発売日: 2012年4月25日
ジャンル: オルタナティブ・ポップ、ロック、エレクトロニカ
Little Broken Heartsは、ノラ・ジョーンズがこれまでのスタイルから大きく一歩踏み出した、革新的な作品である。本作では、プロデューサーにデンジャー・マウス（ブライアン・バートン）を迎え、ノラのシグネチャーであるジャズ、カントリー、フォークの要素を土台にしつつも、オルタナティブ・ロックやエレクトロニカのエッセンスを大胆に取り入れている。前作Not Too Lateに続き、彼女の内面的な思索や個人的な感情がテーマとなっており、特に失恋と裏切りの痛みが歌詞に込められている。冷たくもどこか温かみのあるサウンドと、ノラの淡々とした歌声が融合し、リスナーを静かな闇の中に誘うような雰囲気が漂う。これまでのイメージを覆すような、彼女の新境地を感じさせる一枚である。
各曲解説
- Good Morning
アルバムの幕開けにふさわしいダークでゆったりとした曲。シンプルなピアノとノラの囁くようなボーカルが、眠りから目覚める静かな朝の雰囲気を演出しながらも、不穏な感情が漂っている。 - Say Goodbye
軽快なリズムとメロディに、別れをテーマにした歌詞がのせられている。ギターとシンセサイザーが絡み合い、彼女の新しいサウンドを象徴する一曲。軽やかに聞こえるが、冷淡さが残る別れの余韻が印象的。 - Little Broken Hearts
タイトル曲で、アルバムのテーマが凝縮された一曲。失恋の苦しみとその喪失感が、ノラの沈んだボーカルに滲み出ている。エレクトロニックなサウンドと彼女の穏やかな歌声の対比が、強烈な感情を引き出している。 - She’s 22
若い恋人に対する嫉妬と憂鬱が漂う曲で、彼女が年下の相手に向ける視線がリアルに描かれている。冷たくも優雅なボーカルが、曲全体に切なさと苦味を加えている。 - Take It Back
リバーブの効いたギターとミニマルなビートが、暗いトーンを作り上げる。静かな怒りを込めた歌詞と、冷静に語りかけるようなノラの声が、痛みと怒りを表現している。 - After the Fall
失恋後の心情を描いた曲で、シンセサイザーが幻想的な雰囲気を醸し出す。ノラの優しいボーカルが、失った愛を受け入れようとする切ない心境を表現している。 - 4 Broken Hearts
歪んだギターとビートが不穏な空気を作り出す一曲。裏切られた愛に対する怒りと悲しみが詰まっており、ノラの深みのある声がその感情を鮮烈に伝えている。 - Travelin’ On
フォーク的な要素が感じられる曲で、旅立ちと新たな道を象徴する。ノラの静かなボーカルとアコースティックギターが、哀愁とともに希望の光を感じさせる。 - Out on the Road
自由への渇望を歌った曲で、広がりのあるリズムが印象的。ノラの歌声は抑えめながらも、その奥に秘めた情熱が感じられ、曲に勢いを与えている。 - Happy Pills
軽快なメロディが印象的で、失恋から解放されようとする心境を明るく歌っている。シンセとギターのポップなサウンドが曲を引き立て、失恋の痛みを吹き飛ばすような爽やかさが心地よい。 - Miriam
アルバムの中でも特にダークなトーンを持つ楽曲で、浮気相手に向けた嫉妬と怒りが描かれている。ノラの冷静な歌声が、緊迫感と復讐心を強調しており、物語のような展開がリスナーを引き込む。 - All a Dream
アルバムのラストを飾る曲で、まるで夢の中にいるかのような幻想的なサウンド。ピアノとシンセが静かに流れ、ノラの囁くような歌声が、終わりと再生を象徴するように響き渡る。
アルバム総評
Little Broken Heartsは、ノラ・ジョーンズの新たな挑戦と変化を示したアルバムであり、彼女のアーティストとしての幅を大きく広げた作品だ。デンジャー・マウスのプロデュースにより、エレクトロニックとロックの要素が効果的に取り入れられ、彼女のこれまでの作品とは異なる冷たい美しさが全体を支配している。失恋と裏切り、孤独といったテーマがノラの落ち着いたボーカルと繊細なアレンジで深く掘り下げられ、聴く者の心に静かな衝撃を与える。これまでの柔らかなイメージを一新したLittle Broken Heartsは、ノラ・ジョーンズの新しい可能性を示す、感情に満ちた意欲作だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beck – Sea Change
ベックによる内省的でメランコリックなアルバム。エレクトロニカとフォークが融合し、失恋の哀愁が漂うサウンドが、ノラの本作と通じる部分が多い。
Lana Del Rey – Born to Die
ラナ・デル・レイの代表作で、失恋や孤独、哀愁をテーマにした楽曲が並ぶ。エレクトロニックとオーケストラを組み合わせたサウンドが、Little Broken Heartsのファンにも響くだろう。
Feist – Metals
カナダのシンガーソングライター、ファイストによる暗くエモーショナルなアルバム。インディーフォークとロックを織り交ぜたサウンドが、ノラの新しい方向性に共感するリスナーにおすすめ。
Cat Power – Sun
キャット・パワーがエレクトロニカを取り入れて制作したアルバムで、ポップなサウンドと深い歌詞が印象的。ノラの実験的なサウンドが好きなリスナーに合うだろう。
Danger Mouse & Daniele Luppi – Rome
デンジャー・マウスとダニエル・ルッピがコラボしたコンセプトアルバム。ノスタルジックでシネマティックなサウンドが特徴で、Little Broken Heartsのプロデューサーが手掛けた作品としても注目。
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