブラックサバスの多様性を知るうえで重要。
「Sleep’s Holy Mountain」 by Sleep
「Master of Reality」の影響を受けたストーナーロックの名盤。ダウントゥーニングと重厚なサウンドが直系で伝わっている。
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