発売日: 1986年3月3日
ジャンル: スラッシュメタル
Metallicaの3作目となる『Master of Puppets』は、スラッシュメタルを超越し、ヘヴィメタルの歴史に燦然と輝く名盤である。このアルバムは、前作『Ride the Lightning』で確立した複雑でドラマチックな作曲スタイルをさらに深化させ、Metallicaの音楽的成熟と革新を証明した作品だ。メタルファンのみならず、ロック史全体においても高く評価されており、その影響力は計り知れない。
プロデューサーには再びフレミング・ラスムッセンを迎え、クリアでありながら重厚なサウンドが実現されている。クリフ・バートン(ベース)のクラシカルな音楽知識が存分に反映されたアレンジ、ジェームズ・ヘットフィールド(ボーカル&リズムギター)の力強い歌声、カーク・ハメット(リードギター)の華麗なソロ、ラーズ・ウルリッヒ(ドラム)の正確でエネルギッシュなプレイが融合し、アルバム全体に統一感と多様性をもたらしている。
歌詞は、社会的な問題や心理的な葛藤を描き、タイトル曲「Master of Puppets」を含む8曲すべてが深いテーマ性を持っている。『Master of Puppets』は、メタルの枠を超えて聴く者の心を掴む普遍的な魅力を持つ。
1. Battery
アコースティックギターによる荘厳なイントロから始まり、激しいスラッシュメタルへと展開するオープニングトラック。歌詞は、攻撃的なエネルギーと団結の力をテーマにしており、ヘヴィなリフとスピード感がアルバムの幕開けにふさわしい。
2. Master of Puppets
アルバムのタイトル曲であり、Metallicaの代表作。薬物依存をテーマにした歌詞は、「操り人形(Puppet)」という比喩を用いて、支配と破滅のサイクルを描いている。リフの重厚さ、ドラマチックな展開、そしてカーク・ハメットのギターソロが楽曲の魅力を最大限に引き立てている。
3. The Thing That Should Not Be
H.P.ラヴクラフトのクトゥルフ神話にインスパイアされた楽曲。重低音のリフが不気味な雰囲気を醸し出し、歌詞は恐怖と神秘に満ちている。スローテンポながらも圧倒的な重量感が特徴。
4. Welcome Home (Sanitarium)
前作『Ride the Lightning』の「Fade to Black」に続くバラードスタイルの曲で、精神病院を舞台にした閉塞感と自由への渇望を歌っている。静と動のコントラストが際立ち、後半の激しい展開が聴き手を圧倒する。
5. Disposable Heroes
戦争をテーマにした社会的メッセージ性の強い楽曲で、兵士が使い捨てられる現実を描いている。スピード感あふれる演奏と複雑な構成が、楽曲の緊張感を高めている。
6. Leper Messiah
宗教と金銭的腐敗を風刺した楽曲で、重厚なリフとジェームズ・ヘットフィールドの皮肉たっぷりのボーカルが特徴的。中盤のテンポチェンジがスリリングな聴き応えを提供する。
7. Orion
クリフ・バートンが手掛けたインストゥルメンタル曲で、ベースラインが楽曲を牽引する壮大な構成が特徴。プログレッシブロック的な展開とクラシカルな要素が融合し、Metallicaの音楽的野心を感じさせる。
8. Damage, Inc.
アルバムのラストを飾るスラッシュメタルの爆発。攻撃的なリフとスピード感が圧倒的で、歌詞は破壊と混沌をテーマにしている。終盤のエネルギッシュな演奏がアルバム全体を締めくくるにふさわしい。
アルバム総評
『Master of Puppets』は、スラッシュメタルの金字塔であり、メタルの枠を超えて多くの音楽ファンに影響を与え続ける名盤である。攻撃的なスピードと重厚なリフに加え、深遠なテーマ性と複雑な楽曲構成がこのアルバムを特別な存在にしている。Metallicaのキャリアの中でも最も重要な作品の一つであり、ヘヴィメタルというジャンルをさらに高みに引き上げた記念碑的な一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Ride the Lightning by Metallica
『Master of Puppets』の前作で、Metallicaが音楽的に進化を遂げた重要な作品。ドラマチックな楽曲が特徴。
Reign in Blood by Slayer
スラッシュメタルのスピードと攻撃性を極限まで追求した名盤で、Metallicaとは異なるアプローチの凄みを体感できる。
Peace Sells… But Who’s Buying? by Megadeth
社会的メッセージ性とテクニカルな演奏が光るスラッシュメタルの名盤。
Rust in Peace by Megadeth
複雑なアレンジとギターリフが際立つ作品で、『Master of Puppets』と並ぶスラッシュメタルの傑作。
…And Justice for All by Metallica
『Master of Puppets』の進化形ともいえるアルバムで、さらに複雑な楽曲と政治的テーマが展開されている。
コメント