1. 歌詞の概要
「Make Love Like a Man」は、Def Leppardが1992年にリリースしたアルバム『Adrenalize』に収録され、シングルとしても発表された楽曲である。タイトル通り、歌詞は性的でユーモラスな内容を持ち、「男らしく愛し合おう」という直接的で軽妙なフレーズを核としている。
表面的にはセクシャルな挑発を全面に出したロック・アンセムに見えるが、その実、バンドらしいユーモアや自虐的なウィットが込められており、聴き手を楽しませることに主眼が置かれている。特にコーラス部分の反復はキャッチーで、観客が一体となって叫ぶライブ向けの作りになっている。ラブソングや社会批評的な要素を含む他の楽曲に比べ、「Make Love Like a Man」は、あえて軽快さを強調した祝祭的ロックナンバーなのである。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Make Love Like a Man」が収録された『Adrenalize』は、Def Leppardが『Hysteria』の世界的成功を経て発表したアルバムであり、ギタリストのスティーヴ・クラークの死という悲劇を乗り越えて制作された作品である。その中でこの曲は、悲しみを引きずるよりもむしろ「楽しさ」「ユーモア」を前面に出すことで、バンドが健在であることを示す役割を担った。
シングルとしては全英12位、全米36位を記録。チャート的には「Let’s Get Rocked」ほどの大成功には至らなかったが、ラジオやライブで高い人気を誇った。特にアリーナでのシンガロング効果は抜群で、観客との一体感を重視するDef Leppardのライブ・スタイルに合致している。
また、歌詞の露骨さに関しては賛否両論があり、批評家からは「安易に過ぎる」との声もあった。しかしバンド自身はこれを深刻に捉えておらず、「シリアスに解釈する必要はない。楽しく笑って盛り上がる曲なんだ」と語っている。結果的に「Make Love Like a Man」は、バンドのポップで陽気な側面を象徴する楽曲として受け入れられている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
（歌詞引用元：Def Leppard – Make Love Like a Man Lyrics | Genius）
Don’t call me gigolo
俺をジゴロなんて呼ぶなよ
Don’t call me Casanova
カサノヴァとも呼ぶな
Just call me on the phone
ただ電話をかけてくれればいい
And baby, come on over
そしてベイビー、こっちに来てくれ
Make love like a man
男みたいに愛し合おう
I’m a man, that’s what I am
俺は男、それが俺なんだ
Don’t call it love
それを「愛」と呼ばないでくれ
This is a rock ‘n’ roll romance
これはロックンロールのロマンスさ
ユーモラスで挑発的なフレーズが並び、愛を真剣に語るというよりも「楽しく騒ごうぜ」というムードが支配的である。
4. 歌詞の考察
「Make Love Like a Man」は、Def Leppardの楽曲の中でも特に軽快でユーモラスな側面を強調している。ここでは「愛」というテーマがロマンティックに扱われるのではなく、「ロックンロール的な遊び」として表現されている。歌詞の「Don’t call it love, this is a rock ‘n’ roll romance」という一節に象徴されるように、この曲は愛の理想化を拒否し、肉体的な快楽とその祝祭性を肯定している。
一方で、この曲をシリアスに受け止めすぎる必要はない。むしろこれは『Adrenalize』というアルバム全体の雰囲気を明るく保つための「遊び曲」であり、観客と共に楽しむためのライブ向けナンバーと見るべきである。スティーヴ・クラークの死という重苦しい現実を背景にしたアルバムにおいて、こうした楽曲は「悲しみの中でなお笑いを忘れない」バンドの姿勢を象徴しているとも言える。
結果として「Make Love Like a Man」は、批評的評価以上にファンとの一体感を生み出す力を持った曲であり、Def Leppardの「ロックの祝祭性」を最も直接的に体現した作品のひとつなのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Let’s Get Rocked by Def Leppard
同じ『Adrenalize』収録のシングル。軽快で祝祭的なロック・アンセム。 - Armageddon It by Def Leppard
ユーモラスでセクシュアルな言葉遊びが光る『Hysteria』収録曲。 - Pour Some Sugar on Me by Def Leppard
セクシュアルで遊び心あふれる歌詞と圧倒的なライヴ感を持つ代表曲。 - Cherry Pie by Warrant
同時代のLAメタルを象徴する快楽的アンセム。ユーモラスなセクシュアル比喩が共通する。 - We’re Not Gonna Take It by Twisted Sister
シリアスさを拒否し、反抗と祝祭を掲げた楽曲。ユーモアと観客参加型の構造が似ている。
6. 「Make Love Like a Man」の象徴性
「Make Love Like a Man」は、Def Leppardが『Adrenalize』期において「悲劇を背負いながらも、楽しさを忘れない」という姿勢を体現した楽曲である。深刻なメッセージ性はなくとも、バンドとファンが一体となって盛り上がること自体が目的であり、そこにロックの本質がある。
また、90年代初頭にグランジが隆盛する中で、Def Leppardが従来通りの「享楽的ロック」を提示したことは、彼らのアイデンティティの強さを示すものでもあった。ユーモラスで挑発的なこの曲は、批評家からは軽視されがちだが、ライブにおいては観客を熱狂させる武器であり、Def Leppardの「大衆的祝祭性」を象徴する存在として今も輝き続けている。
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